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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科60巻13号

2006年12月発行

雑誌目次

綜説

顕微鏡的血尿の臨床的意義

著者: 丸茂健 ,   松本真由子

ページ範囲:P.953 - P.961

要旨 顕微鏡的血尿の原因疾患を発見し,患者の健康を守ることが最も重要であるが,すべての陽性者について一様に診断を進めることは医療経済効率の面から議論のあるところである。二次検診として,超音波検査,血清免疫グロブリン測定,尿細胞診検査は侵襲が低く,幅広く疾患発見に寄与する。さらに,対象が有する危険因子に適宜応じた検査による高次検診を,また経過観察も含めて積極的に精査を行うことは,尿路性器疾患の早期発見のために意義がある。

手術手技 腹腔鏡下手術時代における開放手術・1

副腎摘除術

著者: 簑和田滋

ページ範囲:P.963 - P.967

要旨:副腎の小腺腫は主に腹腔鏡下手術で治療されるようになった。しかし手術適応症例は少なく,手技の熟練は決して容易ではない。腹腔鏡下手術に習熟していない施設では,腹腔鏡補助下小切開法による副腎摘除術のほうが安全性に優れる。大きな腫瘍,悪性腫瘍などでは開放性手術が適応となる。ここでは腹腔鏡補助下による小切開手術,および胸腹式拡大手術の要点について述べた。

副腎摘除術

著者: 坂本善郎

ページ範囲:P.969 - P.972

要旨:Open surgeryの副腎への到達法は経腹式,経背面式,経腰式,経胸腹式などがあり,それぞれ利点がある。Nagamatsu incisionとして知られる経背面式切開の変法(Nagamatsu変法)では,第11,12肋骨または第12肋骨のみの切除を行う。Nagamatsu incision変法は合併症も少なく,確実で安全な副腎到達法である。

副腎摘除術

著者: 鶴信雄 ,   鈴木和雄

ページ範囲:P.975 - P.981

要旨:副腎腫瘍に対する外科的治療は腹腔鏡下手術がよい適応であるが,大きな腫瘍や副腎癌,周囲臓器との合併切除を要する症例などでは開放手術を選択する必要がある。また,腹腔鏡下手術からの開腹移行の場合もあり,内視鏡外科医といえども習得しておかなければならない重要な手術である。副腎周囲の解剖を理解したうえで手術に臨み,腫瘍の内分泌活性や特徴に応じた術前・術後管理を適切に行うべきである。

セミナー 下部尿路症状(LUTS)診療の最前線 3

排尿機能に関する最近の話題―下部尿路症状と勃起障害は関係する?

著者: 武田正之

ページ範囲:P.983 - P.987

要約:最近,下部尿路症状(lower urinary tract symptom:LUTS)を有する患者と勃起障害(erectile dysfunction:ED)有病率が相関しているとの報告が増加している。LUTSに対して最も高頻度に使用される薬物はα1-blockerであるが,理論的にはこの薬剤は勃起機能改善効果を示す。前立腺や尿道平滑筋にはいくつかのphosphodiesterase(PDE)isozymeが発現しており,理論的にはED治療薬であるPDE5-inhibitorは,下部尿路閉塞性疾患の排尿障害を改善し得る。今後は,PDE4,5-inhibitorとα1-blockerの併用が排尿障害と性機能障害の両者の治療薬として期待される。

原著

腎盂バルーンを閉塞バルーンとして施行した経尿道的尿管砕石術の経験

著者: 平野章治 ,   金谷二郎 ,   小堀善友 ,   新倉晋

ページ範囲:P.997 - P.1001

 体外衝撃波による砕石不成功例と,結石が小さく,X線上みにくい水腎症の高度な嵌頓尿管結石患者10例に対して,経皮的腎瘻造設術時に使用した腎盂バルーンを閉塞バルーンとして使用した経尿道的尿管砕石術を施行した。経皮的腎瘻造設術は手術前3~7日に施行した。手術時,腎盂バルーンを尿管結石上部に移動させて再固定し,主にレーザーにより砕石した。合併症は経皮的腎瘻造設術時の著明な腎出血,術中のバルーン破裂,敗血症がそれぞれ1例みられたが,術中の視野は確保され,砕石効果がバルーン使用により上がった。術中,腎盂への結石移動を気にせずに施行できた。残石はみられなかった。本法は著明な水腎症を伴う嵌頓上部尿管結石症例で有用な方法である。

