icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻5号

2005年04月発行

雑誌目次

綜説

局所進行性前立腺癌に対する根治的体外照射における内分泌療法の役割

著者: 頴川晋

ページ範囲:P.267 - P.272

要旨 昨今の診断・治療法の進歩により,腺内限局性早期前立腺癌の治療オプションは広がり,治療成績も向上した。しかし,骨にまで広がった前立腺癌は内分泌療法によるコントロールを期待するしかないというのが現時点のコンセンサスである。これらの中間群,すなわち微小転移ないしは前立腺周囲のみの浸潤癌を,何らかの工夫によりある程度制御できるのではないかというのが最近の考え方であり,過去の数々の検討の命題であった。本稿では,特に「根治照射および内分泌療法併用」という治療戦略につき概説する。

異論・反論 泌尿器科術前・術後管理

1.手術前の呼吸機能検査は必要か

著者: 齊藤亮一 ,   上田朋宏

ページ範囲:P.277 - P.280

1 はじめに

 従来から全身麻酔下手術を行う場合,術前の呼吸機能検査は必須であるとされてきた。術後の抜管困難や無気肺,肺炎などの術後肺合併症(postoperative pulmonary complications:以下,POPC)の発生を予測可能なのではないかと漠然と考えられていた。しかし近年,EBMの考え方のもと,POPCの危険因子を解析し,それに基づいて必要かつ十分な肺機能評価を行えばよいと考えられるようになった。さらに高齢化社会に伴い低肺機能患者の手術が増加しているため,POPCのリスク分析がより重要になってきている。本稿では,手術前の呼吸機能検査の必要性について高リスク患者の同定法の1項目という観点から考察する。

1.手術前の呼吸機能検査は必要か

著者: 武藤明紀

ページ範囲:P.282 - P.283

1 呼吸機能検査は必要か

 呼吸機能検査は,検査自体,被験者の協力を必要とするものであり,小児では検査自体が困難であると考える。基礎疾患や,呼吸状態の既往歴がなく,無症状で元気に生活している小児に対しては,術前における呼吸機能検査は省略できると考える。欧米では医療内容の徹底した合理化をはかっており,特に米国の医療界は「しなくてすむことは一切しない」という診療コンセプトで,元気な小児の術前検査は一切行っていない施設も散見される。アメリカでは政府が管掌する老人医療保険(medicare)や貧困者保険(medicaid)の入院患者に術前検査を行った場合,政府はその支払いには応じないという方針を全米の医療機関に通達しており,民間の健康保険会社もその際には支払いを拒否するようになっている。実際には,術前検査は入院前に,出来高払いのもと外来で全部すませてしまう。入院は手術当日で,手術が終わったら患者を早くベッドから起こして早くに退院してもらう。ドレーンが入っていても,膀胱留置カテーテルが入っていても,その管理は本人,家人に行ってもらう。合理主義アメリカの一面を見る思いがする。
 手術は,患者にさまざまなストレスを与え,また麻酔時に使用される薬剤が患者に不利益をもたらすこともあり得る。具体的には,術前に存在する呼吸器疾患が周術期に急性増悪する可能性があるということであり,実際に全身麻酔や手術を契機として,肺線維症が急激に増悪して,呼吸不全を呈し死亡するケースが報告されている1)。肺線維症では肺機能検査や血液ガス検査で異常を示さないことが多く,胸部X線で疾患を疑ったらCT検査による精査が必要である。

2.手術前の剃毛は必要か

著者: 齊藤亮一 ,   上田朋宏

ページ範囲:P.284 - P.285

1 はじめに

 外科手術後の手術部位感染(surgical site infection:SSI)は患者・医師双方にとって非常にストレスフルなものである。創感染から開放創となると治療期間が長くなるだけでなく,手術術式・感染部位によっては重症化することもある。さらに多剤耐性菌の出現がこの問題をより複雑にする。SSI予防には術野の消毒,皮膚常在菌量の減少が重要であることはいうまでもない。

