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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻4号

2007年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法

Ⅱ.泌尿器科手術 D.開腹手術 ■腎の手術 【腎盂形成術】

72.腎盂形成術を施行中の患者です。拡張した腎盂周囲に動静脈が走行しているのを知らずに切離してしまい,腎の色が変色してきました。どのように対処すればよいでしょうか。

著者: 浅野友彦1

所属機関: 1防衛医科大学校泌尿器科

ページ範囲:P.222 - P.224

文献概要

解剖学的な検討によると,腎下極は下区動脈により支配されているが,この血管は腎盂の腹側を走行し,腎下極で前後2本に分枝する。5%では,大動脈から直接分枝した下極動脈が存在する。血管が腎盂尿管移行部(pyeloureteral junction:PUJ)付近と交差する頻度は65~71.3%と,手術中に遭遇するよりも実際にはかなり高いと報告されている1)。これらの交差血管のうち,45.2%は正常な腎動脈の分枝である下区動脈であり,この分枝はPUJの腹側を走行し,腎臓全体の7.4~38%の血流を支配している。

 また,いわゆるaberrant vesselはPUJの背側を走行し,比較的細いものが多いとされている。このような血管が一次的にPUJの通過障害の原因となっていることもあるが,尿管の部分的な平滑筋の低形成,協調不全,線維化などの内因性の通過障害により腎盂の拡張が起こり,結果としてそこに存在していた血管に覆いかぶさるような位置関係になってしまっている場合が多い。交差血管が通過障害の一次的な原因ではなくても,結果的に癒着,線維化が起こり二次的に通過障害を増悪している可能性もある。したがって,このような症例に対する手術方法としては,dismembered法により内因性の狭窄部を切除し,血管を腎盂の後方にtranspositionする方法が一般的である。

参考文献

1)Sampaio FJB:Vascular anatomy at the ureteropelvic junction. Urologic Clin North Am 25:251-258, 1998
2)Khaira HS, Platt JF, Cohan RH, et al:Helical computed tomography for identification of crossing vessels in ureteropelvic junction obstruction―comparison with operative findings. Urology 62:35-39, 2003
3)丸川和志,太刀掛俊浩,平井伸彦,他:腎盂尿管移行部狭窄におけるMDCTの役割.広島医学 58:271-272,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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