icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科60巻3号

2006年03月発行

雑誌目次

綜説

再燃前立腺癌におけるドセタキセル療法の現状と展望

著者: 島居徹 ,   赤座英之

ページ範囲:P.177 - P.187

要旨 ホルモン療法抵抗性の前立腺癌の治療戦略は限られており,特に化学療法剤に関しては従来有効性が乏しいと考えられてきた。しかし,近年,再燃前立腺癌に対するタキサン系薬剤を用いた治療の良好な成績が報告されている。タキサン系薬剤はヨーロッパイチイの針葉から抽出,半合成された抗癌剤であり,作用はtubulin重合促進による微小管安定と紡錘体形成阻害による細胞分裂の停止である。またbcl-2蛋白のリン酸化によるアポトーシス抑制作用の阻害によるアポトーシス誘導もあり,各種固形癌に対し単剤でも高い奏効率を示すとされている。このタキサン系薬剤はパクリタキセル,ドセタキセルに代表され,単剤治療,硫酸エストラムスチンなどとの併用療法が行われているが,2004年にドセタキセル3週ごとの投与とプレドニゾロンとの併用療法が生存率に寄与するとされ,米国Food and Drug Administration(FDA)により承認された。本邦ではこのドセタキセルについてはホルモン不応性前立腺癌の第Ⅱ相臨床試験が進行中であるが,欧米の成績に匹敵する治療成績が報告されつつある。また最近,このドセタキセル治療を前立腺全摘症例のなかのハイリスク群や,局所進行群に対してネオアジュバント療法として用いる報告もみられている。さらに,分子標的薬との併用による臨床試験なども実施されており,今後が期待される化学療法剤と考えられる。

手術手技 尿路内視鏡手術 3

前立腺肥大症に対するレーザー治療―ホルミウムレーザー前立腺核出術

著者: 松岡啓

ページ範囲:P.191 - P.195

要旨:前立腺肥大症に対するレーザー治療は,照射法やレーザーの波長により数種類の手技がある。これらのなかでも切開・蒸散・凝固作用を併せ持つホルミウムレーザーを使用した前立腺核出術(HoLEP)は,レーザーの組織深達性が浅く,肥大前立腺を外科的被膜から核出し,前立腺部に有効な空洞を形成する安全性の高い術式として盛んに試みられるようになった。本稿ではHoLEP手技について解説し,特に本法のポイントを詳述した。

前立腺肥大症に対するレーザー治療

著者: 持田蔵

ページ範囲:P.197 - P.203

要旨:前立腺肥大症に対する観血的治療として,経尿道的前立腺切除術(TURP)が広く行われている。しかしながら,巨大腺腫に対してのTURPは困難であり,被膜下前立腺摘除術が多く行われている。ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)は,出血や低Na血症のリスクがきわめて低く,また術後入院期間も短いといった長所を有する。TURPや被膜下前立腺摘除術の次なる術式として注目されている。

前立腺肥大症に対するレーザー治療―Visual laser ablation of prostate(VLAP)を中心に

著者: 谷本竜太 ,   那須保友

ページ範囲:P.205 - P.209

要旨:Visual laser ablation of prostate(VLAP)は内視鏡を用いて直視下にレーザーを照射することが可能であり,泌尿器科医にとってなじみやすい治療法である。その利点を引き出すべく,症例の選択(前立腺重量50g以下)を厳密に行うことが最大のコツといえる。欠点としては,術後一時的に膀胱刺激症状,排尿困難が増悪することである。しかし,TURPに比して明らかに低侵襲であり,前立腺肥大症に対するオプションの1つとなりうるものと考えられる。

セミナー 血栓症・肺塞栓症の予防と対策 3

深部静脈血栓症の診断と治療

著者: 瀬尾憲正

ページ範囲:P.211 - P.217

要約:泌尿器大手術症例では,高齢,悪性腫瘍,術中截石位,骨盤内手術,長時間手術など多くの静脈血栓塞栓症の危険因子が存在し,欧米では肺血栓塞栓症を含む症候性静脈血栓塞栓症は泌尿器大手術症例の1~5%にみられる。予防対策が最も重要であるが,肺血栓塞栓症の発症率,死亡率,罹患率をさらに下げるためには,ハイリスク患者に対して適正なスクリーニングのもとで,早期に確定診断を行い,迅速かつ確実な治療を行う必要がある。

