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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻12号

2007年11月発行

雑誌目次

手術手技 腹腔鏡下手術時代における開放手術・11

精索静脈瘤手術―高位結紮術および顕微鏡下低位結紮術

著者: 坂本英雄 ,   吉田英機

ページ範囲:P.947 - P.955

要旨:精索静脈瘤は主に内精索静脈経由の逆流で生じ,ときに外精索静脈,精管静脈,外陰部静脈,精巣導帯静脈からの逆流で生じる。精索静脈瘤は不妊症,精巣発育障害や陰囊症状の原因となり,治療の原則は主な逆流経路である内精索静脈を結紮・切断し,逆流を遮断することである。主な術式に顕微鏡下低位結紮術,高位結紮術,腹腔鏡下手術があり,①手術侵襲や術後の疼痛・回復期間,②静脈瘤の再発率,③精巣水瘤の発生頻度,④手術の難易度,⑤腹腔鏡下手術や顕微鏡下手術の経験,⑥動脈温存の必要性とそれに伴う難易度の上昇,⑦内精索静脈以外の静脈処理の必要性などを考慮し,術式を選択することが重要である。今回,主に顕微鏡下低位結紮術および高位結紮術について述べる。

精索静脈瘤手術―顕微鏡下低位結紮術(鼠径管下到達法)

著者: 今本敬 ,   鈴木啓悦 ,   市川智彦

ページ範囲:P.957 - P.965

要旨:千葉大学泌尿器科では,精索静脈瘤に対して顕微鏡下低位結紮術を行っている。この術式ではより精巣に近い部位での結紮が可能であるとともに,顕微鏡下に確実に精巣動脈周囲の細静脈を処理できるため,再発率が低い。また顕微鏡下にリンパ管を温存することで,陰囊水腫などの合併症も少ない。鼠径管下到達法を用いていることで,より低侵襲となり,患者の早期社会復帰を可能とする。本稿では本術式の適応,要点,成績について概説する。

精索静脈瘤手術

著者: 中島耕一 ,   永尾光一 ,   三浦一陽 ,   石井延久

ページ範囲:P.967 - P.971

要旨:本稿においては当教室で行っているBernardi techniqueに準じた超高位精索静脈結紮術について解説した。本術式の最大の利点は,特殊な技術がまったく不要という点である。入院期間も腹腔鏡手術と遜色ないといえるし,経済的にも安価である。尿管切石術が激減し,小さな傷で後腹膜腔にアプローチする機会が多くない今日においては,開腹手術の入門にも適した術式といえると考えられる。

セミナー 新しい手術器械の応用・6

マイクロ波手術器(マイクロターゼ)を用いた鏡視下腎部分切除術

著者: 西尾俊治

ページ範囲:P.973 - P.978

要約:マイクロ波手術器(マイクロターゼ)は長年,外科分野で用いられてきた組織凝固装置である。近年,泌尿器科分野では,マイクロ波手術器を用いた腎部分切除術の報告が散見されるようになってきた。マイクロ波凝固装置を用いた鏡視下腎部分切除の手術方法とその治療成績について解説した。腎部分切除の適応となる腫瘍として,腎門部以外にあり,腫瘍の大きさは直径4cm以下で腎皮質から突出したものとされている。切除方法はマイクロ波組織凝固装置(マイクロターゼ)を用いて,腫瘍から1cm離れた正常腎組織を凝固してから超音波メスにて切除する。このマイクロ波凝固装置を用いた腎部分切除術は,無阻血にて施行でき,出血のコントロールが容易な方法ではあるが,適応となる腫瘍を的確に選択する必要がある。

