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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻6号

2005年05月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器科医のかかわる医療事故

著者: 秦野直

ページ範囲:P.359 - P.366

要旨 医療事故は患者側にとっても医療者側にとっても不幸な出来事である。事故を防ぐためには冷静な目でなぜその事故が起こったのかを検討することが第一歩である。医療事故には避けることのできるものと,困難なものがある。本稿ではわれわれが臨床をするうえで参考になりそうな医療事故をまとめた。また見逃しやすい盲点や広く知られていないが重要と思われる事項についても言及した。必要に応じ自験例を提示し防止策を述べた。

手術手技 尿路変向・膀胱拡大術 1

経皮的膀胱瘻造設術

著者: 橋本博

ページ範囲:P.369 - P.373

要旨:経皮的膀胱瘻術の手技を中心に述べた。重要なことは,日ごろから使い慣れた専用のキットを準備しておくこと,穿刺前に超音波で膀胱が十分に緊満していることを確認すること,穿刺は恥骨上2横指・正中線上・垂直ないしやや頭側へと行うこと,あまり躊躇せず速やかに穿刺を行うこと,などである。膀胱が十分に進展しない症例や手術歴のある症例では経皮的操作にこだわらず,開腹術を行う。

開放手術による膀胱瘻造設術

著者: 長岡明 ,   冨田善彦

ページ範囲:P.375 - P.379

要旨:膀胱瘻造設術は,下部尿路の通過障害による急性尿閉症例において尿道カテーテル留置が困難な場合や,排尿障害に対し長期にわたりカテーテル留置が必要とされる場合に適応となる。このうち開放手術による膀胱瘻造設術は,過去の骨盤内手術のため腸管の癒着などにより経皮的手技では腸管損傷の可能性が高い場合,萎縮膀胱であるため膀胱の拡張が不十分であり経皮的に穿刺が困難な場合に適応となる。本手術法は,膀胱高位切開による膀胱瘻の留置術であり,手技は膀胱高位切開術に準じたものとなる。本稿では,われわれが行っている手術手技につき解説する。

腎瘻造設術

著者: 中島耕一 ,   三浦一陽 ,   石井延久

ページ範囲:P.381 - P.390

要旨:尿路変向としての腎瘻造設の目的は,1)水腎症の改善のための尿路確保と,2)膀胱を経由した排尿では著しくQOLを損なう症例の救済が大半と考える。永久的な留置になる症例も存在し,単に腎瘻を造設するということだけでなくQOLの維持にも配慮した作成方法が求められる。尿路変向としての腎瘻造設術について概説した。

セミナー 泌尿器科領域における重症・難治性感染症とその対策 1

重症腎盂腎炎

著者: 杉村淳 ,   近田龍一郎 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.391 - P.394

要約:単純性の急性腎盂腎炎は比較的よく遭遇する疾患であり,治療に難渋することはほとんどない。しかし,合併症を抱えている場合,重症化することがあり,通常の点滴や抗生物質投与だけでは治癒しえないこともある。必要に応じて経皮的ドレナージや経尿道的尿管ステント挿入によるドレナージ,さらには腎摘出術などの外科的治療が行われるが,診断や適応時期の判断が遅れるとエンドトキシンショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)などの重篤な状態に陥る危険性を含んでいる。

原著

精巣腫瘍におけるhCGとβhCGの意義

著者: 滝沢明利 ,   三浦猛 ,   藤浪潔 ,   長田裕

ページ範囲:P.405 - P.409

精巣腫瘍の診断・管理にはヒト絨毛性ゴナドトロピンβ分画(以下βhCG)が有用といわれるが,日本では多くの場合遊離β分画を測定している。一方,現在hCGの多くは黄体化ホルモン(以下LH)との交差性がほとんどなく測定可能である。われわれは過去10年で経験した精巣腫瘍患者25例[seminomatous germ cell tumor(以下SGCT)4例,(non-seminomatous germ cell tumor(以下NSGCT)21例]に対して,hCGおよびβhCGを同時に測定し,有用性を検討した。感度はSGCTでhCG 3/4(75%),βhCG4/4(100%),NSGCTではhCG 20/21(95.2%)とβhCG 19/21(90.5%)であった。両者はNSGCTでのみ強い相関を認めた(相関係数r=0.95(p<0.001))。マーカー再発は3例7回であり,4回はhCG先行,3回は同時であった。SGCTではβhCGが有用だが,NSGCTでは治療効果,再発に関してhCGが高感度であり,精巣腫瘍の管理では可能な限り両マーカーを同時測定することが望ましいと思われた。

症例

術後cisplatin,VP-16による後療法を行った膀胱小細胞癌

著者: 川上憲裕 ,   橋本博 ,   加藤祐司

ページ範囲:P.411 - P.413

症例は74歳,男性。肉眼的血尿を主訴に当科を初診した。膀胱鏡にて左側壁に非乳頭状腫瘍を認め,根治的膀胱全摘術を施行した。病理結果は膀胱小細胞癌,単発であるがリンパ節転移を伴っていた。術後CDDP,VP-16の化学療法を施行し,10か月後の現在再発を認めない。