 歴史的には,100年以上にわたり外科手術前に手術部位とその周囲を剃毛することが習慣づけられてきた。その基本的な理由付けとしては,体毛には細菌が多数付着していて不潔であり,これを除去することで皮膚切開創に細菌が混入する確率を低下させSSIを予防できるというものである。剃刀(カミソリ)による剃毛を徹底し,逆剃りまでしておかないと研修医や病棟看護師を叱り飛ばすという指導医の姿はつい最近まで決して稀ではなかったと思われる。また外科手術前の儀式として看護サイドでも非常に重要視されていたことも確かである。一方で,剃毛には皮膚切開創や術野(特に腹腔内)に体毛が混入して手術操作を妨げることを防止する目的もあったと思われる。しかし実際に剃毛が有用であるかどうかに関しては,長い間,科学的な検証がなされないままであった。

 本稿では,術前剃毛が必要なのか不必要なのかevidence basedに答えを明らかにする。

2.手術前の剃毛は必要か

著者: 野口良輔

ページ範囲:P.286 - P.287

1 はじめに

 医師,とりわけ外科医の世界では徒弟制度が根強く温存されている。すなわち,手術や術後管理については「手術の技量,経験がすべてに優先されている」といっても過言ではない。こうした慣習のなかで,SSI(surgical site infection:手術部位感染症)は一定の確率で生じ,患者,医療者側いずれにとっても大きな負担となっていた。1999年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention)によって,SSI予防ガイドライン1)が発表されたあとも,しばらくの間,抗生物質の術後長期投与,剃毛,術後の創部消毒などがなされていた。近年,医療事故が多発した社会的背景から経験論はバッシングされ,EBMという概念が注目されるに至った。EBM(evidence-based medicine)とは「科学的根拠に基づいた医療」と訳されているが,日本においても徐々に浸透し,成果が上がりつつある。

 本稿では,SSI予防に対するCDCのガイドラインのなかで,剃毛の是非について紹介し,それを実践した当科での経験を報告する。

2.手術前の剃毛は必要か

著者: 増田裕

ページ範囲:P.288 - P.288

1 はじめに

 手術部位の除毛は,手術部位感染(SSI)の危険因子として確認されている。剃刀による剃毛は感染リスクを増大させる。こうした事実がある一方で,泌尿器科手術では術前に剃刀による剃毛が広く行われている。

2.手術前の剃毛は必要か

著者: 武藤明紀

ページ範囲:P.289 - P.291

1 剃毛とは

 剃毛とは,「剃刀・カミソリ」で体毛を除することであるが,体毛のない皮膚もカミソリの影響を受ける。毛だけでなく,皮膚までも削り取られる作業が「剃毛」である。

 健康な皮膚は,本来感染に強いものである。皮膚の表皮は上皮細胞群10~20層の積み重ねを絶えず維持している。その構成は,最深部での分裂増殖と最上層の死滅,脱落である。また最上層は角質を形作っているが,これには硬角質と軟角質がある。この軟角質は体表全体を覆うような薄い保護シートを維持する役割を果たしている。自然の状態では,この部分が次々と垢としてはげ落ちているわけである。しかも有毛の部位は0.1~0.2mmと非常に薄い厚さしかない。そして,この厚みが体内の水性環境と体外の空気との隔壁をなすという重要な役割を担っているのと同時に,感染を防いでもいる。毛を剃ると,この重要な部分の表面をそぎ落とすことになるだけでなく,たくさんの皮膚損傷を引き起こす。その皮膚損傷が皮膚感染の原因になる。

3.手術後の血液検査は必要か

著者: 島田誠 ,   椎木一彦

ページ範囲:P.292 - P.294

1 はじめに

 総論的にいうと,手術後に行われる血液検査の意義は次のように考えられる。(1)出血の評価,(2)手術対象臓器の(残存)機能評価,(3)他臓器損傷の有無・程度の確認,(4)体液(循環血液)の状態把握,(5)手術により特殊な負荷がかかる場合,その侵襲度の評価,(6)合併疾患の状態把握,(7)動脈血ガス分析などである。これらは手術の種類や侵襲の度合いにより重視する点が異なるが,手術後という特殊な病態のもとでは経過,すなわち経時的変化を捉えることが必要になる。その際,採血を行う間隔はさまざまな要因に左右される。

 泌尿器科的にみて術後採血に関連して考えると,手術にもいろいろなものがあって多種多様である。そのなかで特殊なもの,たとえば副甲状腺や副腎腫瘍などの内分泌に関連した手術,透析患者の手術~腎移植,小児の手術,腫瘍マーカーの上昇している精巣腫瘍手術などの体質特異的または疾患特異的な術後採血~管理が必要であるものは別にして,ここでは一般的な泌尿器科手術に関して述べることにする。