原著

市立豊中病院泌尿器科における5年間の手術統計

著者: 中村吉宏 ,   鄭則秀 ,   志水清紀 ,   嘉元章人 ,   植田知博 ,   中山治郎 ,   細見昌弘 ,   吉村一宏 ,   清原久和

ページ範囲:P.991 - P.995

 2000年度から2004年度の5年間に市立豊中病院泌尿器科で手術室を利用して施行した1,753件の手術統計を行った。臓器別では膀胱が741件で最も多かった。

排尿障害と睡眠障害―α遮断剤はBPHの睡眠障害を改善するか

著者: 鈴木康之 ,   高坂哲 ,   鈴木英訓 ,   古田昭 ,   長谷川雄一 ,   小杉繁 ,   伊藤洋 ,   木戸雅人 ,   頴川晋

ページ範囲:P.997 - P.1001

 「排尿障害と睡眠障害の関連」ならびに「前立腺肥大症(BPH)に対するα1遮断薬が睡眠を改善させるか」を検討した。対象はBPH群68例と器質的疾患のない(非BPH群)273例である。排尿障害の程度は国際前立腺症状スコア(I-PSS),QOLスコア(QOL-I),BPHによる影響指数(BPH-II)で,睡眠の質と量はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価した。非BPH群は初診時のみ,BPH群は初診時とα1遮断薬投与4週間後に評価した。非BPH群ではI-PSS,BPH-II,QOL-IのそれぞれとPSQIとの間に有意な相関が認められた(p<0.01)。また,BPH群ではα1遮断薬投与後にI-PSS,BPH-II,QOL-Iが改善しただけではなく,睡眠状態を表すPSQIも6.5±0.7から5.0±0.5に正常化した(p<0.01)。

症例

切除鏡のループにより摘出した膀胱異物

著者: 浅井聖史 ,   柳原豊 ,   池田哲大 ,   青木克徳 ,   丹司望 ,   横山雅好

ページ範囲:P.1003 - P.1005

 症例は18歳,男性。尿道異物摘出不可を主訴に近医を受診し,摘出目的に当科を紹介された。初診時,血膿尿を認めた。軟性膀胱鏡にて膀胱異物を確認し,鉗子にて摘出を試みたが容易にちぎれてしまい摘出できなかったため,腰椎麻酔下に切除鏡のループによる部分切除を繰り返すことによってすべて摘出することができた。

深部静脈血栓症の契機となった経尿道的膀胱腫瘍切除術の1例

著者: 三塚浩二 ,   江里口智大 ,   嶋田修一 ,   安達尚宣 ,   加藤慎之介

ページ範囲:P.1007 - P.1010

 症例は87歳,女性。単発の表在性膀胱腫瘍を認め経尿道的膀胱腫瘍切除術(以下,TUR-Bt)を施行したところ,術後2日目に右下肢の腫脹が出現した。CTなどにより深部静脈血栓症の発症を認めた。ヘパリン,ウロキナーゼ,ワルファリンによる治療を開始し,3か月後のCTでは血栓の消失を認めた。TUR-Btは深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症の発症の可能性が極めて低い侵襲の小さい手術であるが,高齢,日常生活動作(ADL)の低下などを誘引とし,これらの合併症を引き起こすこともあり,注意が必要である。

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を産生した膀胱腫瘍

著者: 小松淳 ,   鈴木薫 ,   岩崎一洋 ,   小原航 ,   鈴木泰 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.1011 - P.1014

 症例は83歳,女性。肉眼的血尿を認め当科を受診した。膀胱鏡で後壁に非乳頭状と乳頭状腫瘍を認めた。TURBTによる組織診断は,移行上皮癌,肉腫様変化,G3であった。術後CRPの上昇を伴わない白血球増多症および血中G-CSF:420pg/mlを認め,腫瘍組織は抗G-CSF抗体を用いた免疫染色で強陽性を示したことより,G-CSF産生膀胱腫瘍と診断した。予後不良で比較的稀な腫瘍として知られており,本症例はわれわれの調べ得た限りでは本邦51例目と思われる。

精索に発生した悪性線維性組織球腫

著者: 小松淳 ,   鈴木薫 ,   瀬尾崇 ,   田中孝直 ,   鈴木徹 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.1015 - P.1017

 症例は73歳,男性。左側鼠径部から陰囊基部にかけて多発する腫瘤を主訴に入院した。12か月前には,左側高位精巣摘除術を施行され,悪性精索線維性組織球腫と診断された既往を有していた。左側鼠径部から陰囊基部にかけて多発性腫瘤を認め,これらを周囲脂肪組織と一塊に摘出した。手術標本は前回と同様の組織診で,被膜に覆われた状態で摘出が可能であった。補助療法は施行しなかったが,術後1年を経過した現在,再発を認めていない。悪性精索線維性組織球腫は稀な疾患であり,本症例はわれわれが調べ得た限りでは本邦20例目にあたる。