症例

左側腹部痛を呈した大きな副腎皮質癌

著者: 伊藤祐二郎 ,   吉峰俊輔 ,   内田康光 ,   香野日高 ,   増田毅

ページ範囲:P.1003 - P.1005

 症例は56歳,男性。左側腹部痛を主訴に来院した。エコー上,左腎上極に径15cm大の腫瘍を認めた。CT,MRI,内分泌学的検査の結果,副腎皮質癌の診断にて,経腹的左副腎摘出術を施行した。摘出標本の大きさは径18×12×8cm,病理組織学的所見はadrenocortical carcinomaであった。

自然破裂を契機として発見された腎細胞癌

著者: 泉浩二 ,   小中弘之 ,   並木幹夫

ページ範囲:P.1007 - P.1010

 症例は34歳,女性。右背部痛を主訴に近医を受診,CTで右腎周囲に血腫が認められ当院を紹介され,緊急入院となった。若年女性であり,血管造影にて腫瘍内に微小動脈瘤が認められ,腎血管筋脂肪腫の自然破裂と診断し塞栓術を施行したが,腎摘除術は患者が拒否したため施行しなかった。経過観察中のCTにて,腫瘍は著明に増大し偽被膜が認められ,腎細胞癌が疑われたため,右腎細胞癌T2,N0,M0と診断し右肋骨弓下横切開にて根治的右腎摘除術を施行した。組織学的に平滑筋成分や脂肪成分はみられず,淡明細胞癌と診断した。画像上,腫瘍内に明らかな脂肪は認められなかったが,血管構造が豊富で腎血管筋脂肪腫との鑑別が非常に困難な症例であった。自然破裂した腎細胞癌の予後に関しては一定の見解が得られていないが,腫瘍細胞の播種の可能性もあり,厳重な経過観察が必要であると考えられる。

5年間放置されていた巨大な精巣悪性リンパ腫

著者: 内田健三

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 症例は80歳,男性。5年前より右陰囊内の腫瘤に気づいたが放置していた。入院時の身体所見では,右陰囊内に小児頭大の腫瘤が認められた。MRIで右精巣腫瘍と診断,右高位精巣摘除術を施行した。腫瘍は13×9×8cm,重量は589gであった。病理組織的検査では,悪性リンパ腫,diffuse large B-cell typeであった。原発性悪性リンパ腫は高齢者に好発し,予後不良である。本症の診断と治療に関して若干の文献的考察を加えて報告する。

10年かけて増大した精巣類表皮囊胞

著者: 澤崎晴武 ,   吉川武志 ,   辻裕 ,   瀧洋二 ,   竹内秀雄

ページ範囲:P.1015 - P.1017

 症例は60歳代,男性。排尿困難を主訴に受診したが,その際に左陰囊内腫瘤を指摘された。腫瘤は10年前から気づいていたが放置しており,徐々に増大してきた。エコー上,内部はheterogenousで腫瘤辺縁に一部血流を認めた。精巣悪性腫瘍を否定できなかったため,高位精巣摘除術を施行した。病理診断の結果は精巣類表皮囊胞であった。精巣類表皮囊胞として精巣全体を占めるものは比較的稀であり,本邦報告例としては10例目に相当した。

小さな工夫

小児膀胱鏡を使った内視鏡下尿管結石摘出術

著者: 坂本亘 ,   石井啓一 ,   井口太郎

ページ範囲:P.1020 - P.1021

 成人では,上部尿路内腫瘍や上部尿路結石の診断または処置に尿管鏡がよく使われる。しかし,小児でこれらの疾患に遭遇することはきわめて稀であるため,尿管鏡を使う機会は少ない。また,使用しなければならない場合でも,小児用として開発された尿管鏡はなく,成人用の長い尿管鏡が代用されるのが現状である。われわれは最近,小児尿管結石に対して6 Frの小児膀胱鏡を尿管鏡の代用として使用し,内視鏡下尿管結石摘出術を行い,案外,重宝することを経験した。

