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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科61巻6号

2007年05月発行

雑誌目次

綜説

前立腺癌に対するホルモン療法の現状と将来展望

著者: 鈴木啓悦

ページ範囲:P.375 - P.389

要旨 前立腺はアンドロゲンの標的臓器であり,前立腺癌患者においてアンドロゲン作用の低下を中心としたホルモン療法が広く使用されている。転移病期で第一選択であるのはもちろん,早期・中期癌の補助・併用療法などとして重要な治療手段となっている。さらに,新規薬剤の開発によってホルモン療法の治療様式の組み合わせは多岐にわたってきている。さらに最近では,アンチアンドロゲン交替療法など二次ホルモン療法や間欠的ホルモン療法についても報告されてきている。本稿では,各種ホルモン療法の役割・位置付けと使用方法など現状について整理するとともに,今後のオーダーメイド医療への将来展望を踏まえて概説した。

手術手技 腹腔鏡下手術時代における開放手術・5

腎尿管摘除術

著者: 内田厚 ,   大城吉則 ,   小川由英

ページ範囲:P.391 - P.397

要旨:腎尿管摘除術の手術手技に関する注意点を,尿路上皮癌の性質,特にリンパ節転移を含む転移形態,尿溢流に伴う問題を踏まえて論じた。同術式においてリンパ節郭清の治療的意義は確立されていないが,手術範囲を熟慮して病巣の完全摘除を目指すべきである。一方,経尿道的に膀胱-尿管を切離して,縮小された術野から尿管を引き抜く方法が試みられている。同法は腎盂癌,上部尿管癌の手術で創を可及的に小さくするのに有用である。

腎尿管摘除術

著者: 宮澤克人 ,   近沢逸平 ,   鈴木孝治

ページ範囲:P.399 - P.406

要旨:腎盂・尿管癌に対する術式は腫瘍の部位により腎の処理方法,尿管下端部の処理方法に多様性があり,開放手術としてより効果的かつ低侵襲な術式を選択する必要がある。後腹膜的アプローチでの腎摘除についてGerota筋膜の処理の相違による手技法と,下部尿管の処理方法として経尿道的引き抜きと膀胱切開による膀胱カフ切除について述べた。

腎尿管全摘除術

著者: 佐藤一成 ,   鈴木丈博 ,   秋濱晋

ページ範囲:P.409 - P.415

要旨:上部尿路癌に対する腎尿管摘除術の原理は,病巣を取り残さないように臓器をen blocに摘出し,そして術後に尿溢流をきたさないように膀胱を縫合することである。これを成就するためには,(1)局所解剖を熟知し,必要かつ十分な術野を展開すること,(2)安全領域を認識し,かつ不測の事態に対処できる危機管理能力を備えておくこと,および(3)簡潔簡明な操作であること,が重要と考える。本稿では,われわれが行っている後腹膜式腎尿管摘除術+膀胱カフ切除術を紹介した。

セミナー 下部尿路症状(LUTS)診療の最前線・7

慢性前立腺炎

著者: 清田浩

ページ範囲:P.417 - P.423

要約:慢性前立腺炎は下部尿路症状を呈する疾患の1つで,1999年にNIHが提唱した前立腺炎症候群の4分類のうちのカテゴリーⅡ(慢性細菌性前立腺炎)とカテゴリーⅢ(慢性骨盤内疼痛症候群/前立腺関連疼痛症候群)に相当する。カテゴリーⅡの治療は抗菌化学療法であるが,カテゴリーⅢの治療には決定的なものがなく,現時点ではα1-blockerが最も有効である。これらの下部尿路症状は,NIH-慢性前立腺炎症状インデックス(NIH-CPSI)によって評価される。

原著

ホルモン抵抗性前立腺癌に対するリン酸エストラムスチン・エトポシド併用療法の検討

著者: 大武礼文 ,   伊藤崇敏 ,   明石拓也 ,   野崎哲夫 ,   藤内靖喜 ,   永川修 ,   布施秀樹

ページ範囲:P.435 - P.439

 リン酸エストラムスチン(EMP)・エトポシド(VP-16)併用療法をホルモン抵抗性前立腺癌11例に施行した。EMP 420mg/日,VP-16 50mg/日を3週内服,1週休薬を1クールとして投与し,原則とし外来通院とした。年齢は中央値74歳,治療開始時のPSA中央値は91.1ng/ml,治療は1~14クール施行した。5例(45%)でPSAが前値の50%以上低下した(Responders群)。全例での疾患特異的生存率は1年生存率61.4%,生存期間中央値は12か月,Responders群で有意に生存期間が延長した。有害事象が少なく外来治療も可能である本治療は,ホルモン抵抗性前立腺癌に有用と考えられた。

症例

診断・治療に難渋したループス膀胱炎

著者: 木村亮輔 ,   佐野太 ,   杉浦晋平 ,   植木貞一郎 ,   北見一夫

ページ範囲:P.441 - P.443

 症例は55歳,女性。26歳時にsystemic lupus erythematosus(SLE)と診断された。麻痺性イレウスにて当院に入院となった。SLEの活動性の亢進はみられなかった。CTで両側の水腎症と膀胱壁の肥厚を認めた。膀胱生検では明らかな悪性所見はみられず,炎症細胞の浸潤を認めた。ステロイド治療に反応なく,膀胱容量は次第に低下したため,両側尿管皮膚瘻造設を行った。一連の病態はループス膀胱炎と考えられた。ループス膀胱炎はSLEの活動性亢進がなくとも発症しうるため注意が必要と考えられた。

術後放射線療法を行った精索脂肪肉腫

著者: 斉藤純 ,   角田洋一 ,   矢澤浩治 ,   細見昌弘 ,   佐川史郎 ,   伊藤喜一郎

ページ範囲:P.445 - P.447

 症例は70歳,男性。ゆっくりと増大する無痛性の右鼠径部腫瘤を主訴に当科を受診した。腫瘤は弾性硬であり,エコーおよびCTでは内部均一で一部に造影効果を認めた。右精巣高位摘除術を施行したところ,病理診断は精索高分化型脂肪肉腫であった。われわれが調べえた限りでは,自験例は本邦63例目の精索脂肪肉腫であった。

高圧酸素療法が奏効したシクロホスファミドによる出血性膀胱炎

著者: 吉川慎一 ,   鮫島剛 ,   伊藤貴章 ,   青柳貞一郎

ページ範囲:P.449 - P.451

 症例は58歳,女性。主訴は肉眼的血尿。全身性エリテマトーデス(SLE)にてシクロホスファミド(総投与量約125g)およびプレドニゾロンを継続的に7年間内服していた。2003年8月頃より肉眼的血尿を間欠的に認めていたが放置していた。2005年7月頃より再度肉眼的血尿を認め前医で診療を受けた。同年10月になり血塊による尿閉で前医に入院した。シクロホスファミドによる出血性膀胱炎と診断され,加療目的に当科に紹介された。入院後,強血尿による貧血で輸血を必要とした。入院同日より高圧酸素療法を開始した。7回終了時には肉眼的血尿はほぼ消失し,計34回の治療を行った。術後10か月目の現在,肉眼的血尿の再発を認めていない。

S状結腸癌に伴ったS状結腸膀胱瘻

著者: 西村博昭 ,   内田洋介 ,   中目康彦

ページ範囲:P.453 - P.455

 症例は72歳,男性。糞尿の原因精査および加療目的に当院に紹介され入院となった。CT,MRIにて膀胱に浸潤するS状結腸腫瘍を認め,大腸内視鏡ではS状結腸の全周性狭窄を認めた。膀胱鏡にて膀胱後壁の浮腫状変化を認めた。S状結腸癌,S状結腸癌の膀胱浸潤によるS状結腸膀胱瘻を疑い,S状結腸切除術,膀胱部分切除術を施行した。病理組織学的にはS状結腸癌,S状結腸癌膀胱浸潤と,それとは別部位に炎症性S状結腸膀胱瘻を認めた。

