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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻4号

2007年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法

Ⅱ.泌尿器科手術 C.腹腔鏡下手術 【腹腔鏡下副腎摘除術】

52.腹腔鏡下右副腎摘除術中の患者です。超音波凝固切開装置を使っている際にactive bladeを横隔膜に向けてしまい,横隔膜損傷をしたため肺が見えています。肺には損傷がありません。どのように対処すればよいでしょうか。

著者: 鶴信雄1 鈴木和雄1 伊原博行1

所属機関: 1新都市クリニックからだに優しい手術センター泌尿器科

ページ範囲:P.164 - P.165

文献概要

超音波凝固切開装置は,プローブ先端のアクティブブレードに超音波振動を伝達させ,機械的振動の摩擦熱で周辺組織を出血しないように凝固させながら組織・血管などの切開を行う1)。ハーモニックスカルペル®(ジョンソン・エンド・ジョンソン),ソノサージ®(オリンパス),オートソニックス®(タイコヘルスケア)などがあるが,原理はどれも同じである。超音波凝固切開装置には,先端が高速で振動するアクティブブレード部分と固定されたパッドからなり,組織を把持しながら超音波振動を与え,凝固しながら切開も行うlaparoscopic coagulating shears(LCS)と,アクティブブレードのみからなり,ブレードを組織に押しつけたり引っ掛けたりすることで切開するフック型ブレードがあるが,設問の文脈からLCSを使っているものと判断される。

 超音波凝固切開装置の利点は,把持鉗子や剝離鉗子のように使いながら,切開と凝固を同時に行えることである。しかしながら,アクティブブレード先端ではキャビテーションによる衝撃波が生じるため,接触すると容易に組織損傷を引き起こす。これを防止するために,アクティブブレードは常に視野のなかに置き,先端に損傷してはならない組織がないことを確認する必要がある2)。設問の症例では,右副腎上極もしくは外側の剝離中に上記のキャビテーション効果によって,予期せぬ横隔膜損傷をきたしたものの,胸腔深部には届いておらず,肺損傷は避けられたのであろう。

参考文献

1)金平永二:超音波凝固切開装置.消化器外科 23:453-460,2000
2)鈴木和雄:Ⅲ.副腎摘除術.経腹膜到達法(右).村井 勝,山口 脩,松田公志(編):Urologic Surgeryシリーズ.泌尿器科腹腔鏡手術.メジカルビュー社,東京,pp40-45,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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