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「グラント解剖学図譜―英語版CD-ROM付 第5版」―監訳:坂井建雄 訳:小林 靖,小林直人,市村浩一郎 フリーアクセス
著者: 佐々木克典1
所属機関: 1信州大学・組織発生学
ページ範囲:P.934 - P.934
文献購入ページに移動『グラント解剖学図譜』の凄さは,描写された図のはっとするような斬新さにある。それまで見たことがない,しかし見てみたいと思う部位を憎いほどうまく描き出したリアルな図が数多く挿入されている。それぞれの図の説明は,人体の構造を深く洞察した人でなければ,決して書くことができないような示唆に富んだものが多い。例えば,“縦隔の右側面は,いわば「青色の面」であり,奇静脈弓や上大静脈といった太い静脈が見られる”という説明を最初に読んだ時,「青色の面」という表現に,電撃に打たれる思いがした。この図譜を描いたGrant JCBは,その前に“Grant's Method of Anatomy”という,読めば知らず微笑んでしまうようなきわめて面白い,しかしアカデミックな解剖書を書いている。グラントの人柄を同僚らは,“物静かな機知と限りない人間愛”と表現しているが,彼の人柄が滲んだこの本が土台となり図譜は作られた。当然その中には機知と人間愛がここかしこに溢れている。これが『グラント解剖学図譜』の個性であり,長く受け入れられてきた理由であろう。
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