3.手術後の血液検査は必要か

著者: 西畑雅也 ,   曲人保 ,   藤永卓治

ページ範囲:P.295 - P.297

1 はじめに

 術後の血液検査値は,手術の侵襲に対する生体反応として侵襲の程度,手術部位,術式,術前の患者の全身状態などに応じ,経時的に変化すると予想される。たとえ治療を目的とした手術,麻酔,投薬であっても,生体の恒常性に変化をもたらす侵襲となる。この点は,病的な感染,出血,飢餓,疼痛,寒熱,さらには精神や環境変化などの刺激に対する反応と本質的な差はない1)。ただ,手術は生体に対し人工的,意図的に加えられた侵襲であるから,合併症がない限り,ほかの病的刺激に比べればその程度を把握しやすい。

 術後の検査は本来,水・電解質,血液ガス,酸・塩基平衡など生命に直結する検査値を監視するとともに,術後合併症の予知に利用される。合併症の予知には,何より術前の詳細な病歴と身体所見,術前の検査の評価が必要であるが,手術という侵襲に伴う検査値の変動を知っておくことも大切である。また起こりうる合併症とその病態も理解する必要もある。

4.手術後の包交は必要か

著者: 西畑雅也 ,   曲人保 ,   藤永卓治

ページ範囲:P.299 - P.301

1 はじめに

 われわれ泌尿器科医を含めた外科医は,術式の習得や癌の治療方針には関心を持って研究や勉強をする。しかし,手術創の管理については,先輩から教えられたガーゼ交換という方法を何の疑問も持たずに繰り返し行ってきた。手術後の手術創やドレーン排液管理は,外科医や外科担当看護師にとって最も重要かつ日常的な仕事の1つで,多くの時間を費やしているにもかかわらず,創を覆う被覆材の情報を知らないまま手術創にガーゼを置き,これを毎日剝がして創を消毒し,新しいガーゼと交換する日々の回診・包交を行ってきた。

4.手術後の包交は必要か

著者: 野口良輔

ページ範囲:P.302 - P.303

1 はじめに

 筆者は研修医時代に手術翌日の手術創の確認が大切であると教わり,回診では必ず創部を観察し,ポビドンヨードで消毒し,ガーゼを交換していた。実はこれはまったくの誤りで,翌日に包交するほうが感染のチャンスを生み,SSI(surgical site infection:手術部位感染症)に寄与してしまうのである。医学は日々進歩し,その先進的な考え方を取り入れず,慣習を守っていると大きな過ち(SSIとはいえ,対応を誤ると致命傷にもなりうる)を犯す可能性も生じてくる。そこで本稿では,「術後の包交の必要性」をCDC(Centers for Disease Control and Prevention)ガイドライン1)より検討し,さらに手術創の管理について新しいevidenceを紹介し,これらに基づいて施行した自施設の経験を報告する。

4.手術後の包交は必要か

著者: 深澤立 ,   島田誠

ページ範囲:P.304 - P.305

1 手術後の創管理の目的

 手術後の創管理の目的は,感染や離解などの問題を生じさせず,創をきちんと治すことである。そして患者の苦痛を最小限にすること,医療コストをかけないことも管理をしていくうえで十分に配慮されるべきである。

 2 今までの包交のやり方

 以前は毎日回診をし,清潔操作のもとにガーゼを剝がし,創・ドレーン刺入部をポピドン・ヨードで消毒し,またガーゼで覆うという包交をしていた。実際に調査をしたわけではないが,恐らく多くの医療現場ではこれと変わらない包交をしている(してきた)と思われる。

5.手術後の抗菌薬(抗生物質)投与は必要か

著者: 増田裕

ページ範囲:P.308 - P.309

1 はじめに

 泌尿器科医は常に感染症と向き合っており,感染症をどうコントロールすべきかがわれわれ泌尿器科医の使命である考えられる。感染症のコントロールには抗生物質は必要不可欠であるが,抗生物質をいつ,どれだけの量,どれだけの期間使用するかという問いには明確な答えが得られていないのが現状である。抗生物質の乱用はMRSAをはじめとする耐性菌を誘導してきた。また,合併症を起こさなくとも,長期間の不必要な抗生物質の投与は,医療費の高騰の一因になっている。筆者の施設では,いかにして医療費を抑制し,患者負担を減らすことができるか,そのためには,われわれは何をなすべきかを追求している。

