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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻9号

2005年08月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科体腔鏡下手術を安全に行うために

泌尿器科体腔鏡下手術を安全に行うための基本操作

著者: 松田公志

ページ範囲:P.623 - P.628

要旨 泌尿器腹腔鏡手術を安全に遂行するためには,各種止血器具やクリップの適切な使用法,適切なポート位置の選択と安全な挿入法,術者と内視鏡係の良い連携,両手を用いた手術操作,状況に応じた適切な手術器具の選択などについて基本的な理解と修練が求められる。特に避けるべき手術操作として,膵尾部などに鉗子の先端が食い込むような操作,腸管を通常の把持鉗子で把持すること,腸管や横隔膜周辺での電気凝固の使用,剝離不十分な血管のクリッピング,超音波メスの先端を組織の中に埋もれさせて使うことなどが挙げられる。

泌尿器科体腔鏡下手術を安全に行うための手術機器の使い方

著者: 服部良平 ,   小野佳成

ページ範囲:P.629 - P.636

要旨 最近の腹腔鏡下手術の進歩は著しく,開放手術で行われる手術の多くが腹腔鏡手術で行われるようになっている。技術の向上や手術器具の進歩により腹腔鏡下手術での手術手技などの制限を克服してきた。しかし腹腔鏡下手術器具も複雑になっているため,正しい使い方を知って用いないと合併症に繋がる可能性がある。本稿では,腹腔鏡下手術に使われるトロカー,電気メス,超音波切開装置,クリップ,ステープラーについて説明し,合併症に繋がる可能性のある使用方法,正しい使い方の概説を行った。

腹腔鏡下腎・副腎手術を安全に行うために

著者: 溝口裕昭 ,   花田麻里 ,   牟田口和昭 ,   梶原充

ページ範囲:P.637 - P.641

要旨 1996年6月から筆者らが関わった腹腔鏡下手術243例のうち,40例(16.5%)に術中合併症といえるトラブルが生じ,20例(8.2%)が開放手術に移行した。出血によるもの8例,癒着によるもの7例,術者の技術的な問題によるものが5例である。ここでは腹腔鏡下腎・副腎摘除術に関する術中トラブル26例について検討した。腹腔鏡下腎・副腎手術を安全に行うために導き出された結論は2つである。一つには既往歴,術前画像診断などから癒着のない症例を選択すること,一つには腹腔鏡用器具はその特性を正しく認識して適切に使用することである。

後腹膜鏡下腎尿管手術を安全に行うために

著者: 高橋義人 ,   横井繁明

ページ範囲:P.643 - P.648

要旨 後腹膜鏡下腎尿管手術の手術手技について,合併症回避,出血回避の観点からポイントをまとめた。すべての手順手技に合併症が起こりうること,手術開始前から合併症回避の準備をしておく必要があることを強調した。血管処理については,十分な剝離,適切な血管遮断器具が重要である。偶発的な出血のみに使用する器具もあり,腹腔鏡手術に関する器具のさまざまな情報に習熟しておくことが対策に通じることを述べた。腹腔鏡手術遂行の可否に関する判断は,手術遂行グループとしての技量を勘案して各手術手順遂行に要した時間,出血の仕方,出血量から判断する必要があることを述べた。

後腹膜鏡下腎・尿管手術を安全に行うために

著者: 武田正之 ,   座光寺秀典 ,   土田孝之 ,   荒木勇雄

ページ範囲:P.649 - P.655

要旨 体腔鏡下手術における合併症には,気腹操作に伴うもの,気腹そのものによるもの,腹腔鏡画像の制約によるもの,電気メスに関するものがある。体腔鏡下手術における合併症の予防法としては,1)常にモニターで確認しながら手術を施行すること,2)盲目的な操作は行わないこと,3)周囲臓器,後面の臓器や組織に注意すること,4)器械,器具の操作をよく知っておくこと,5)気腹圧はできるだけ低圧にすること,6)気腹装置,電気メス,超音波メスなどの作動状態に常に注意をすること,である。体腔鏡下手術において知っておくべき基本的事項には,使用装置と使用器具に関することと,手術操作に関することがある。開腹のタイミングとしては,①視野が確保できない出血,②体腔鏡下ではコントロールできない出血,③体腔鏡下手術手技では修復できない臓器損傷,④長時間手術,⑤その他,これ以上の体腔鏡下手術の継続が困難と考えられるような状況,がある。

