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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻5号

2007年04月発行

雑誌目次

特集 腎細胞癌診療の新しい展開

小腎腫瘍の画像診断―質的診断と術前評価

著者: 陣崎雅弘 ,   大家基嗣 ,   村井勝

ページ範囲:P.279 - P.285

要旨 小腎腫瘍の鑑別診断と治療方針を決定するうえで,画像のチェックポイントを知ることが重要である。囊胞性腫瘤ではBosniak分類が非常に有用である。充実性腫瘤は,薄いスライス厚の単純CTでの脂肪の有無,発育形式,腫瘤の均一性,偽被膜の有無,造影パターン,T2強調像の信号強度などをチェックしていけば,不要な手術を避けることができるようになる。また,マルチスライスCTを用いたCT angiographyでは,腎動脈,腎静脈,腫瘍の位置などの評価がより小さい侵襲で可能になり,nephron sparing surgeryや腹腔鏡下手術の術前評価としての有用性が高い。

腎部分切除の適応と限界

著者: 大園誠一郎 ,   藤岡知昭 ,   仙賀裕

ページ範囲:P.287 - P.289

要旨 日本癌治療学会・平田班「がん診療ガイドラインの適用と評価に関する研究班」の小班である藤岡班で作成作業が進められてきた「腎癌診療ガイドライン」のなかで,腫瘍径4cm以下(T1a)の腎癌症例において,腎部分切除術が推奨されている。また,腎癌の部分切除術施行症例を集積したretrospective studyが腎癌研究会で行われ,症例数は国内で最大規模と思われるが,非常に良好な成績が得られた。小径腎癌に対する腎部分切除術の適応と限界を概説した。

腎癌における腹腔鏡手術の役割

著者: 渡邉仁人 ,   松田公志

ページ範囲:P.291 - P.295

要旨 腎細胞癌に対する外科的治療は1990年代までは開放手術で行われていたが,腹腔鏡手術の開発により大きく変化した。腹腔鏡下根治的腎摘除術はT1症例に限らずT2症例においても開放手術と遜色のない手術成績で,術後の患者の負担も少なく,低侵襲手術として標準的治療法となりつつある。腎部分切除についても腹腔鏡手術が行われており,直径4cmまでの突出型で,腎門部にない腫瘍にはよい適応となる。手技では阻血法と非阻血法があり,腎機能の温存をはかる。技術的には難易度が高いが,開放手術に比べ創部が小さく,患者の負担を減らすことができる。手技の向上や機器の開発により,腹腔鏡手術の適応の拡大が予想される。

転移を伴う腎癌症例の治療

著者: 小林幹男

ページ範囲:P.297 - P.306

要旨 腎細胞癌は,転移の有無にかかわらず根治的腎摘除術を行い,術後アジュバント(ネオアジュバント)療法を行うのが一般的な治療法である。しかし,診断時にすでに進行癌で前述の治療法を行えないか,行うと反対に短命となる症例が存在するのも事実である。最近では,治療前に予後予測因子により手術の適応の有無を判定し,患者の状態に応じた適切な治療法を選択するようになってきている。抗腫瘍効果が確認された免疫療法,分子標的治療も単独では根治療法となり得ない現状では,手術療法をベースとした集学的治療を今後も行っていくことになる。

分子標的薬剤の開発状況

著者: 河合弘二

ページ範囲:P.309 - P.315

要旨 腎細胞癌に対する分子標的薬剤の開発は急速に進み,既存のサイトカイン療法を凌ぐ成果も得られつつある。わが国においても近い将来,分子標的薬剤が進行期腎癌の治療体系に組み込まれてくると考えられる。本稿では最近,第Ⅲ相臨床試験の結果が報告されたマルチキナーゼ阻害剤,mTOR阻害剤を中心に腎癌に対する分子標的薬剤の現状についてまとめた。

手術手技 腹腔鏡下手術時代における開放手術・4

腎部分切除術

著者: 原野正彦 ,   江藤正俊

ページ範囲:P.317 - P.322

要旨:小径腎癌に対する開放性腎部分切除術について,筆者なりの工夫・注意点を取り入れた手術方法を紹介した。この手術方法が絶対的なものではないが,手術を行ううえで参考にしていただきたい。また最近,仮性動脈瘤による出血をきたした症例を経験したので,併せて紹介した。合併症についても術前にきちんとインフォームしておくことが重要である。

腎部分切除術

著者: 西尾俊治

ページ範囲:P.323 - P.325

要旨:腎腫瘍の術式としては腎摘出術が標準であるが,両側の腎腫瘍,単腎の腎腫瘍,健側の腎機能が低下しているときなどに腎部分切除を行うことがある。術式としては,腎臓からの再出血,尿漏などの合併症をきたさないこと,腎機能を回復させるための術中の配慮が必要である。本稿では当院で行っている術式について解説した。

腎部分切除術

著者: 木内利明

ページ範囲:P.327 - P.333

要旨:腫瘍径の小さい早期の腎細胞癌が多く発見され,elective caseへの腎部分切除術の適応が妥当になってきた。開放性腎部分切除術を行う際には,筆者は患者に内視鏡下手術の選択肢もあることを説明したうえで,開放性手術で安全に行うことを勧める。腎機能温存と腫瘍の完全摘除の両立を目指し,しかも安全に行えるように,いくつかの指摘したポイントに留意して行う。患者の選択基準は術者の経験にもよる。

セミナー 下部尿路症状(LUTS)診療の最前線・6

間質性膀胱炎

著者: 巴ひかる

ページ範囲:P.335 - P.340

要約:間質性膀胱炎は頻尿,膀胱部痛を主症状とする慢性進行性炎症性疾患である。病態はグリコサミノグリカン層の変性などが考えられるが,病因は解明されていない。診断は臨床症状と水圧拡張時膀胱鏡で行い,点状出血やハンナー潰瘍をみる。治療の第一選択は麻酔下膀胱水圧拡張術で,潰瘍群には経尿道的潰瘍凝固術も行う。抗ヒスタミン薬,アミトリプチリンなどの内服,DMSOの膀胱内注入なども行われるが,根治的治療はない。

症例

空気圧式砕石装置での砕石が有効であった女子尿道憩室結石

著者: 堀靖英 ,   堀内英輔

ページ範囲:P.351 - P.353

 症例は64歳,女性。残尿感を主訴に当科を受診した。ファイバースコープにて尿道憩室結石を確認した。憩室口が広く,硬性尿管鏡の挿入が可能であったため,空気圧式砕石装置を用いて砕石を行った。尿道憩室結石に対する治療としては憩室切除術が一般的であるが,憩室口が広い場合,空気圧式砕石装置での破砕は低侵襲かつ短時間で行うことができ,治療選択肢の1つとなると考えられた。

腎自然破裂をきたした巨大水腎症

著者: 岡野由典 ,   佐藤ミカ ,   針生恭一 ,   谷口淳 ,   山本隆次 ,   清水弘文

ページ範囲:P.355 - P.357

 症例1は25歳,男性。咳の直後に左側腹部痛が出現した。CT検査にて,左腎の水腎症と菲薄化した腎の周囲に液体の貯留を認めた。腎摘出術を施行し,腎盂内容量は3,065mlであった。症例2は31歳,男性。整体治療を受けたのち,左側腹部痛が出現した。CTでは,左腎の水腎症と菲薄化した腎の周囲に液体の貯留を認めた。腎摘出術を施行し,腎盂内容量は1,840mlであった。腎自然破裂をきたした巨大水腎症について,若干の文献的考察を加えて報告した。

