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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻7号

2005年06月発行

雑誌目次

特集 手術によらない限局性前立腺癌の治療

放射線外部照射

著者: 中村和正 ,   佐々木智成 ,   江藤正俊 ,   古賀寛史

ページ範囲:P.443 - P.447

要旨

 近年のコンピュータ技術の発達に伴って放射線治療はめざましい進歩をとげた。外部照射では,CT画像からターゲットの三次元的な位置情報を取得し,多分割絞りがターゲットに合わせた照射野を形成し,正確に照射を行う,いわゆる三次元原体放射線治療(three-dimensional conformal radiotherapy;3DCRT)が主力となっている。3DCRTにより,多くの放射線を前立腺に投与し,かつ副作用を低減化することが可能となった。放射線治療は前立腺癌の治療において今後ますます重要な役割を果たすようになると思われる。

前立腺小線源療法

著者: 門間哲雄 ,   斉藤史郎

ページ範囲:P.449 - P.455

要旨

 ヨウ素125を用いた小線源療法は低線量の放射性物質を前立腺内へ永久挿入する治療法であり,T2以下の限局性前立腺癌患者が適応となる。PSA 10ng/mリットル,Gleason score 6以下の症例は小線源単独治療となるが,それ以外には外照射の併用を行う。内分泌療法は前立腺容量が大きい症例に縮小目的として施行するのみで併用は行わない。治療成績は手術と同等とされるが,本治療の適応が早期癌であり比較はできない。他の治療法に比べて副作用は尿路・消化器症状ともに軽微で,特に性機能への影響は少ない。小線源の永久挿入による周囲への放射線被爆はきわめて少ないが,ガイドラインに準じた患者への適切な指導が必要である。

高線量率組織内照射(HDR-brachytherapy)

著者: 常義政 ,   原綾英 ,   吉田賢史 ,   平塚純一

ページ範囲:P.457 - P.461

要旨

 Stage B,C前立腺癌に対してわれわれの施設ではIridium-192マイクロ線源を用いた高線量率組織内照射(HDR-brachytherapy)を行っている。対象は108例で,Stage Bが82例,Stage Cが26例であった。ネオアジュバント内分泌療法を行ったのは44例であるが,放射線治療後のアジュバントホルモン療法は行っていない。治療後再燃と判断したのは9例であり,PSA failureの症例が5例(4.6%),Clinical failureの症例が4例(3.7%)であり,局所再発の症例は認めなかった。PSA非再発率は2年で96.3%,5年で89.6%であった。HDR-brachytherapyは重篤な副作用はなく,機能温存が期待でき,安全かつ有効な治療法と考えられた。

強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)

著者: 芝本雄太 ,   池谷知紗 ,   馬場二三八 ,   小田京太

ページ範囲:P.463 - P.467

要旨

 IMRTはコンピュータを駆使して病巣部に線量を集中する,新しい画期的な照射法である。IMRTを用いれば,正常組織の線量を抑えつつ,複雑な腫瘍の形状に合わせた線量分布で高線量照射が可能である。前立腺部に対しては,従来の照射法では66~70 Gyが耐容線量であったが,IMRTでは80 Gy以上を安全に投与できることが判明している。米国では,すでに80%を超える3年PSA非再発率が報告された。非常に精密な治療でマンパワーが必要であるため,どの施設でも施行可能ではないが,第一線病院では早急な整備・実施が望まれる。近い将来,前立腺癌の根治的外部照射はIMRTによってのみ行われるべき,といわれる時代が到来するであろう。

重粒子線療法

著者: 赤倉功一郎

ページ範囲:P.469 - P.473

要旨

 重粒子線(重イオン線)療法は,高精度の線量分布と大きな細胞致死作用という2つの優れた特徴を有し,前立腺癌の根治療法として期待される。放射線医学総合研究所での臨床試験により,前立腺癌局所制御に至適な重粒子線(炭素イオン線)照射線量は66 GyE/20回/5週であることが示された。また,T因子,Gleason score,PSA値によって低または高危険群に層別化して内分泌療法の併用を行った。これにより優れた成績(5年局所制御率,疾患特異,全生存率:99.2%,92.1%,89.5%)が得られた。当初は重篤な直腸尿道膀胱の有害事象の発生をみたが,照射方法確立後は軽度の尿道有害事象を認めるのみである。

陽子線療法

著者: 宮永直人 ,   赤座英之

ページ範囲:P.475 - P.478

要旨

 前立腺癌に対する陽子線治療は,Loma Linda University Medical Centerからの大規模な報告によって,長期生存は他の治療法と比較して遜色がなく,合併症はわずかであることが明らかとなっている。現在,同施設では限局性前立腺癌を対象とした長期予後を改善するためのdose-escalation strategyが進行中であるが,今後は日本も含めた各国の施設における症例の集積が必要である。近年は放射線治療だけでも多くの選択肢が登場してきており,外科的治療も併せて各治療法のQOLを深く掘り下げる必要がある。陽子線治療では,装置の小型化とコストの圧縮の検討も重要である。

高密度焦点式超音波治療(high intensity focused ultrasound:HIFU)

著者: 武藤智 ,   堀江重郎

ページ範囲:P.479 - P.485

要旨

 限局性前立腺癌52例に対して経直腸的高密度焦点式超音波治療(HIFU)を施行した。平均年齢は71.9歳,照射前のPSA値は平均6.4ng/mリットル。HIFU 6,12か月後の生検陰性率は63.2%,57.7%であった。前立腺部分照射と全照射を比較すると両者で生検陰性率は明らかな差を認めなかった。UCLA-PCIを用いたdisease-related QOLの評価では,前立腺全摘後は,排尿機能,排便負担感,性機能の項目で有意にQOLが悪化したのに対し,HIFU治療後においてはQOLの悪化を認めなかった。有害事象として尿閉(7.7%),精巣上体炎3例(5.8%),血尿2例(3.8%),直腸裂傷1例(1.9%)が認められた。HIFUは限局性前立腺癌に対してきわめて安全かつ有効な治療と考えられた。

