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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻13号

2007年12月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科救急

腎損傷

著者: 田中一志 ,   藤澤正人

ページ範囲:P.1043 - P.1047

要旨 腎損傷は泌尿器系の損傷の中では最も頻度の高い疾患である。損傷の程度は日本外傷学会腎損傷分類によって,Ⅰ型:腎被膜下損傷,Ⅱ型:腎表在性損傷,Ⅲ型:腎深在性損傷,Ⅳ型:腎茎部血管損傷に分けられる。診断および損傷の程度の判定には造影CTが最も有用である。治療はⅠ,Ⅱ型では主に保存的治療が可能で,Ⅲ型は手術もしくはTAE,Ⅳ型は手術療法が基本となる。主な合併症としては尿漏,出血,感染,腎性高血圧などがあり,注意が必要である。

尿管損傷(他科手術時)

著者: 釜井隆男 ,   中村文彦 ,   阿部英行 ,   山西友典 ,   吉田謙一郎

ページ範囲:P.1049 - P.1055

要旨 手術に起因する尿管損傷は,手術時に気づかれるものと,術後に判明するものに大別される。手術時に気づかれる場合は比較的迅速な対応が可能であるが,術後に判明する事例では症状により対応方法が異なる。また,損傷に至らなくとも狭窄を呈する場合があり,これもまた程度により対応が異なる。いずれの場合においても,D-Jステント留置などの保存的な処置で対応可能な事例もあれば,経皮腎瘻造設や開放手術を必要とする事例もあり,患者側の現症(体力,予後など)を鑑み,他科との連携をとりながら対応する必要がある。また,他科の医師に対する尿管の後腹膜化などの啓蒙活動も必要である。

膀胱損傷

著者: 野村威雄 ,   三股浩光

ページ範囲:P.1057 - P.1060

要旨 膀胱損傷の多くは鈍的あるいは鋭的外傷によって発症するが,骨盤内手術や泌尿器科的処置の合併症であったり,あるいは稀に自然発症することもある。膀胱損傷は泌尿器科医として熟知するべき泌尿器科救急疾患の1つであり,本稿ではその原因・分類,診断法および治療について概説する。

尿道損傷

著者: 新垣義孝

ページ範囲:P.1061 - P.1064

要旨 沖縄県立中部病院で1966年から2002年までに経験した尿道損傷198例に検討を加えて解説した。尿道損傷は前部尿道損傷と後部尿道損傷に大きく分けられる。前部尿道損傷の多くは会陰部の打撲による騎乗損傷であり,局所的損傷であることが多い。これに対して,後部尿道損傷は骨盤骨折に合併することが多く,骨盤骨折による大量出血や直腸損傷をはじめ,頭部,胸部,腹部の重篤な合併症への注意が必要である。前部尿道損傷と後部尿道損傷のいずれにおいても尿道完全閉塞の場合は急性期には膀胱瘻で対応し,閉塞部の創治癒機転が落ち着く3か月後以降に狭窄範囲を確認して手術方法を決定する。不完全断裂例では慎重に尿道カテーテルを留置し,2~3週間後にカテーテル周囲から尿道造影を行い,造影剤の溢流がないことを確認して抜去するが,その後に損傷部の治癒機転の経過中に尿道狭窄が出現してくることがある。後部尿道損傷では尿道狭窄に加え勃起不全が起こり得る。

陰茎損傷・持続性勃起症

著者: 小野久仁夫 ,   星宣次

ページ範囲:P.1065 - P.1072

要旨 日頃の泌尿器科救急では多くはない陰茎損傷と持続性勃起症だが,的確な診断と治療を急に求められる。主に,嵌頓包茎,陰茎折症,陰茎剝皮症,陰茎絞扼症,陰茎切断症,持続性勃起症に対する基本的な対処法を述べた。要点のみを把握しておけば十分である。また,陰茎の身体的,心理的な特殊性を十分考慮して診察する必要がある。生命を脅かすほどの外傷は多くはないが,治療後の後遺症は長期にわたる可能性がある。形成外科,皮膚科などの他科との連携は不可欠である。

急性陰囊症

著者: 加藤祐司 ,   玉木岳 ,   佐々木寛 ,   倉達彦 ,   佐賀祐司 ,   柿崎秀宏

ページ範囲:P.1073 - P.1078

要旨 急性陰囊症は,泌尿器科救急の代表的疾患の1つである。精巣捻転症と他の急性陰囊症との鑑別診断に必要な臨床的特徴と相違について理解することにより,時期を逸せず精巣捻転症に対する緊急手術を選択することが可能となり,かつ不要な手術を回避できると考える。超音波カラードプラ検査は急性陰囊症の鑑別には必須であり,普段から慣れておくべきである。精巣捻転症および精巣外傷の手術・治療後に起こり得る造精能の低下・精巣萎縮については,患者,家族への十分な説明と長期間の経過観察が必要となる。

尿路感染症・フルニエ壊疽

著者: 竹内敏視 ,   出口隆

ページ範囲:P.1079 - P.1085

要旨 日常遭遇する尿路感染症,性感染症について,それぞれのガイドラインに準拠して解説した。また感染性水腎症,尿路性敗血症,腎乳頭壊死,気腫性腎盂腎炎,腎膿瘍,腎周囲膿瘍,腸腰筋膿瘍などの後腹膜膿瘍,フルニエ壊疽などの極めて重篤な感染症では,強力な抗菌治療,糖尿病治療,DIC治療などの内科的治療により全身状態の改善をはかるとともに,尿管ステント留置,経皮的腎瘻造設術,ドレナージ,デブリードメントなど迅速かつ的確な外科的治療を必要とする。