体腔鏡下ドナー腎摘除術を安全に行うために

著者: 田邉一成 ,   宮本直志 ,   徳本直彦 ,   石田英樹 ,   白川浩樹 ,   新村浩明 ,   瀬戸口誠 ,   土岐大介 ,   東間紘

ページ範囲:P.657 - P.662

要旨 内視鏡下ドナー腎摘除術は,術後疼痛の軽減,入院期間の短縮,早期社会復帰などの利点が多いことが報告されており,今後とも増加の一途をたどるものと思われる。一方,ドナー腎摘除術は,通常の腎癌に対する腎摘除術と違い,最後まで腎動静脈の切断ができないこと,腎動静脈の切断後は腎機能保持のために速やかに腎臓を摘出しなければならないことなどから最も難度の高い腎摘除術といえる。特にドナー腎摘除術は健常者であるボランティアに対する手術であることからも安全が最優先される手術であることは論を待たない。安全な体腔鏡下ドナー腎摘除術のために,最も基本となることは,解剖学的オリエンテーションをしっかりと確認しながら,ていねいな剝離操作を行い,無血野での手術を心がけることである。これが,安全な手術への近道であり,このことが結果的に腎臓への負担を軽減させることになり,良好な移植腎機能を得ることにつながる。

体腔鏡下ドナー腎摘除術を安全に行うために―気腹を用いない腹腔鏡補助下ドナー腎摘除術

著者: 牛山知己 ,   鈴木和雄

ページ範囲:P.663 - P.668

要旨 われわれの腹腔鏡補助下ドナー腎摘除術は,はじめに切開創を置いた気腹をしない腹壁吊り上げ法で,腹膜外に到達し,必要に応じてハンドアシストを併用している。はじめに切開創を作ることで必要に応じて切開創を広げることができ,術中のトラブルに対しても手を入れてすぐに対処できる。本術式では,ドナーに対する安全を第一に考えることが重要で,さらに腎臓を愛護的に扱い,そのうえで手術時間の短縮や出血量の減少,阻血時間の短縮をめざしていく。緊急処置を要する場合に,開放手術に移行することを躊躇しないことが最も大切である。

後腹膜リンパ節郭清術を安全に行うために

著者: 川端岳 ,   原勲

ページ範囲:P.671 - P.677

要旨 泌尿器科領域における体腔鏡下手術は腎癌,腎盂尿管癌などの悪性腫瘍に対して現在では標準術式の一つとして確立されているが,手術機器や技術の進歩に伴い精巣腫瘍に対しても適応が拡大されつつある。進行性精巣腫瘍に対する化学療法後症例での本法は,集学的治療の一環として重要な治療手段であるが,従来法は切開創が大きく侵襲性の高い術式であった。われわれは,後腹膜鏡下に本法を行っているため,手術手技上のポイントと合併症対策などについて述べる。

後腹膜リンパ節郭清術を安全に行うために

著者: 加藤司顯 ,   東原英二

ページ範囲:P.679 - P.683

要旨 後腹膜リンパ節郭清術は現在,多施設で行われている術式となっている。手術をするにあたって,適切な機器として,右手はサクションのついた電気メス,血管近傍では使い慣れた彎曲のケリー鉗子が最適と考える。また,血管やリンパ管を露出した際にはリガシュアーTMが有効である。左手は出血した際を想定し,バイポーラ鉗子が適している。腰動静脈などを誤って切断してしまった場合は,ガーゼ圧迫,サクションで出血点を見つけ,バイポーラやクリップなどで止血。大血管損傷であればガーゼ圧迫しつつただちに開創手術へ移行することが望ましい。

体腔鏡下前立腺全摘除術を安全に行うために

著者: 中川健

ページ範囲:P.685 - P.690

要旨 腹腔鏡下前立腺全摘除術では,従来の開放手術で求められた限局性前立腺癌に対する根治性と尿禁制などの機能温存に加え,腹腔鏡下手術の低侵襲性と早期回復の利点を期待でき,骨盤腔深部での良好な視野を獲得可能となる。しかし,DVC結紮や膀胱尿道吻合,あるいは膀胱頸部の剝離などは腹腔鏡下手術として技術的にやや難しく,確実な基本手技の習得が必要となる。低侵襲手術が危険であってはならず,腹腔鏡下前立腺全摘除術の施行には,指導者の下での研修も必須であると考える。術式の詳細はこれまでの報告や教育ビデオも参考にして,ここでの腹腔鏡下前立腺全摘除術を安全に行うための注意点,コツを記憶にとどめておいていただきたい。

