文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法
Ⅰ.泌尿器科処置 【カテーテル留置(尿道留置)】
18.長期間,膀胱カテーテルを留置している患者です。今回,尿が紫色になっています。どのように対処すればよいでしょうか。
著者: 山口聡1 小山内裕昭1
所属機関: 1北海道社会事業協会富良野病院泌尿器科,尿路結石治療センター
ページ範囲:P.63 - P.65
文献概要
紫色蓄尿バッグ症候群は,Barlowら1)によって最初に報告され,その後,本邦においても報告が散見される。Deallerら2)は,その着色物質がインジゴ青やインジゴ赤であることから,トリプトファン代謝にかかわる生合成経路に注目し,その発生機序を推論している(図1)。すなわち,必須アミノ酸の1つであるトリプトファンは,腸管内において腸内細菌によりインドールに分解される。インドールは腸管から吸収されるが,体内では有害であるため,肝臓で硫酸抱合後,無害なインジカンに代謝され,最終的には尿中に排泄される。そこに尿路感染が合併していると,尿中の細菌によりインジカンは加水分解を経てインドキシルに変換される。インドキシルは2分子が縮合し,酸化されるとインジゴ青(一般的にはこれがインジゴと呼ばれている)となる。一方,インドキシルは酸化によりイサチンに変換され,その2分子が縮合してインジゴ赤(インジルビン)になる。これらの反応には,いずれも細菌の関与が必須である。このような経路で産生されたインジゴ青やインジゴ赤は,蓄尿バッグや接続チューブ類を構成するプラスティックポリマーに付着しやすいため,紫色蓄尿バッグ症候群が生じるものと考えられている。同じ検体であっても,集尿容器がガラス製のものでは,ほとんど着色しないことも特徴である3)。
参考文献
掲載誌情報