症例

結節性硬化症に腎,肝,大網の血管筋脂肪腫を合併した1例

著者: 内田康光 ,   西山徹 ,   長谷川親太郎

ページ範囲:P.219 - P.221

患者は結節性硬化症の25歳,女性。2003年3月頃より体重減少,食欲低下を認め,6月頃より乾性咳嗽が出現したため近医を受診した。CTにて腹腔内腫瘍および大量の胸腹水貯留を認め,当科を紹介された。画像精査で肝,腎のほか,大網に巨大な腫瘍を認めた。大網腫瘍を経皮的針生検したところHMB-45陽性であり,血管筋脂肪腫と診断した。さらに,胸水の性状は乳糜状であり,肺リンパ管筋腫症が疑われた。

陰囊壁原発の平滑筋肉腫

著者: 右田敦 ,   宮本純治

ページ範囲:P.223 - P.225

患者は61歳,男性。主訴は左陰囊内の腫瘤。左陰囊内に鶏卵大で表面平滑の腫瘤を触知した。圧痛はなく,左精巣・精巣上体との判別は困難であった。検査データに異常はなく,超音波所見は充実性で内部均一であった。左精巣または精索腫瘍を疑い,左高位精巣摘除術を施行した。組織学的に陰囊壁原発の平滑筋肉腫と診断した。術後5か月の現在,再発の徴候はない。陰囊壁原発の平滑筋肉腫は稀で,今回の症例は本邦で15例目と考えられた。

持続勃起症を呈した膀胱癌陰茎海綿体転移

著者: 河合正記 ,   岡島和登 ,   小林一樹 ,   森山正敏

ページ範囲:P.227 - P.229

患者は62歳,男性。初診時既に肺,後腹膜リンパ節に転移を認める膀胱癌で,経尿道的膀胱腫瘍切除後メソトレキサート+塩酸エピルビシン+シスプランチン併用療法(MEC療法)を開始した。2クール目を施行中に陰茎部痛と硬結を訴えた。陰茎は半勃起状態で疼痛を伴った。陰茎転移の疑いで陰茎海綿体生検および陰茎-尿道海綿体シャント術を施行したが疼痛は改善せず,その後急激な転帰をとった。病理結果は海綿体血管内にびまん性に移行上皮癌が広がる膀胱癌陰茎海綿体転移であった。

虫垂切除後の縫合糸を核とした膀胱周囲膿瘍

著者: 小黒俊樹 ,   橋本樹 ,   矢崎順二 ,   野宮正範 ,   本田和也 ,   山口脩

ページ範囲:P.231 - P.233

患者は36歳,女性。急性リンパ性白血病の治療中に尿路感染症を発症した。同院泌尿器科にて精査を施行したところ,尿膜管膿瘍が疑われ手術を施行した。絹糸と思われる人工物周囲に沿って炎症細胞の波及を認めたため,22年前に施行した虫垂切除術の縫合糸膿瘍と診断された。本症例は化学療法による免疫力の低下により,膀胱周囲膿瘍を発症した可能性が示唆される。今後,同様の症例に対し十分な注意が必要である。

骨形成を伴った囊胞随伴性腎細胞癌

著者: 金井邦光 ,   古内徹 ,   小堺紀英 ,   大東貴志 ,   村井勝 ,   三上修治

ページ範囲:P.235 - P.237

患者は44歳,男性。2003年の健診の超音波検査にて左腎上極の囊胞性腫瘤を指摘され,1年後には腫瘤の大きさが約2倍になった。腹部CT・MRIを施行したところ,Bosniak分類のカテゴリーⅢ,囊胞を伴う腎細胞癌と診断され,腰部斜切開にて左腎部分切除術を施行した。病理組織学的診断は骨形成を伴った囊胞随伴性腎細胞癌であった。

若年者にみられた腎盂尿路上皮癌の1例

著者: 影林頼明 ,   藤本健 ,   川上隆 ,   岡島英五郎

ページ範囲:P.239 - P.241

患者は21歳,男性。肉眼的血尿を主訴に来院した。点滴経静脈性尿路造影検査および逆行性腎盂造影検査にて右腎盂腫瘍を疑われた。尿管鏡下の生検で尿路上皮癌の病理診断を得,右腎盂尿路上皮癌cT1N0M0の診断のもと,右腎尿管全摘除術および膀胱部分切除術を行った。文献上,腎盂尿路上皮癌はほとんどが40歳以上に発生し,若年者に発生することはきわめて稀である。