5.手術後の抗菌薬(抗生物質)投与は必要か

著者: 山口誓司

ページ範囲:P.310 - P.312

1 はじめに

 筆者が研修医の頃,泌尿器科の手術後の予防抗菌薬としては一般的に第三世代のセファロスポリン系抗生物質が当然のように使われている時代であった。しかもその薬は手術後帰室してから「1日2回,7日間の投与」と先輩の先生から教わり,新しい抗菌薬が市販されるたびに常に新しいものを試していた記憶がある。しかしながら,このような使用方法がMRSAなどの耐性菌の発生を生むことになり,多くの耐性菌による強烈なしっぺ返しを受けている。各科領域で耐性菌による重症感染症を経験するようになり抗菌薬に対しての関心が高まったことにより,MRSAを発生させないようにと術後の予防抗菌薬の種類が見直されるようになり,また術後の予防投与法が見直されるようになった。外科領域では多くの報告がみられるようになり,1999年にはCDCからガイドライン1)が報告され,本邦でも「抗菌薬の使用の手引き」2)が作成された。泌尿器科領域ではやや遅れて,2001年にEAUのガイドライン3)の報告があり,本邦でもようやくこの問題に対しての取り組みがなされるようになってきた4,5)

 本稿では,外科領域での報告2,6,7)を参考に,泌尿器科での術後の感染予防薬としての抗菌薬の使用法について考えてみたい。

6.抜糸は7日目に行う必要があるか

著者: 原恒男 ,   山口誓司

ページ範囲:P.314 - P.316

1 はじめに

 術後の手術創の管理においては,創の治癒が確実できれいであること以外に,処置における患者の疼痛などの緩和や,さらに労力やコストの軽減も要求される。

 本来,手術創の縫合は一次治癒(一次閉鎖)であるからほぼ48時間以内に上皮化は完了するはずであるが,抜糸が不適切に早過ぎると,虚血や血腫,過度の張力などが誘因となって創し開をきたす。逆に,抜糸が遅過ぎると縫合糸に沿った上皮化が起こり(suture tract),これが炎症,膿瘍の原因ともなり得るし,縫合糸跡(suture mark)がより目立つ1,2)

 以上のことを踏まえ,適切な抜糸タイミングを含めた手術創管理が必要である。

7.絶食は排ガスがあるまで必要か

著者: 西村憲二

ページ範囲:P.318 - P.320

1 はじめに

 人間の三大欲求といえば,食欲,性欲,睡眠欲であり,その1つでも欠ければ人間らしい生活ができない。食べるということは単に1日に必要な栄養を口から摂るだけではなく,その字からもわかるように,“人を良くする”効果がある。手術前より極度の緊張状態を強いられてきた患者にとって,食欲を満たすことが通常生活への第一歩であり,それをできるだけ早くかなえるように努力するのがわれわれの使命でもある。

 手術後の患者に「食事はいつから食べられるようになるのですか」と質問されると,昔からわれわれは「おならが出てからですよ」と当たり前のように答えてきた。しかしながら,本当に排ガスがあるまで絶食は必要なのだろうか。消化管運動能の回復状況は,以前より排ガスの有無で評価されてきた。それは患者の訴えによってはじめて判明するのであって,排ガス前より腸管蠕動音が聴取されているのが普通であり,何より夜間に排ガスがあってもわれわれがその事実を知るのは翌朝である。

 本稿では,泌尿器科術後の摂食開始に関して検討してみる。

7.絶食は排ガスがあるまで必要か

著者: 野田賢治郎 ,   伊藤貴章

ページ範囲:P.321 - P.323

1 はじめに

 Evidence-based medicine(EBM)に基づいた医療を尊重する考え方の普及に伴い,多くの慣習的な医療が見直されている。麻痺性イレウスを懸念してか「術後の絶食は排ガスがあるまで必要」との概念が存在するが,これも慣習的な医療の1つであると推測される。この点に関し,泌尿器科領域の術後より繊細な食事管理が必要と考えられる消化器外科領域,特に大腸切除術後の検討が散見され,これらを参考に,実際にわれわれが行っている方法を踏まえながら検討した。また,テーマを術後食事管理と捉え,経鼻胃管の管理についても言及した。

