臨床泌尿器科59巻8号

2005年07月発行

綜説

小児原発性膀胱尿管逆流（VUR）の病態

著者： 柿崎秀宏¹ 守屋仁彦¹ 田中博¹ 古野剛史¹ 橘田岳也¹ 野々村克也¹

所属機関： ¹北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科学分野

ページ範囲：P.535 - P.544

要旨　小児原発性VURにおいては，下部尿路機能異常がVURや腎瘢痕（逆流性腎症）の発生に深く関与している。新生児・乳児VURにおいては，排尿中に外尿道括約筋が弛緩するという正常な排尿反射が獲得されていない頻度が高く，このtransientな下部尿路機能異常が解剖学的に成熟していない尿管膀胱接合部に影響してVURを発生させると推測される。年長児における尿路感染やVURの発生には，排尿筋過活動，不適切な排尿習慣，便秘が関与し，これらに対する適切な治療を行うことにより，尿路感染の良好なコントロールとVUR自然消失が期待できる。小児原発性VURの病態診断のためには，適切な画像評価と下部尿路機能評価が必須であり，これに立脚した治療の遂行が重要である。