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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科60巻5号

2006年04月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器科癌に対する遺伝子治療

著者: 後藤章暢

ページ範囲:P.265 - P.271

要旨 遺伝子治療臨床研究は21世紀を迎え,難治性疾患の夢の治療法という見方から,より現実的な治療技術の一つとして発展しつつある。すなわち,従来の治療法で効果のなかった疾患に対し,根治はできないまでも,ある程度の治療効果を上げたり,従来の治療法と同等の治療効果をより少ない副作用で実現したりすることは十分可能であると考えられる。泌尿器科癌における遺伝子治療臨床研究は欧米を中心に行われており,米国では泌尿器科癌に対し,現在90以上の遺伝子治療臨床研究プロトコールが進行しているが,本邦では3つの遺伝子治療臨床研究にすぎない。本綜説では遺伝子治療法の概念と方法について解説し,同時に泌尿器科癌,特に腎癌,前立腺癌については現在本邦で進行中の遺伝子治療臨床研究を概説し,膀胱癌では海外の代表例を紹介した。また,泌尿器科癌遺伝子治療の現状と今後の展望についても解説した。

手術手技 尿路内視鏡手術 4

膀胱癌に対する経尿道的切除術

著者: 篠原信雄

ページ範囲:P.273 - P.278

要旨:経尿道的膀胱腫瘍切除術は,膀胱癌の診断・治療のファースト・ステップである。表在性膀胱癌では,経尿道的膀胱腫瘍切除術により根治的治療が可能である。一方,浸潤性膀胱癌では,筋層浸潤の有無も含めた正確な病期診断が可能となる。経尿道的膀胱腫瘍切除術は,われわれ泌尿器科医にとって日々の臨床の一環として実施されているにもかかわらず,必ずしも正しい術式が実施されているとは言いがたい。今回,経尿道的膀胱腫瘍切除術の実際を概説するとともに,当科で実施しているG3表在性膀胱癌に対するrepeat TURBTについても報告する。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

著者: 青木重之 ,   山田芳彰 ,   本多靖明

ページ範囲:P.279 - P.284

要旨:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は,表在性膀胱癌の標準的治療である。腫瘍の部位,大きさ,場所により適切な切除の順番を考える。場所によってはループを外筒より出し,外筒を動かすことにより切除するなどの工夫が必要になる。その他,手技とコツについて述べた。合併症には常に注意し,発生した場合には迅速かつ適切な処置をする。膀胱のどの部位でも,安全かつ確実に腫瘍を切除できる技術を会得する必要がある。

浸潤性膀胱癌に対するcomplete TURBT

著者: 住吉義光

ページ範囲:P.285 - P.291

要旨:Complete TURBTとは,visible tumorを完全に切除することである。適応は,浸潤性膀胱癌に対し膀胱温存療法を施行,Ta-1G3癌,second TURBT,膀胱温存療法後の治療効果判定などである。切除範囲は,腫瘍よりワンバイト外側の正常部位まで,深さは膀胱周囲脂肪組織をワンバイト(T3aの診断が可能)までとする。Complete TURBTの手術手技と治療成績を報告する。

セミナー 血栓症・肺塞栓症の予防と対策 4

血栓症の予防対策―当科の方針

著者: 島居徹 ,   関戸哲利 ,   赤座英之

ページ範囲:P.293 - P.299

要約:静脈血栓塞栓症は近年,日本においても増加傾向であり,泌尿器科を含む外科手術後の発生率が欧米なみであることがわかりつつある。泌尿器科においては,高齢,前立腺癌を代表とする癌手術の急増,骨盤内手術,腹腔鏡下手術などのリスク因子が多く存在し,まずそのリスク階層化が必要である。そのうえで,本邦の予防ガイドラインに沿った理学的予防と抗凝固療法を組み合わせた適切な予防法を実践し,より多くのエビデンスを集積していくことが求められる。