7.絶食は排ガスがあるまで必要か

著者: 米田健二 ,   高橋宏明

ページ範囲:P.324 - P.325

1 はじめに

 最近の周術期管理はEBM(evidence-based medicine)に基づき次第に変化している。すなわち,剃毛,術前腸管処理,予防的抗菌薬の投与などは必要最低限となり,深部静脈血栓症の予防対策,術後早期離床の励行,持続硬膜外麻酔による疼痛管理などが普及し,創部の消毒やドレーンの管理方法なども以前とはかなり変遷してきた。

 術後の栄養管理については,従来は排ガスがあってから食事を開始していた。確かに排ガスは術後の消化管機能回復の重要な徴候の1つであるが,これが食事開始の指標とすべきか否かを検討してみたい。

8.癌手術後のCT検査は必要か

著者: 西村憲二

ページ範囲:P.327 - P.329

1 はじめに

 癌手術後の再発や転移を定期的にフォローしていく手段としては,CTなどの画像検査や腫瘍マーカーを主体とした血液検査がある。しかしながら,画像検査もただやみくもに行うのではなく,個々の癌の特性を熟知し計画を立てて行う必要がある。そこで本稿では,泌尿器科癌のなかで頻度の高い腎癌,膀胱癌,前立腺癌,そして精巣癌に関してCT検査の必要性に関して検討してみる。

8.癌手術後のCT検査は必要か

著者: 野田賢治郎 ,   伊藤貴章

ページ範囲:P.330 - P.332

1 はじめに

 日本はCT大国である。放射線医学総合研究所の2000年の調査で,稼動中のCT装置は11,050台と1989年の前回調査時のほぼ2倍で,検査件数は3,655万件と3倍に増加し,人口1,000人当たり年間290件に当たると報告している。また,国民1人当たりの被曝線量も前回(0.8mSv)の約3倍に当たる2.3mSvで,自然放射線による平均年間被曝量(2.4mSv)に匹敵するとしている。さらに,世界のCT装置の半数が日本にあり,半数近くの検査が行われている可能性があるとし,日本のCTが突出して多いことを指摘している。

 癌根治手術後のルーチンに施行するCT(以下,surveillance CT)は,再発・転移の早期発見目的で施行されfollow-up protocolに疾患および病期特異的に組み込まれるべきである。われわれの外来で施行したCTのうち約2割がsurveillance CTで,日本では相当量の検査が費やされていると推測され,被曝および経済的側面よりevidenceに基づいた効率的な検査計画が必要である。

8.癌手術後のCT検査は必要か

著者: 米田健二 ,   高橋宏明

ページ範囲:P.333 - P.335

1 はじめに

 尿路性器癌術後のCT検査が必要かどうかの疑問に答えるのは非常に難しい。CTが癌の遠隔転移や局所再発を診断するのに優れた検査手段であることを検証することのみならず,再発の早期発見がその後の治療,予後,生活の質などに効果的に反映するかなども考慮に入れなければならないからである。

 CTの必要性を論じるには,個々の泌尿生殖器癌の性質上,個別に考える必要があると思われ,泌尿器科での代表的な癌について以下に考察してみる。

9.手術後の長期尿道カテーテル留置は必要か

著者: 増田裕

ページ範囲:P.337 - P.337

1 はじめに

 尿道へのカテーテル留置は,難治性尿路感染症の原因になり,できるだけ早期に抜去すべきであるが,TURP後,尿道へのカテーテル留置は最低3日間と先輩から教わり,それに何の疑問も抱かず,それを守ってきた。尿道へのカテーテル留置期間が,入院日数を規定しているのは紛れもない事実である。TURPの翌日に尿道カテーテルを抜去すれば,短期入院が可能となり,患者負担の軽減となるのではないかと考え,筆者の施設では,不必要な点滴や抗生物質の投与をせず,入院当日手術を原則とし,TURPを2泊3日で実施している。