水腫穿刺により異型細胞を認めた陰囊内悪性中皮腫

著者: 瀬尾崇 ,   品川剛廣 ,   田中孝直 ,   大森聡 ,   近田龍一郎 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.415 - P.417

81歳,男性。右陰囊の腫脹・疼痛を訴え近医受診。精巣腫瘍を疑われ当科に紹介された。陰囊は小児頭大に腫大し弾性硬で,超音波検査およびCTで内部不均一な囊胞状の腫瘤が認められた。右精巣・精巣上体は確認されなかった。右陰囊内悪性腫瘍を否定できないため,右高位精巣摘出術を施行した。病理組織検査より悪性中皮腫と診断された。術後11か月に右胸膜への転移が明らかとなり19か月に癌死した。

膀胱転移した腎細胞癌

著者: 川上憲裕 ,   橋本博 ,   加藤祐司

ページ範囲:P.419 - P.421

症例は76歳,男性。近医にて左腎腫瘍を指摘され当科を初診した。根治的左腎摘除術施行後6か月で膀胱腫瘍を認めた。経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行したところ,病理所見は腎細胞癌であった。本症例は腎細胞癌の膀胱転移として本邦28例めと思われた。

副甲状腺摘出術後に生じた偽痛風の1例

著者: 安藤亮介 ,   神沢英幸 ,   金子朋功 ,   岡田淳志 ,   安井孝周 ,   郡健二郎

ページ範囲:P.423 - P.425

71歳,女性。2002年2月,両側腎結石に対する治療目的に当院を受診した。高カルシウム血症を認め,精査にて原発性副甲状腺機能亢進症と診断した。2003年8月1日,副甲状腺摘出術を施行し,過形成と診断した。同年9月2日,右足関節痛が出現し,10月24日,右足関節痛増悪,関節滑液中に二水和ピロリン酸カルシウム結晶を認め,偽痛風と診断された。

画像診断

陰茎・前立腺悪性リンパ腫のMRI画像

著者: 服部裕介 ,   原芳紀 ,   松浦謙一

ページ範囲:P.427 - P.429

患 者 50歳,男性。

 主 訴 陰茎の無痛性腫脹。

 既往歴 尿管結石の既往あり。

 現病歴 2003年1月ごろから陰茎根部の硬結を自覚していた。2003年4月8日当科を受診した。発熱,夜間発汗,肉眼的血尿,排尿困難は認められなかった。

 入院時現症 体表リンパ節を触れず。陰茎根部から会陰部に連続する腫瘤を触知した。直腸診で一様に硬い前立腺を触れた。

 入院時検査所見 LDH 479IU/リットル(正常値:120~220IU/リットル)と高値であった。尿検査:赤血球 1~4/hpf,白血球 5~10/hpf。PSAなどその他の腫瘍マーカーおよび血液生化学検査所見は正常範囲内であった。尿細胞診:classⅡ。

 画像所見 骨盤部MRI T2強調像では,均一で低信号な陰茎海綿体腫瘤と前立腺の腫瘤を認めた(図1)。T1強調像でも均一で低信号であった。胸腹部CTでは肺野に小結節と右肺門部リンパ節および左外腸骨リンパ節に腫大を認めた。ガリウムシンチグラフィでは右肺門と骨盤に集積を認めた(図2)。

 入院後経過 2003年5月9日に陰茎腫瘤と前立腺の生検を行ったところ,ともにdiffuse large B-cell lymphomaの診断であった(図3)。骨髄生検では腫瘍細胞の浸潤は認められなかった。陰茎・前立腺に発生した悪性リンパ腫(臨床病期Ⅳ期)の診断でRituximabを併用したCHOP療法(cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)を行った。8コースの治療で陰茎腫瘤・前立腺の硬結は消失し,化学療法後12か月経過した現在,腫瘍の再発は認めていない。

病院めぐり

北海道済生会小樽病院泌尿器科

著者: 堀田浩貴

ページ範囲:P.432 - P.432

小樽市は札幌から約40km西に位置します。人口は15万人弱ですが,年間800万人が観光に訪れるいわゆる観光都市といえます。運河やお寿司などで有名ですが,時の首相からも都市再生のモデルとして「昔ながらの倉庫街と運河を生かし,年間に人口の何十倍の観光客が来ている」とお褒めの言葉をいただいています。小樽市のもう1つの特徴として,65歳以上の人口の占める割合が26%と高値で,高齢化社会をすでに先取りしている点です。特に当院周囲は34%とさらに高値となっています。

 さて,当院は大正13年7月15日に済生会小樽診療所として開設されました。昭和27年に社会福祉法人恩賜財団済生会支部北海道済生会小樽北生病院として開設,平成14年には「北生」が取れて北海道済生会小樽病院に名称変更され,病床数は289床となり現在に至っています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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