画像診断

腎血管筋脂肪腫自然破裂に対する腎動脈塞栓術後に非感染性腎内ガス像を呈した症例

著者: 星野鉄二 ,   花田麻里 ,   三股浩光

ページ範囲:P.1019 - P.1021

 患 者 47歳,女性。

 主 訴 低血圧発作。

 家族歴・既往歴 特記すべきことなし。

 現病歴 生下時よりてんかん発作,精神発達遅延,顔面血管線維腫,頭蓋内石灰化を認め,結節性硬化症と診断されていた。2003年6月中旬に意識消失,低血圧,チアノーゼ,発熱が出現したため,7月中旬に当科を受診し,CT,MRIにて腎血管筋脂肪腫の自然破裂と診断され,加療目的にて入院となった。

 入院時現症 血圧73/55mmHgと低血圧を認めた。眼瞼結膜は貧血様,精神発達遅延を認め,意思疎通はとれず,寝たきりの状態であった。鼻唇溝から両頬にかけて血管線維腫,手足の爪には肉芽腫様の変化がみられ,爪下線維腫を認めた。右腹部には弾性硬,表面平滑,小児頭大の腫瘤を触知した。

 入院時検査成績 Hb 8.1g/dl,Ht 24.2%と貧血を認め,BUNは93mg/dl,LDH 658IU/l,CRP 5.5mg/dlと上昇を認めた。尿検査異常は認めず,呼吸機能はPO2 67.3mmHg,PCO2 32.5mmHgと低下していた。

 画像診断 腹部CTでは両腎ともわずかに正常腎実質を残しているが,大部分は脂肪成分を有する腫瘍によって置換されており,腎血管筋脂肪腫の所見であった。右腎上極には被膜に包まれた部分があり,内部はlowからややhigh density areaが混在しており,新旧混在した被膜下血腫と考えられ,右腎血管筋脂肪腫の自然破裂と診断した(図1,2)。

 経過 腫瘍に一致して微細な腫瘍血管の増生を認めた。右腎腫瘍内に2cm大の動脈瘤を3個認め,上極に血腫と思われる無血管領域がみられたことより,上極枝末しょうの動脈瘤が破裂したと考えられた。

 以上より右腎腫瘍内の腎動脈瘤破裂の診断の下,金属コイルを使用して腎動脈瘤塞栓術を施行した。未破裂の動脈瘤以外も大きさが5mm以上あり自然破裂の危険性が高いために同時に塞栓を行った(図3)。塞栓後,動脈瘤は描出されなくなったが,梗塞範囲は腫瘍を含め広範囲となった(図4)。

 塞栓後2日目より39℃ 以上の発熱とCRP,および白血球の上昇を認めた。抗生剤の投与にもかかわらず5日目も解熱傾向がなく,CRPが上昇傾向を示したため,CTを施行したところ腫瘍内にガス像を認めた。発熱および炎症反応の上昇を認めたため,気腫性腎盂腎炎も疑われたが(図5),尿検査で膿尿はなく,DICの所見を認めなかったことより塞栓術に伴う腎内ガス像と判断し,厳重な経過観察の下,保存的治療のみを行った。

 術後6日目より白血球,CRP,LDHの低下とともに解熱傾向となり,その後の経過は良好で退院となった。退院後も全身状態良好で,退院後のCTではガス像も消失した(図6)。

学会印象記

「第22回欧州泌尿器科学会(EAU)」印象記

著者: 冨田京一

ページ範囲:P.1022 - P.1023

 第22回欧州泌尿器科学会(EAU)は,2007年3月21~24日にかけてドイツのベルリンで開催された。ベルリンは他のヨーロッパ諸国の町に比べ,改築あるいは建て直した建造物が多い。第二次世界大戦時にナチスの本部がおかれた地であり,連合軍により徹底的に破壊されたためだ。また,ベルリンは昨年サッカーのワールドカップが開催されたため,約10年前に比べて中心部の町並みが大きく様変わりしていた。さらなる都市計画が進行中であると聞く。