病院めぐり

―医療法人社団カレスアライアンス― 日鋼記念病院泌尿器科・腎移植科

著者: 新藤純理

ページ範囲:P.346 - P.346

室蘭市は,札幌市からJRで1時間強の距離にある,北海道の南に位置している人口10万人ほどの重工業都市です。日本製鋼所や新日鐵室蘭などの工場が林立し,鉄の町として有名です。天然の良港に恵まれ,風光明媚な地球岬,近隣の洞爺温泉と登別温泉など自然資源には事欠きません。名物には,焼き鳥(豚肉とたまねぎを使い,からしをつけて食べる),カレーラーメン,ホエールウオッチングなどがあります。

 当院は,明治44年創立の私立楽生病院を前身に,日本製鋼所の企業内病院を経て昭和55年に医療法人社団に移管され,平成13年4月に医療法人社団カレスアライアンス日鋼記念病院となりました。現在,ベッド数は529床で,精神科以外のほぼ全科を網羅し,常勤医が93名(臨床研修医22名)勤務しており,西胆振医療圏約20万人の地域中核病院となっています。当法人は,室蘭市,登別市,札幌市の病院とサテライト診療所,高齢者総合保健センター,看護学校,研究所,日本初の家庭医療学センターなどの多施設から組織されており,地域社会と深く連携した公共的社会事業機関として保健・医療・福祉にわたる総合化の道を歩んでいます。その考え方を形にすべく,財団法人日本医療機能評価機構から平成9年7月に病院機能評価の第1号認定証を受けており,平成14年7月には再認定第1号の病院となりました。特定承認保険医療機関,災害拠点病院(地域災害医療センター),臨床研修病院(医科,歯科),地域周産期母子医療センターなどでもあり,さらに平成14年からは電子カルテを本格稼動し,平成16年春からは大学病院などに続きDPC算定を導入しました。

伊勢原協同病院泌尿器科

著者: 田野口仁

ページ範囲:P.347 - P.347

伊勢原市は,神奈川県のほぼ中央に位置し,東京から50km,横浜から45kmの距離にある首都圏の近郊都市になります。市の約1/3を山林原野が占め,丹沢大山国定公園の一角に位置するシンボル大山を頂点として,東部には豊かな平野部が広がり,鈴川,善波川,日向川,歌川といった清流が大地を潤しています。人口は約10万人ですが,南部を平塚市,西部を秦野市,北東部を厚木市と接していて,医療圏人口としては約50万人になります。

 当院は,昭和42年4月1日に厚生連伊勢原病院として開設され,同年7月11日,伊勢原協同病院に改称しました。開院当初,病床数は103床でしたが,現在は17診療科を擁する413床の中核病院に発展しています。近年,病院施設の老朽化がみられるため,現在,災害時にも地域の中核病院として機能できるような病院を目指して,新病院建設計画が進んでいます。泌尿器科は,昭和58年に開設され,非常勤医師による外来診療を開始しました。昭和62年7月に慶應義塾大学より中村薫先生が泌尿器科部長として赴任され,常勤医2人体制となりました。その後,平成5年1月に柴山太郎先生に引き継がれ,平成16年8月から筆者が引き継いでいます。現在,渡辺聡先生,吉峰俊輔先生と筆者の3名が常勤医として,慶應義塾大学より小杉道男先生が非常勤医師として,泌尿器科全般にわたる診療を行っています。

交見室

小児泌尿器科関連のAAPとAPAPUに出席して

著者: 寺島和光

ページ範囲:P.349 - P.349

小児泌尿器科領域の主な国際学会にはAAP(American Academy of Pediatrics),ESPU(European Society for Paediatric Urology)およびAPAPU(Asia Pacific Association of Pediatric Urologists)がある。私はこのうち2004年に開催されたAAPとAPAPUに出席したので,簡単に報告したい。

■AAPの一分科会であるSection on Urologyの学術集会はこの領域では最も権威があり,その内容は毎年Journal of Urologyに掲載される。今回は10月にサンフランシスコで開催され,各国からの応募演題324のうち116題が採用された。全般的な印象としては,既成の治療方針や検査についての再評価を行う発表が目立ったことである。つまりいくつかの疾患に対する手術適応を見直した結果,保存療法を選択する傾向が強まり,またこれまで「ルーチンに」行っていたVCUGなどの検査の必要性を再検討し,項目をより厳選し,検査間隔も伸ばすようになった。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら