文献詳細
文献概要
特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法 Ⅱ.泌尿器科手術 D.開腹手術 ■膀胱の手術 【根治的膀胱全摘除術】
79.画像上,T2bN0M0の診断で根治的膀胱全摘除術を施行中の患者です。予想に反して,恥骨と強固に癒着しており浸潤が疑われます。リンパ節の腫脹はありません。恥骨の合併切除を考慮すべきか,このまま閉腹するべきか悩んでいます。どのように対処すればよいでしょうか。
著者: 藤元博行1
所属機関: 1国立がんセンター中央病院泌尿器科
ページ範囲:P.238 - P.239
文献購入ページに移動設問の症例のような状態を認めた場合には,その原因が単なる炎症なのか,がん細胞の進展によるものなのかを判定することが肝要であり,癒着した組織の術中迅速診を行うべきである。もし癒着した組織内にがん細胞が確認される場合はT4膀胱癌となり,5年生存率は20%以下と2,3),その予後はきわめて不良であり,手術療法による根治は一般的に困難である。膀胱全摘除術を強行することも可能ではあるが,このような症例に対して切除せずに閉腹した場合に比較して,無理に手術を続行したほうが腹膜播種や骨転移などをより早期にきたす印象を持っている。膀胱全摘除術は侵襲の大きな手術であり,現在の膀胱癌に対する抗がん剤治療の効果を考慮すると3,4),不完全切除になった状況に対して術後補助療法を行うことで改善できる可能性は少ない。したがって,われわれは切除不能と判断されるT4膀胱癌に対しては特殊な条件以外では膀胱の摘出は断念し,膀胱癌の進展によるQOL(quality of life)の低下を考慮して尿路変向のみ行うようにしている。
参考文献
掲載誌情報