 今年度より日本泌尿器科学会とEAUの共同セッションが設けられ,日本からは横浜市立大学教授の窪田先生が日本泌尿器科学会における卒後教育について,筑波大学教授の赤座先生が日本における前立腺癌の疫学と診断・治療について講演された。EAUからはProf. Chappleがヨーロッパにおける泌尿器科研修と教育について講演され,European Urologyのeditor in chiefであるProf. MontorsiがEuropean Urologyのpublicationについて,editor側からみたポイントについて話された。最後に,新しいsecretary generalに選ばれたProf. Abrahamssonが,ヨーロッパにおける局所前立腺癌のスクリーニングと治療法について講演された。

「第22回欧州泌尿器科学会(EAU)」印象記

著者: 末金茂高

ページ範囲:P.1024 - P.1026

 第22回欧州泌尿器科学会(EAU)が,2007年3月21日~24日にかけてドイツの首都であるベルリンで開催されました。欧州泌尿器科学会は欧州の各地で開催され,日本からの参加はとても魅力的だと私は個人的には思っております。しかし,実際には日本人の参加は少ないように思います。日本泌尿器科学会総会と米国泌尿器科学会(AUA)に日程が近いのが原因の1つと思われます。

 2007年2月号のEAUニュースによると,今回のEAUには欧州のみならず,アジア,アフリカ,中東など世界各方面より3,437演題の申し込みがあり,1,113演題を採択したとのことでした。40シリーズのstate-of-the-art-lecture,13シリーズのsection meeting,3つのプレナリーセッション,6つのディベート,5つのワークショップと盛りだくさんの企画で構成されており,約9,000名が参加する予定とのことでした。

「第95回日本泌尿器科学会総会」印象記

著者: 滝沢明利

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 第95回日本泌尿器科学会総会が,大阪医科大学・勝岡洋治教授を会長に,「患者さんの目線に立った医療の実践」,「医療の標準化と個別化のハーモニー」を基本テーマとして,4月14日~17日に神戸で開催されました。私は初日である14日,午前中に病院の外来をこなし,午後の飛行機で羽田から神戸へ向かいました。以前は神戸というと新幹線が当たり前でしたが,最近開港した神戸空港は,会場である神戸国際会議場へもポートライナーで10分足らずと,大変便利でした。また,機内では偶然隣席となった慈恵医大柏病院の波多野先生と虎ノ門病院の小松先生とお話しさせていただき,楽しい時間をすごしました。特に小松先生は,初対面にもかかわらず今の医療の問題や手術手技を気さくに熱くお話してくださり,感激でした。

 到着した会場は国際会議場をメインとし,隣接する国際展示場および神戸ポートピアホテルの3施設に分かれていました。それぞれの会場は充分な広さが確保されており,随所に菜の花の花壇や出店など楽しい演出がありました。私はまず受付をすませ,サテライトセミナーの「前立腺肥大症の新たな展開」に参加しました。興味深かったのは,仙台社会保険病院の庵谷先生によるTURisを用いたTUEB(バイポーラによる経尿道的前立腺核出術)でした。同様の手技は慶應大の中川先生も紹介されていましたが,日本医大の平岡先生が考案されたTURに剝離鉗子を用いた核出法のTURis版です。達人しかできない手術と考えていましたが,コツがつかめれば意外に容易に思え,新たな標準術式となる可能性を感じました。

病院めぐり

鳥取赤十字病院泌尿器科

著者: 大畠領

ページ範囲:P.1030 - P.1030

 鳥取市は鳥取県の東部に位置し,平成16年11月に旧鳥取市と8町村が合併し20万人都市となりました。鳥取の名は千代(せんだい)川の沼地で水鳥の捕獲に従事していた鳥取部から出ていると言われており,因幡の白兎の神話や二十世紀梨などで知られています。あるいは戦国時代,尼子の遺臣である山中鹿之助が因幡守護の山名豊国を擁し鳥取城を攻め,尼子再興の拠点としようとしたことでもご存知かもしれません。豊かな自然に恵まれ,北は鳥取砂丘,日本海,南は中国山地に囲まれ,東には山陰の松島といわれる浦富海岸があり,西には中国山地最高峰の大山がそびえます。そのほかにもハンググライダー,パラグライダーのフライトで知られる霊石山や日本最大級の望遠鏡のあるさじアストロパーク,名産には二十世紀梨はもちろん,砂丘のらっきょうや長いも,松葉蟹などがあります。特に旬(冬期)の松葉蟹は絶品で得もいわれぬ味わいがあります。是非一度食べにお越しください。

 鳥取市は昭和18年に鳥取大震災,昭和27年に鳥取大火に見舞われ,第2次世界大戦の終戦とも重なり,都市作りが停滞しました。しかし,その遅れは近代的な都市作りの基となり,昭和40年にはしゃんしゃん祭りが始まり,昭和60年にはわかとり国体を迎え発展をとげています。

岡山中央病院泌尿器科

著者: 林俊秀

ページ範囲:P.1031 - P.1031

 岡山市は,今年ちょうど人口70万人超を達成し,平成21年には政令指定都市移行を目指して,今まさに再発展の段階に至っています。一方,岡山市は古代より吉備文化の発祥地として栄え,市西部には造山古墳をはじめとした多くの史跡が残っています。

 岡山中央病院は,ちょうど市の北西部(山陽自動車道岡山I. C.より車で約10分)の位置にあり,病院の直前には,吉備の名勝・史跡を巡る「吉備路サイクリング道」が通っています。

交見室

直腸診(DRE)の意義

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.1032 - P.1032

 過日,高知県在住の開業医より当院で手術治療された親戚筋の者の病理診断の結果について問い合わせがあり,概要を説明したうえで詳細は主治医より報告させることを約束した。その際,「別件ですが」と前置きして,「最近の泌尿器科医は直腸診をしない傾向があるように見受けられるが,先生はどのように思われますか? 私は内科医ですが,年寄りの患者には直腸診を必ず行っています。これまでに数例の前立腺癌を見つけています。直腸診は専門家にとってはもはや必要な検査ではないのですか?」と問われた。

 いわれてみれば私自身も思い当たるふしがある。教室員の間にもある年代以降の者たちは直腸診を省略する場合や,所見の記載がお粗末で粗雑であることに気づいていた。しごく当然のことで,直腸診が大事な検査であることに変わりはなく,専門家の間に疎んずる風潮があるとすれば由々しき事態である。

書評

「基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために 第2版」―松田晋哉 著 フリーアクセス

著者: 齋藤壽一

ページ範囲:P.990 - P.990

 松田晋哉氏の著書『基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために第2版』(医学書院)が刊行された。著者は周知のごとく急性期医療を担う病院のベンチマークから診療報酬までの新しい評価システムであるDPCについて設計・開発から普及まで,厚生労働省の作業を中心的に主導してきた研究者である。本書は,まさにそのようなDPCのすべてを考究しつくした第一人者である著者だからこそ,初めてまとめることができた好著となっている。

 DPCはこれを導入している360に及ぶ病院の関係者にとっても,その壮大な機能の一部を理解しているにとどまり,容易に全機能を掌握できない拡がりと深みをもった制度である。本書では例示された事例の診療報酬算定方式で示されているように,きわめて平易で具体的な記載により「DPCのすべて」が語られている。

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編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.1036 - P.1036

 村井勝先生より引き継ぎ,9月より編集委員をしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私が初めて論文を執筆したのは,『臨床泌尿器科』に投稿した症例報告でした。初めての経験でしたので,初心者にありがちですが,あるだけのデータを取り入れ,書けるだけの内容を盛り込みました。編集部からは,鍵となる画像を絞り込むこと,説明を簡潔明瞭にするようにと,的確な指示をいただきました。でき上がった論文はすっきりとした内容になり,メッセージも伝わりやすくなっていました。それ以来,論文は簡潔明瞭が大事であることが,機会あるごとにわかってきました。立場が変わり,皆様の貴重な論文を拝読させていただくこととなりました。編集委員会の叡智を結集して,より良き論文になりますよう,また投稿していただく皆様に満足していただけるよう努力していきたいと思っております。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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