 症例は1歳3か月の男児(身長84cm)と3歳0か月の男児(身長94cm)で,ともに左尿管下端部に8×5mmと7×3mmの尿管結石を認めた。2例とも全身麻酔下,小児膀胱鏡(Wolf社製,外径6F,有効長140mm)を,0.25mmガイドワイヤー下,尿管口の拡張なく尿管内に挿入しえた。空気圧結石破砕器(LithoClast(R))で結石を破砕した。結石破砕片は小児膀胱鏡に付随する把持鉗子にて摘出した。尿管カテーテルは留置しなかった。全手術時間は30分程度であった。翌日,オムツ内に細かい結石破砕片(蓚酸カルシウム)と,X線像での結石消失を確認した。

病院めぐり

藤沢湘南台病院泌尿器科

著者: 諏訪裕

ページ範囲:P.1022 - P.1022

 藤沢市は人口約40万人で,西に茅ヶ崎市,東に鎌倉市と隣接する湘南地区の中核都市です。南北に長く,南は有名な江ノ島を中心とした湘南海岸を有し,古くは高級別荘地として開けてきました。それに対して藤沢湘南台病院が位置する北部地区はもともと農村地帯で,昔は高座豚として知られる高座郡でしたが,藤沢市が市町村合併の歴史のなかで北へ拡張を続けるなか最後に編入された地区です。

 当院は農村医療過疎地域解消のため昭和7年に鈴木文蔵によって,外科,内科,産婦人科の21床の鈴木病院として開設されました。以後,時代の要請で結核病棟が中心の病院でしたが,昭和26年に財団法人同友会神奈川高座病院として徐々に病床数を増やし,平成6年に現在の藤沢湘南台病院と改名しました。現在では,急性期病棟240床,療養病棟31床,回復期リハ病棟32床の計303床の藤沢北部地区の急性期中核病院としての役割を担っています。そのほか,健康増進施設ライフメディカルフィットネス,在宅センター,訪問医療センター,老人ケアセンターを併設し,予防,治療,老人ケアまでを行う総合的医療を目指しています。

市立砺波総合病院泌尿器科

著者: 江川雅之

ページ範囲:P.1023 - P.1023

 砺波市は富山県の西南部に位置する人口5万人の小さな田舎街です。のどかな田園風景が広がる砺波平野には,緑豊かな屋敷林に囲まれた家々が平野一面に碁石を散りばめたように点在しています。春には市の花でもあるチューリップのカラフルな色,夏は緑色,秋は黄金色,冬は一面銀色となるこの美しい散居村のなかで,最も近代的な構造物が市立砺波総合病院です。現在,病床数514床,常勤医師は93名(うち臨床研修医14名)であり,砺波市を含む砺波広域医療圏(人口15万人)の中核病院として機能しています。

 泌尿器科は,三崎俊光(S44卒),江川雅之(S62卒),新倉晋(H8卒)の3人体制で診療を行っています。いずれも指導医であり,忙しくても上手く仕事を分担して日々の診療をこなしています。外来は木曜日のみ1診制で,ほかの曜日は初診・再診の2診制で,1日平均50人ほどの患者さんを診察しています。午前中に病棟係の医師がESWLも行っています。手術は月,水,木曜日で,木曜日のみ朝から手術を開始しています。どんな手術でも夕方5時頃までには終了し,医師以外のスタッフからも喜ばれています。火曜日午後はカテーテル交換と予約検査を,金曜日午後はできるだけ予定を入れずに勉強会や書類整理などに当てていますが,なぜか週末には緊急処置を要する紹介を多くいただき,なかなかゆっくりさせてもらえません。

交見室

精液検査にMakler chamberを使用するなら知っておきたいこと

著者: 吉池美紀 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.1025 - P.1025

 2002年に全国の不妊診療施設を対象として,精液検査法の実態に関するアンケート調査が実施された1)。その結果,精子濃度と運動率を同一視野で測定できる簡便なMakler chamberを採用してルーチン検査を行っている施設が全国の50%にも及んでいた。筆者らは,多くの施設でMakler chamberの検査上の特性がほとんど理解されずに使用されていることを強く感じた。その後2003年に日本泌尿器科学会の監修のもと「精液検査標準化ガイドライン」2)が刊行され,標準法としてWHOマニュアルでも推奨されているように,精子運動率は標本の間隙20μmのスライドグラス,精子濃度は希釈・不動化後に血球計算盤を用いる測定法が採用された。しかし時間的制約などの理由により,Makler chamberを使用する施設もいまだに多いと思われるため,その際にはぜひ以下の注意点を参考にしていただきたい。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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