TVT手術後の腟壁びらん

著者: 加藤久美子 ,   鈴木省治 ,   奥村敬子 ,   古橋憲一 ,   鈴木弘一 ,   吉田和彦 ,   村瀬達良

ページ範囲:P.243 - P.245

喘息発作,走行での腹圧性尿失禁を主訴とした47歳,女性。TVT手術施行9週後,性交相手が陰茎にチクッとした痛みを感じるとの訴えで受診し,前腟壁右側にメッシュが透見された。3週後に,さらに浮いてきた露出部を牽引切除した(13×7mm)。びらんは治癒し,尿失禁の再発もなかった。腟壁びらんの合併症はTVT手術では少ないが,性交相手の違和感などに注意し,視触診や膀胱鏡による腟内観察で確認する必要がある。

小さな工夫

体腔鏡下腎部分切除時の吸収性クリップを用いた腎実質縫合法

著者: 座光寺秀典 ,   武田正之

ページ範囲:P.247 - P.247

体腔鏡下腎部分切除術時の阻血下腎実質縫合による止血法は,開放手術と同様に腎切離面の止血に優れ,尿漏のリスクも回避できる1)。しかし,腔内での腎の縫合は熟練を要し,かつ温阻血時間短縮のため迅速性も求められる難易度の高い手技である。

 われわれは,吸収性クリップ(ラプラタイ(R):エチコンエンドサージェリー社製)を用いて,糸結びを必要としない腎実質縫合を試み,従来の方法より温阻血時間を短縮することができた。

病院めぐり

洛和会音羽病院泌尿器科

著者: 北村健

ページ範囲:P.248 - P.248

京都市の東にある山科区,いわゆる洛東地区の中核病院である洛和会音羽病院の泌尿器科のご紹介をさせていただきます。洛東地区とは京都市中心の東側に位置し,地理的には大津市と京都市の狭間に位置しています。京都の市内とは一郭隔てており,独自の生活圏が形成され,その地域住民の医療の担い手として,その中心的役割を音羽病院が担っていると密かに自負して精進しています。

 さて,音羽病院は1980年開設の比較的新しいといえる病院ですが,現在では600床以上の病床を有する状態に成長しました。しかも近年,特にその独自の病院戦略と,新人医師育成でいろいろなメディアからも注目を集めることが多くなっています。総合医局であり,皆が他科とも協力し,非常によい連携が取れる病院診療体制であることが自慢の1つです。

りんくう総合医療センター 市立泉佐野病院泌尿器科

著者: 土居淳

ページ範囲:P.249 - P.249

泉佐野市は大阪府の南部,大阪市と和歌山市のほぼ中間にある人口約10万人の市です。りんくう総合医療センター・市立泉佐野病院は関西国際空港の対岸に位置するりんくうタウンにあって,診療科19科,医師数111名の病院です。病室の窓からは空港連絡橋,関西国際空港などが一望でき,またよく晴れた日には遠く淡路島や神戸の街並みも望むことができる風光明媚な場所に立っています。当院は昭和27年8月,6診療科,71床で泉佐野市の市街地に開設されましたが,その後少しずつ増床され昭和48年3月より348床になり現在に至っています。平成9年10月,りんくうタウンに移転し,すでに平成6年に開院した大阪府立泉州救命救急センターと施設合体し,これに市立感染症センターが加わってりんくう総合医療センターとなりました。

 当院の泌尿器科の歴史は,昭和30年10月,村田先生が初代皮膚泌尿器科医長として赴任されたのが始まりで,昭和43年7月より磯部先生が,さらに昭和45年に皮膚科専門医として井村先生が皮膚科を開設されることとなり泌尿器科は独立し,磯部先生が初代泌尿器科医長に就任されています。当時は1人医長の時代でありましたが,昭和54年3月,磯部先生が開業されるに及んで常勤医がいなくなりパート医師による外来診療が暫く続いたのち,昭和57年4月から高松正人先生,青枝秀男先生らによる2人常勤体制,さらに昭和58年6月より安川修先生が加わり,現在の3名常勤体制の基礎ができ上がりました。昭和62年12月より,土居が高松先生の後を引き継ぎ現在に至っています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら