文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
8.そのほか 【エキノコックス】
97.多房性の囊胞性病変および北海道居住歴より,エキノコックスが疑われる患者です。対処について教えて下さい。
著者: 村雲雅志1
所属機関: 1釧路労災病院泌尿器科
ページ範囲:P.347 - P.349
文献概要
1.病 因
小型のサナダムシの仲間であるEchinocccus属条虫は,キツネ,イヌ,タヌキ,オオカミなどを終宿主とする寄生虫である。動物の糞便から排泄された虫卵は,水や植物を介してネズミ,ウサギ,ヒツジ,ウシなど草食動物の中間宿主の体内に入って肝臓で幼虫(包虫)となり囊胞状に発育し,これらを捕食したオオカミ,キツネ,イヌなどの小腸で成虫となる。ヒトへの寄生は感染したキツネやイヌ,ネコの糞便を介して,あるいは糞便の付着した水や野草などを直接飲食して成立する糞口感染による。この意味でヒトは中間宿主である(図1)。ヒトに寄生したエキノコックスは肝臓で包虫となり,きわめて緩徐に発育しながら周囲への圧迫や他臓器(肺,腎,脳,骨など)への血行性転移など,悪性腫瘍のような経過をたどる。病巣の切除以外に有効な治療法がなく,切除不能例では予後不良である(図2)。
内容液が体内に漏れると重篤なアナフィラキシー症状を起こすため,経皮的な穿刺や生検は危険である。エキノコックスによる腎病変は患者全体の3%程度に過ぎないが,今後,増加することが予想されており,最低限の知識を持っておく必要がある。なお疑診例には,虫体由来物質に対する血清中の抗体がきわめて特異性が高く,有力な診断根拠となる1,2)。
参考文献
掲載誌情報