症例

無症候性肉眼的血尿を呈した腎悪性リンパ腫

著者: 宮本克利 ,   沖真実 ,   池田洋 ,   水谷雅巳 ,   松木暁

ページ範囲:P.307 - P.310

はじめに

 悪性リンパ腫は,全身のあらゆる臓器に発生しうるが,腎部を初発部位として認めることは比較的稀である。今回われわれは,血尿を主訴に当科を受診し,腎盂癌の術前診断で左腎摘出術を施行した腎悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する。

尿道狭窄によりステント抜去困難となった2例

著者: 中野路子 ,   中村隆行 ,   本田和也

ページ範囲:P.311 - P.313

はじめに

 前立腺肥大症や前立腺癌による排尿障害の治療において,薬物療法が無効であるものの全身の合併症や高齢のため,手術療法にならない症例は少なくない。この場合,安全性が高く,比較的容易な方法として尿道ステントの留置が選択される。しかし,尿道ステントにおいては結石の形成,膀胱内への滑落などの合併症が報告されている。今回われわれは,尿道ステントを留置したが,それよりも末梢の尿道が狭窄したため,抜去困難となった症例を2例経験したので,これを報告する。

アルコールまたは覚醒剤による横紋筋融解症

著者: 市原浩司 ,   砂押研一 ,   笹尾拓己 ,   柳瀬雅裕 ,   高塚慶次

ページ範囲:P.317 - P.320

はじめに

 今回われわれは,泌尿器科を受診したことで診断された,アルコールと覚醒剤が原因と思われる非外傷性横紋筋融解症2例を経験した。2症例とも輸液のみで経過観察し,透析に移行せず治癒しえた。横紋筋融解症は泌尿器科領域では稀であっても,種々の原因で起こりうるため,遭遇する機会が十分考えられる疾患と思われる。さらに,横紋筋融解症は急性腎不全を合併すると生命にかかわる救急疾患の一つであるため,早期の診断・治療が必要である。よって,横紋筋融解症の原因・診断・治療法につき若干の文献的考察を加えて報告する。

腎腫瘍塞栓術後に発症した急性呼吸促迫症候群

著者: 西村博昭 ,   内田洋介 ,   中目康彦

ページ範囲:P.321 - P.323

はじめに

 腎癌の局所治療として,腎動脈塞栓術が選択されることもある。悪性腫瘍に対して動脈塞栓術療法施行後の種々の合併症は報告されているが,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome,以下ARDS)発症報告は稀である。今回われわれは,腎癌に対して腎動脈塞栓術施行後にARDSを発症し,持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration,以下CHDF)療法を含む集中治療にて救命しえた症例を経験したので報告する。

生理食塩水灌流システムによる経尿道的切除術を行った妊娠時の膀胱移行上皮癌

著者: 安達高久 ,   吉村力勇 ,   阪倉民浩 ,   福益博 ,   中村哲生 ,   仲谷達也

ページ範囲:P.325 - P.327

はじめに

 妊娠年齢と膀胱移行上皮癌の好発年齢には大きな差があり,妊婦に膀胱移行上皮癌が発生することはきわめて稀である。われわれは妊婦に移行上皮癌が発生し,生理食塩水(生食)灌流システムを用いた経尿道的切除術(transurethral resection,以下TUR)を行ったので,症例と新TURシステムの有用性について報告する。

胃癌による転移性陰茎皮膚腫瘍の1例

著者: 小松歩 ,   山下利幸

ページ範囲:P.329 - P.331

はじめに

 転移性陰茎皮膚腫瘍は,非常にまれな疾患で多くの場合,膀胱癌,前立腺癌などの泌尿生殖器癌,もしくは直腸癌などの近接臓器が原発巣である。今回,われわれは陰茎皮膚転移を契機に発見された胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。

画像診断

尿管結石により腹腔内尿溢流をきたした馬蹄腎

著者: 佐野太 ,   木村亮輔 ,   北見一夫

ページ範囲:P.335 - P.337

患者 67歳,女性。

 主訴 右側腹部痛。

 既往歴 卵巣腫瘍にて子宮・付属器摘除。

 現病歴 2005年6月22日自宅にて特に誘因なく主訴が出現,当院救急外来を受診した。

 現症 意識清明。血圧175/109mmHg,脈拍60/分。右側腹部叩打痛あり。腹部筋性防御あり。白血球11,400/mm3と高値であった以外は血算,生化学検査に異常を認めなかった。尿沈渣RBC 5~9/hpf,WBC 0~4/hpf,尿培養陰性。