手術手技 尿路変向・膀胱拡大術 2

尿管皮膚瘻

著者: 小野豊

ページ範囲:P.489 - P.495

要旨:様々な尿路変向術が行われるようになった現在も,尿管皮膚瘻は最も広く行われている手術の一つである。腸管を用いた尿路変向と比べ手軽な手術と思われがちではあるが,そのゴールをシングルストーマ,チューブレスというところにおけば決してやさしい手術とはいえない。チューブレス尿管皮膚瘻の実現のためには尿管血流の温存,尿管への張力をなくすこと,丁寧なストーマ形成が重要である。

回腸導管造設術

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.497 - P.505

要旨:回腸導管はいまや尿路変向術のゴールドスタンダードといっても過言ではない。また回腸導管はneobladderの特にStuder法に応用可能であることもあり,泌尿器科医にとって身に付けなければならない手術である。しかしこの手術は各施設において毎週のように頻回に行われる手術ではないため,少ない頻度で行われる手術をより有効に身に付けるためには,術前の準備が重要となる。術前処置およびストーマサイトマーキングは,手術法の選択とともに目的意識を持って行うことが肝要である。そのうえで手術手技および手術時における注意点や手術成功のためのポイントを述べる。

結腸導管造設術

著者: 杉本晃士 ,   杉村享之 ,   村石修

ページ範囲:P.507 - P.513

要旨:結腸を利用する導管造設術にはS状結腸導管,横行結腸導管,回盲部導管の3種類があるとされるが,そのうちでは横行結腸導管が最も頻用される術式と思われる。よく遭遇する,導管造設に回腸を利用できない状況としては骨盤部放射線治療後と短腸症候群例があり,そのような例の多くでも横行結腸導管は可能で,この術式のよい適応といえる。回腸導管術と同様に行える技術が泌尿器科医には要求されていると考える。

セミナー 泌尿器科領域における重症・難治性感染症とその対策 2

バイオフィルム感染症

著者: 山本新吾

ページ範囲:P.515 - P.521

要約:尿路結石,体内留置カテーテルなどを原因とするバイオフィルム感染症は抗菌薬を投与しても見かけ上の除菌が得られず,体内異物を除去しない限り感染症は完治しない。エンピリックに抗菌薬を投与する場合にはβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン,カルバペネム,キノロンなどの静脈投与が推奨されるが,薬剤感受性検査の結果が得られしだい,起炎菌をターゲットとした抗菌スペクトラムの狭い薬剤に変更する。抗菌薬投与期間は患者の状態,起炎菌消退の程度にもよるが,1~3週間を目安とする。

病院めぐり

平塚共済病院泌尿器科

著者: 波多野孝史

ページ範囲:P.524 - P.524

当院のある平塚市は,昔から東海道の宿場町として栄え,南は相模湾に面し,西は江ノ島や鎌倉の史跡に近く,西に富士の霊峰を仰ぐ,とても温暖な地域です。また,毎年7月に行われる七夕祭りでも有名です。病院のすぐ隣には平塚総合運動公園があり,Jリーグ「ベルマーレ湘南」のホームグランドになっていて,試合当日にはサポーターの声援が聞こえてきます。

 当院の前身は,大正8年4月,海軍火薬廠に併設された海軍共済組合平塚診療所です。開設時の職員は20名,病床数は10床で,内科,外科,細菌検査科の3科のみでした。診療所は,増床に伴い昭和4年に平塚海軍共済病院に改称しました。戦時中は火薬庫があったため空爆の標的とされ,何度も火災を起こし,病院は大きな被害を受けました。近くの県立高等女学校(現 平塚江南高校)に患者さんを移して診療を続けたとのことです。戦後GHQにより接収されましたが,昭和24年に全面返還され,現在の国家公務員共済組合平塚共済病院となりました。現在は病床数492床,診療科21科,常勤医師71名で,1日の平均外来患者数は約1,300人です。

北九州総合病院泌尿器科

著者: 世古昭三

ページ範囲:P.525 - P.525

北九州総合病院は,“百万都市”である北九州市の小倉南区に位置する北九州病院グループの基幹病院です。小倉は城下町として栄え,小倉祇園太鼓や松本清張ゆかりの地として有名です。また北九州市は,製鉄を中心に北九州工業地帯を形成し発展してきました。しかし,近年の少子高齢化によるためか徐々に人口減少をきたしています。北九州市はご存知のとおり5市が合併した街です。そのため500床以上の病院が8つあり,医療の激戦区といえます。

 当院は,昭和39年9月,北九州病院湯川療養所としてスタートし,地域住民のニーズに応えるため増改築を加え,昭和54年6月に総合病院として生まれ変わりました。幅広い医療活動を進めるとともに,北九州市救急医療システムへの私的協力病院としても活躍してきました。その甲斐あって,平成7年に北九州市では2番目の救命救急センターの指定を受けるに至りました。また,平成12年には臨床研修指定病院にもなり,地域医療の発展と教育病院としての役割に寄与していくこととなりました。増改築を繰り返し500床を有する総合病院に発展しましたが,昨年12月より急性期病院を目指し在院日数を短縮するため360床としました。今後の当院の目標は,電子カルテの導入,新病棟の開設,機能評価の受審など多岐にわたっています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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