尿失禁を主訴に発見された閉経後陰唇癒着症

著者: 久保雄一 ,   砂倉瑞明 ,   辻井俊彦

ページ範囲:P.359 - P.361

 尿失禁と排尿障害を主訴に,62歳の女性が当院を受診した。高度の陰唇癒着を認め,尿がピンホール状の穴より滴下していた。腰椎麻酔下にて鋭的切開を加え,癒着部を完全に剝離した。術後,尿失禁は消失し,排尿障害は改善した。女性の尿失禁および排尿障害の鑑別診断時には,陰唇癒着症も考慮すべきである。

病院めぐり

国際医療福祉大学附属熱海病院泌尿器科

著者: 栗山学

ページ範囲:P.362 - P.362

 旧陸軍病院,国立熱海病院として90年余の歴史を有する当院は,2002年7月1日から国際医療福祉大学附属熱海病院として再出発した。国立熱海病院時代の最後の医長は,横浜市立大学医局出身の井田時雄先生であり,先生が近隣の病院に転勤後,約2年間の泌尿器科医不在の時代があった。

 国際医療福祉大学は,コメディカルスタッフの育成を目指して1995年に設立され,現在5学部と大学院を有し,大学本部は栃木県太田原市にある。実習施設を兼ねた臨床施設は,附属病院として当院を含め4施設〔ほかに国際医療福祉大学クリニック(大田原市),三田病院(東京都港区),附属国際医療福祉病院(那須塩原市)〕があり,関連した臨床医学研究センターは,国際医療福祉リハビリテーションセンター(太田原市),山王病院(東京都港区),化学療法研究所附属病院(市川市),高木病院(大川市),福岡中央病院(福岡市)などの12施設がある。

知多厚生病院泌尿器科

著者: 本間秀樹

ページ範囲:P.363 - P.363

 知多厚生病院のある愛知県美浜町は,中部国際空港(セントレア)のある知多半島の南部に位置し,人口は2万6千人,面積は46平方キロメートルです。東方は三河湾,西方は伊勢湾に挟まれ,ふぐ,たこ,しゃこなどの魚介類の宝庫であり,また,みかん栽培をはじめとする農業も盛んです。周囲は三河湾国定公園に指定され,名古屋からも1時間ぐらいで来られるため,春は潮干狩り,夏は海水浴といった観光の町でもあります。また,当院の医療圏でもある南知多町は,美浜町の南部に隣接しており知多半島の最南端の町で,2つの離島も含まれています。かなりの高齢化地域であり,65歳以上の高齢人口の割合は両町合わせて約23%と全国平均の20%を上回っています。

 当院は昭和39年6月,愛知県厚生連9番目の病院として開設されました。昭和54年5月に総合病院として認可され,平成3年10月に南知多町の離島の1つである篠島に当院附属の診療所が,また平成11年10月に訪問看護介護保険センターが開設されました。さらに,平成14年4月にへき地医療拠点病院指定,平成15年10月に臨床研修指定病院の認可を受けました。現在は12診療科,病床数266床(一般206床,療養54床,感染6床)で,常勤医は30名勤務しており,24時間診療の救急体制で知多半島南部の地域医療を担っています。

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編集後記 フリーアクセス

著者: 郡健二郎

ページ範囲:P.368 - P.368

 村井先生,11年間,本誌の編集をご苦労さまでした。私にとっては「感謝」の気持ちで一杯です。

 と言いますのも,月1回の編集会議は,大学などで時間に追われがちな私には,いつも楽しく,リフレッシュさせていただく清涼剤のような時間だったからです。

 これもひとえに,村井先生のお人柄によるものだったと思います。温厚篤実にして誠実,他人への繊細な気配りは,なにも編集会議に限ったことではないでしょうが,村井先生の人となりを端的に表す言葉です。11年間もご一緒していると,一度ぐらいは嫌な思いをするものでしょうが,いま思い起こしてもそんな記憶はありません。このことは,藤岡先生や編集担当者の方々も同じ思いでしょう。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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