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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻4号

2007年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法

Ⅱ.泌尿器科手術 C.腹腔鏡下手術 【腹腔鏡下腎摘除術】

53.径2cmの腎腫瘍に対して腹腔鏡下腎部分切除術を施行した患者です。術後3日目よりドレーンからの排液が急に増加しました。どうも尿瘻が発生したようです。ダブルJカテーテルを挿入しましたが排液の減少が少なく,ドレーンからの排液が止まりません。どのように対処すればよいでしょうか。

著者: 鶴信雄1 鈴木和雄1 伊原博行1

所属機関: 1新都市クリニックからだに優しい手術センター泌尿器科

ページ範囲:P.166 - P.167

文献概要

近年,偶発腫瘍として発見される腎細胞癌の割合が増えてきており,その多くは径4cm以下の小腫瘍であり,腎温存手術の適応が考慮される1)。従来から行われている開放手術のほか,最近では腹腔鏡下腎部分切除術を行う施設も増えてきている。腎部分切除のポイントは,根治性を損なわず,腎障害を最小にし,出血をコントロールしながら,再出血や尿瘻などの術後合併症を回避することである。術前診断では腫瘍が腎外に突出し,腎盂との距離が十分にあり,腫瘍径が3~4cm以下の腎腫瘍であることがよい適応になる。切除範囲の決定には術中エコー診断が有用である。また,マイクロ波凝固装置の利用による無阻血腎部分切除2)や腎盂内冷却水灌流による腎阻血時の腎冷却など3),腎障害を最小にするために各施設により種々の工夫が行われている。

 部分切除後に腎杯が開放している場合は,必ず針糸で縫合しなければならない。腎杯の開放を見落として縫合しなかったり,縫合が十分でなかったりした場合は,術後に尿瘻をきたす。設問の症例では部分切除の方法については述べられていないが,上記いずれかの原因によって尿瘻が生じた結果,ドレーンから尿が持続的に出ているものと思われる。

参考文献

1)Uzzo RG, Novick AC:Nephron sparing surgery for renal tumors:indications, techniques and outcomes. J Urol 166;6-18, 2001
2)萬谷嘉明:マイクロ波組織凝固装置を用いた腹腔鏡下腎部分切除術.日鏡外会誌 4:122-128,1999
3)Landman J, Clayman RV:Renal hypothermia achieved by retrograde endoscopic cold saline perfusion:technique and initial clinical application. Urology 61:1023-1025, 2003
4)Alsikafi NF, Steinberg GD, Gerber GS:Dual stent placement for the treatment of a persistent urine leak after partial nephrectomy. Urology 57:355-357, 2001
5)Bradford TJ, Wolf JS Jr:Percutaneous injection of fibrin glue for persistent nephrocutaneous fistula after partial nephrectomy. Urology 65:799(e43-45), 2005
6)French DB, Marcovich R:Fibrin sealant for retrograde ureteroscopic closure of urine leak after partial nephrectomy. Urology 67:1085(e1-3), 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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