体腔鏡下前立腺全摘除術を安全に行うために

著者: 寺地敏郎

ページ範囲:P.691 - P.695

要旨 前立腺の周囲には直腸や閉鎖神経,外腸骨静脈など,重要な解剖学的構造がある。また,前立腺は腎とは異なり膀胱や尿道(括約筋)との連続した解剖学的構造の中にある。こうした状況下での体腔鏡下前立腺全摘除術は,鉗子の先のわずかな動きの誤差が周術期成績はもちろん,制癌性,QOLのコントロールに重大な結果を招く手術である。加えて,膀胱尿道吻合や深部での止血操作に柔軟に対応できる体腔鏡下での縫合操作を要求される。その安全な施行のためには詳細な解剖の理解と日頃の練習と同時に,器具,機材の選択も重要な要素である。

ハンドアシスト体腔鏡下手術を安全に行うために

著者: 河内明宏 ,   米田公彦 ,   内藤泰行 ,   邵仁哲 ,   水谷陽一 ,   三木恒治

ページ範囲:P.697 - P.702

要旨 ハンドアシスト法による体腔鏡下手術は開腹術と同じような触覚が得られ,また,手による操作が鉗子と比較して動く範囲や操作性において柔軟性が高いため,比較的安全に施行できる。また,標準的術式による体腔鏡下手術のトラブル時にも低侵襲性を保ちながら手術を完遂することができ,有用な方法である。しかし一方で,ブラインドでの操作が多くなったり,操作腔に手を入れることにより逆に手術操作が難しくなる可能性もある。さらに腔内に入れた手を電気凝固や鉗子で傷つけてしまうこともある。これらHALSの利点と欠点を十分理解したうえで,術式を十分理解し,安全に行うポイントに十分習熟する必要がある。

学会印象記

第93回日本泌尿器科学会総会印象記

著者: 石村大史

ページ範囲:P.704 - P.705

第93回日本泌尿器科学会総会は2005年4月13日から4月16日まで東京台場のホテル日航東京,ホテルグランパシフィックメリディアンを会場に,「安全で,温かな“テーラーメードの医療”を目指して」というテーマのもと開催されました。

 会場周辺はご存知のように東京湾に浮かぶシーサイドリゾートで,周辺にはいくつもの観光スポットがあり,スーツ姿の学会参加者とともに,観光客,修学旅行の生徒たちも数多く見かけられました。われわれも開催期間中,昼は学会に,夜は観光にと十分にお台場を満喫することができました。

第100回米国泌尿器科学会(AUA)に参加して

著者: 恒吉研吾

ページ範囲:P.706 - P.707

今年のAUAは5月21日から26日の6日間,テキサス州サンアントニオ市のコンベンションセンターで行われました。

 サンアントニオ市はテキサス州南西部に位置し,1年に300日以上の晴天と,年間平均気温20℃という温暖な気候に恵まれています。以前から中南米への交易拠点として栄え,現在では年間観光客1千万人以上を誇る全米有数の国際観光都市で,歴史と伝統そして多様な文化が息づく街です。特に有名な観光スポットとしては,テキサス独立戦争の際の激戦地「アラモの砦」や,市内中心部を流れるサンアントニオ川を利用して開発された水辺の散歩道である「リバーウォーク」などがあります。人口は123万人(2004年),近年特に人口が急増している都市(全米第9位)の1つで,州西部の商業,金融,工業の中心地となっており,食品業のほか,航空機,建築材など多種多様な工業が発展しています。また,市の内外に空軍基地があり,軍事都市としての一面も持っています。しかし,実際の印象としましては,思っていたよりも,どこにそんな123万人も住んでいるのか不思議なくらい静寂で落ち着いた街並みが拡がり(やはり日本の人口密度が異常なのでしょうか?),市街地も緑豊かな公園や歴史を感じさせる大きなbuildingが散在していてのんびりとした雰囲気を感じました(AUA 2005 Annual Meetingのホームページを開いたときに流れていた陽気なアニメーションから想像するような,砂漠の真ん中にありサボテンに囲まれているような街…ともまた違っていましたが…)。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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