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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻4号

2007年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法

Ⅱ.泌尿器科手術 E.小児の手術 【尿道下裂形成術】

110.尿道下裂形成術を施行した患者です。術後,陰茎皮下の出血と浮腫のため陰茎全体が大きく腫れ上がってしまいました。どのように対処すればよいでしょうか。

著者: 山口孝則1

所属機関: 1福岡市立こども病院・感染症センター泌尿器科

ページ範囲:P.342 - P.344

文献概要

尿道下裂形成術は小児泌尿器科領域でも最も難しい手術の1つである特異性から,一般市中病院で手術されることは少なく,専門とする小児病院や大学病院に患者が集まる傾向にある。また,その手術も二期的手術から一期的手術が主流になり,新しい吸収縫合糸の進歩やmicrosurgery的な医療技術の導入など,いわゆるhypospadiologyの進歩により手術成績はずいぶん向上してきた。その背景には,術後管理に関しても専門とする各施設で工夫がなされており,設問にあるような術後の陰茎皮下出血と浮腫による大きなトラブルはほとんどなくなったといってよい。

 筆者が二十数年前に二期的に尿道下裂形成術から施行した当初1)は,術後,簡単なガーゼで陰茎を巻くのみで対応していたが,手術翌日に陰茎皮下の広範な出血と浮腫で陰茎が腫れ上がり,患児や家族に相当の苦痛を与えた苦い経験を覚えている。それ以降,尿道下裂形成術の手術成績に術後管理がきわめて大切であることを思い知らされ,尿道下裂の手術を担う者にとっては,第一に術後の陰茎浮腫を防ぐ工夫の必要性に迫られることになった。すなわち,尿道下裂形成術後に陰茎皮下出血や浮腫で陰茎が極度に腫れ上がること自体,手術の失敗につながるものであり,このトラブルにどう対応するのかではなく,どう予防するかが問題であることを強調したい。

参考文献

1)山口孝則,鯉川弥須宏,妹尾康平,他:高度尿道下裂に対する修復術の変遷.西日泌尿 65:402-407,2003
2)上岡克彦:尿道下裂の最近の治療成績.小児科診療 68:1697-1704,2005
3)山口孝則,鯉川弥須宏,此元竜雄,他:近位型尿道下裂に対するYoke法の検討.日泌尿会誌 97:730-736,2006
4)山崎雄一郎:尿道下裂の手術.小外 37:1452-1458,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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