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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科60巻8号

2006年07月発行

文献概要

画像診断

精巣腫瘍の再発が疑われた肺腫瘤性病変

著者: 柳原豊1 島本憲司1 横山雅好1

所属機関: 1愛媛大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.589 - P.591

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 患 者 29歳,男性。

 主 訴 多発性肺腫瘍。

 既往歴 24歳時,右精巣腫瘍のため右高位精巣摘除術を施行した。組織学的には合胞性栄養膜細胞を伴う胎児性癌>卵黄囊癌と診断した。International Germ Cell Consensus Group(IGCC)分類でStage ⅢB。寛解導入療法としてPVB 4コース施行した後,残存リンパ節腫瘍に対し,後腹膜リンパ節廓清術を施行し,pCRの診断を得た。

 嗜好歴 タバコ10本/日を8年間。

 現病歴 2004年12月に感冒様症状を認めたため,市販薬を内服し数日で軽快した。精巣腫瘍に対する定期的フォローとして,翌年1月,胸部CTを施行され,肺野に多発する結節影や浸潤影を認めたため,精巣腫瘍の再発が疑われ,精査・加療目的で,同月末,当科に入院した。

 現 症 理学的所見に異常なし。

 検査所見 血液生化学検査:好酸球19%(正常8%以下)の増加のみ。腫瘍マーカー:HCG-β<0.1ng/ml,AFP 5.0ng/ml,LDH 148IU/lと正常範囲内。

 画像所見 2005年1月13日の胸部CT(図1)では,両側に多発する結節影や斑状影を認めた。内部濃度はさまざまで,中心部が濃く辺縁がすりガラス陰影のものや,またその逆のものも認めた。一方,入院後再度撮影した2月1日の胸部CT(図2)では,両肺野に多発した結節影がほぼ消失し,軽度スリガラス状浸潤影のみが残存した。S10には,前回のCTでは存在しなかった径1.4cmの浸潤影を認めた。

 経 過 無治療で結節影がほぼ消失しているため,肺真菌症やアレルギー性疾患を考慮し,まずは呼吸器感染症の検査を施行した。アスペルギルス,クリプトコッカス,マイコプラズマなどは陰性,喀痰培養検査でも真菌などは検出されなかった。以上のことより,肺に腫瘤性病変を形成する疾患として,精巣腫瘍の肺転移再発や,結核や細菌,さらには真菌感染症の可能性は低く,アレルギー疾患である好酸球性肺炎や特発性器質化肺炎の可能性が高いと考えた。診断には気管支肺胞洗浄,経気管支的肺生検が必要であるが,自然軽快しており,追加検査はせずに経過観察中である。

参考文献

1)滝沢 始:好酸球性肺炎の診断と治療.治療85:78-82,2003
2)徳田 均:特発性器質化肺炎の病態と診断・治療.治療85:83-87,2003
3)植淵昌毅,平野博嗣,北田清悟,他:一部に空洞を伴う多発性結節性陰影を呈した肺好酸球性肉芽腫の2例.日呼吸会誌40:984-988,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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