急性腎不全

著者: 星長清隆

ページ範囲:P.1087 - P.1093

要旨 急性腎不全は,発症機序から腎前性,腎性,腎後性に分類されるが,早期に原因を確実に診断することが適切な初期治療につながり,ひいては予後を左右する。近年,高齢者に対しても侵襲性の高い検査や治療が積極的に行われ,急性尿細管壊死(ATN)の発症の頻度は増加している。ハイリスク患者がATNに罹患すれば,続発する合併症などにより予後は不良となる。ATNをきたす可能性がある患者には,検査や治療の開始前から十分な利尿をつけ,腎毒性薬物の使用を控え,脱水や血圧低下を防止することが肝要である。また,急性腎不全と診断すれば,素早く適切な治療を開始し,合併症の発生防止に重点をおいた全身管理を心掛けるべきである。

尿路結石・上部尿路閉塞

著者: 金山博臣 ,   高橋正幸

ページ範囲:P.1095 - P.1100

要旨 尿路結石症の疝痛発作により救急外来を受診する患者は多く,救急外来では,まず尿路結石症とイレウス,消化管穿孔,腸間膜動脈血栓症などの消化器疾患,解離性大動脈瘤などの生命を脅かす可能性があり緊急の処置を要する疾患との鑑別が最も重要である。また,尿路結石症と診断した場合,感染を伴っていなければ疼痛管理が中心となるが,上部尿路閉塞に腎盂腎炎を伴っている場合,全身状態の悪化から敗血症性ショックを起こす可能性がある。患者年齢,感染症の重症度,全身状態を十分に把握し,致命的になる前に適切に経皮的腎瘻造設術や,尿管ステント留置術などのドレナージ術を含めた集学的治療を行わなければならない。

血尿

著者: 近藤幸尋

ページ範囲:P.1101 - P.1106

要旨 泌尿器疾患において血尿をきたすものは多数あるため,健診で紹介される顕微鏡的血尿などは外来にてじっくり検査を進めていくこととなる。それに対して泌尿器科救急における肉眼的血尿は,尿の赤さに驚いて来院する軽度のものから骨盤骨折やその他の外傷に付随する外傷性疾患まで,その程度と疾患は多岐にわたる。その中で,緊急の処置および手術が必要なものをいかに早く選択するかが救急における大切な点である。本稿はそれらを満たすべく,診察・検査・処置について概説した。

尿閉

著者: 長尾一公 ,   内藤克輔

ページ範囲:P.1107 - P.1111

要旨 尿閉とは膀胱内に貯留した尿の自排が困難な状態であり,尿閉に対する処置は,膀胱内の尿を体外へ排出させる操作(導尿,膀胱瘻造設など)を行うことである。1,000ml以上の導尿を行う際には,導尿に伴う血圧低下に対し,血圧・脈拍のモニタリングおよび血管ルートの確保を行い,導尿後は輸液による適切な体液量と電解質バランスの管理を行う。基本的に,尿閉に対しては原因検索よりも尿流出路の確保が優先されるため,尿道からのカテーテル挿入が困難な場合には,無理な操作は行わずに膀胱瘻を造設し,尿道の状態を正確に診断した後に治療法を考慮すべきである。尿閉に対する処置は,泌尿器科医が習得しておかなければならない基本的手技である。

学会印象記

「第95回日本泌尿器科学会総会」印象記

著者: 白木良一

ページ範囲:P.1120 - P.1121

 第95回日本泌尿器科学会総会は4月14日から17日までの4日間,大阪医科大学泌尿器科学教室 勝岡洋治教授を会長に,神戸市ポートアイランドの国際会議場,ポートピアホテルなどにて開催された。初春のこの時期,清々しい陽気で天候もおおむね良好で,市民公開講座を含めると7,500名を超える参加者を迎えた。また,昨年2月に学会場のポートアイランドのすぐ南に神戸空港が開港し,交通アクセスの良さも手伝って全国から多くの参加者が空路神戸に来ていた。

 今総会は,ポスター会場や展示会場などを含めると15会場にもなり,参加者や会場の規模からいっても一大コンベンションといった感があった。特に第1会場は打ちっ放しの巨大展示場に3面の巨大スクリーンを配し,中央のスクリーンには討論中の演者の顔がアップで投影されていた。会場の規模や雰囲気などはまるでAUAのPlenary Sessionの様相を呈していた。しかし,会場間のアクセスも比較的良好で疲れもなく,4日間充実した学会参加ができた。

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編集後記 フリーアクセス

著者: 郡健二郎

ページ範囲:P.1126 - P.1126

 今月号は,特集「泌尿器科救急」をテーマとしました。項目を挙げてみると何と11もの疾患・症状があり,私たちが日頃こんなに多くの救急疾患を扱っていることに改めて驚いています。

 救命救急センターなどで扱う3次救急では,泌尿器科疾患は数%足らずと少ないようですが,一般の救急外来における1次あるいは2次の救急疾患の中では,10数%を占めるとの報告もあるほどに,泌尿器科の救急疾患は意外と多いのです。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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