臨床泌尿器科61巻11号

2007年10月発行

画像診断

定期健診を契機に発見された成人仙尾部奇形腫

著者： 上野陽子¹² 菊池俊樹¹ 水沢弘哉¹

所属機関： ¹独立行政法人国立病院機構長野病院泌尿器科 ²厚生連篠ノ井総合病院泌尿器科

ページ範囲：P.925 - P.927

文献概要

　患　者　46歳，男性。

　既往歴・家族歴　特記すべきことなし。

　現病歴　2002年5月，定期健診の超音波検査で下腹部に腫瘍を認め，精査のため当科に紹介された。

　来院時現症　下腹部正中に無痛性の手拳大の腫瘤を触知した。

　画像検査　CT検査では下腹部正中に13.5×11cm，境界明瞭，辺縁平滑な囊胞状の腫瘤を認めた（図1）。膀胱，小腸に接していたが，いずれも境界鮮明で，左腰筋を前外方へ圧迫していることから，存在部位は後腹膜腔と考えられた。仙骨にも接していたが骨破壊や変形はみられなかった。

　MRI検査でも，厚い被膜と造影効果のある隔壁を有する腫瘤が認められた（図2）。周囲臓器との境界は明瞭であったが，腰，仙椎と密着していた。仙尾骨奇形腫が疑われた。

　以上より，2002年6月下旬に腫瘍摘出術を行った。

　手術所見　腫瘍は後腹膜，尿管と癒着していたが剝離は容易であった。しかし，仙骨前面中央に強く癒着し，剝離は困難であった。癒着部を鋭的に切離し，腫瘍を摘除した。腫瘍の内容物は黄白色ゼリー状の液体で，量は500mlであった。

　病理学的所見　重量950g，多胞性で重層扁平上皮，皮脂腺，汗腺，毛胞，血管，脂肪織，平滑筋，腸管様の粘膜上皮がみられた（図3，4）。以上より成熟奇形腫と診断した。

参考文献

1）土田嘉昭，斉藤純夫：奇形腫．小児MOOK No26：259-269，1982

2）増田　均，当真嗣裕，釜井隆男，他：後腹膜に発生した成熟型奇形腫の1例．泌尿器外科 9：137-139，1996

3）Bruneton NJ, Diared F, Druillarad PJ, et al：Primary retroperitoneal teratoma in adults. Radiology 134：613-616, 1980

4）Audet IS, Goldhahn RT and Dent TL：Adult sacrococcygeal teratoma. Am Surg 66：61-65, 2000