 腹部造影CT(図1a,b,c)・CT後KUB(図2) 両側腎は下極において癒合しており,馬蹄腎の所見であった。右腎前面・下極周囲および腹腔内に造影剤の溢流を認めた。右尿管口部に小さな石灰化を認め,右腎盂・尿管のみ拡張していることから(左は馬蹄腎に伴う腎盂尿管移行部狭窄)結石の嵌頓による腎盂内圧の上昇により腎盂外溢流をきたしたものと診断した。

 経過 同日右尿管ステント挿入,膀胱バルーンを留置し,抗生剤投与により保存的に治療した。一過性の腸管麻痺は起こしたものの,腹膜炎には至らなかった。第4病日のCTにて溢流は吸収されていた。KUB上,結石は明らかでなく,自然排石したものと考えられた。破裂後14日目に尿管ステント抜去,その後の静脈性腎孟造影(IVP)にて尿溢流を認めず,尿管口部の通過良好であった。ほかに明らかな結石のないこと,腎機能に問題のないことなどから経過観察の方針とした。

小さな工夫

尿道stent in stent

著者: 内木場拓史

ページ範囲:P.339 - P.339

尿道ステントは手技が容易で侵襲も少ないことに加え,近年素材の向上も手伝って急速に普及しつつある。

 これまで当院では,重篤な合併症を有するが故に外科的治療(TURP)の適応から外れる尿閉患者に対して尿道ステント(アンジオメッド社製メモサーム(R))の留置を積極的に行ってきた1)。そのほとんどがステント留置後から良好な排尿状態を保っているが,なかには留置後に再度尿閉に陥る症例も散見される。

病院めぐり

京都民医連中央病院泌尿器科

著者: 前川幹雄

ページ範囲:P.340 - P.340

当院は京都市中京区の西の端に位置し,映画村や広隆寺で有名な太秦に接しています。車で10分以内のところに北は北野天満宮,竜安寺,金閣寺があり,東には二条城があります。また,JR「山陰線」円町駅や嵐山方面行きのバス停も近くにあり,常に観光客や修学旅行生で賑わっています。屋上からは京都市内を見渡すことができ,比叡山や愛宕山などの季節の移り変わりを楽しんでいます。また,京都五山の送り火では左右両方の大文字や鳥居がよく見え,最高の観賞スポットとなっています。

 当院の前身の右京病院は1962年に開設され,当初は27床でした。その後,京都民医連関連7病院,26診療所のセンター病院としての京都民医連中央病院が1987年3月1日に開設されました。開設当時は205床でしたが,現在300床となっています。2001年4月には厚生労働省の臨床研修指定病院に認可されています。

大阪警察病院泌尿器科

著者: 松宮清美

ページ範囲:P.341 - P.341

大阪警察病院は,昭和12年に大阪府警察協会を設立母体にして誕生しました。設立母体は大阪府警察協会ですが,設立当初より,職域だけではなく,広く地域に開放し地域に密着した中核的な病院として実績を積み,発展してきています。立地は大阪市天王寺区にあります。具体的には,JR大阪環状線の東南方向の弧の周囲といったところです。大阪でも有名な焼き肉屋が集積していますので,帰宅途上の環状線の駅で電車の扉が開くと焼き肉の香りが流れ込み,途中下車の衝動に駆られます。

 さて,天王寺区内には,大阪赤十字病院,NTT西日本病院と比較的大規模病院が集積しており,お互いが切磋琢磨して天王寺区近隣の医療水準の向上を目指しています。泌尿器科では,天王寺泌尿器科懇話会を3病院泌尿器科合同で定期的に開催し,地域の診療所の先生にも開放しています。また,啓蒙活動として,警察病院主催の医師会や市民開放セミナーにも積極的に参加しています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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