病院めぐり

磐田市立総合病院泌尿器科

著者: 波多野伸輔

ページ範囲:P.458 - P.458

 磐田市は静岡県西部に位置し,東は天竜川,南は遠州灘に面した人口17万人の都市です。奈良時代には,遠江国分寺と遠江国府が置かれ,古墳時代の約500基以上の古墳が現存し,江戸時代には,東海道五十三次見付宿として東西交通の要所として発展してきました。現在は自動車,オートバイ,楽器などの工業都市として,サッカーのジュビロ磐田やラグビーのヤマハ発動機ジュビロのホームタウンとして,また市内の東部に存在する淡水池沼である桶ケ谷沼は日本一のトンボの生息地であり,ベッコウトンボをはじめとするトンボは67種類,県内のトンボの3分の2,国内の3分の1の種類が確認され,トンボの町としても有名です。

 磐田市立総合病院は昭和27年に5診療科,75床の病院として開設され,その後徐々に診療科の増設と増床が行われ地域の中核病院として機能してきました。平成10年5月に現在の,周囲に茶畑の広がる同市大久保に新築移転し,病床数500床,21診療科,常勤医88名(うち臨床研修医8名)で運営されています。磐田市内のみならず,近隣の浜松市天竜区,袋井市,周智郡森町からも来院される方がおられます。平成15年12月に病院機能評価の認定を受けています。

掛川市立総合病院泌尿器科

著者: 蟹本雄右

ページ範囲:P.459 - P.459

 掛川市は静岡県の中西部に位置し,平成17年に旧掛川市と2町村が合併して人口約12万人で新しく誕生しました。掛川市は新幹線駅や東名高速,国道1号など東西交通の大動脈が通り,北は南アルプス南端の山々から南は遠州灘まで豊かな自然が広がり,東海道の宿場町や掛川城に象徴される城下町として栄えた町でもあります。

 掛川市立総合病院は新幹線「掛川駅」南口から車で5分,東名高速掛川インターに隣接する丘陵地にあります。晴れた日には粟ヶ岳や雄大な富士山が望め,訪れる人や患者さんの心をなごませてくれます。

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編集後記 フリーアクセス

著者: 藤岡知昭

ページ範囲:P.464 - P.464

 東海道新幹線で移動中,『ひとときMARCH 2007』の「人に夢あり」で,山野井泰史氏を紹介する頁を見つけました。彼は,単独・酸素なしで,ヒマラヤなどの高峰の極めて困難な登攀ルートを切り拓いてきた著名な登山家です。彼の登攀に関する姿勢は極めて精鋭的・壮烈で,妥協を許しません。2002年,ご夫妻でネパールと中国の国境にそびえ立つキャンチユン・カン(7,952m)の氷壁に挑戦し,みごと彼は単独登頂に成功しました。下山途中,ご夫妻は雪崩に遭遇しましたが,何とか生還できた強運の持ち主です。しかし,その代償は大きく,クライマーの命といえる左手の小指と薬指,右手の小指,薬指および中指,さらに右足のすべての指を凍傷で失っています。それでも岩壁・氷壁の登攀を挑み続ける情熱を失うことはありませんでした。

 インタビューとして掲載されていた「明日は登れるからと準備をする。準備をしているときが一番怖いですよ。登りたい気持ちより恐怖が前面に出てくる。明日も天気が悪ければ行かなくてもすむと思いながら準備をするわけ」,「でも山と向かい合ったら,生きてあそこから戻るにはどうしたらいいかじっと眺める」というところが妙に印象に残りました。登りたいという気持ちと,厳しい山に挑戦することによる生命を失う恐怖との葛藤を推察することができます。なぜか,難しい手術・可能であれば他の術者に代わってもらいたい手術に直面した心境に近いものを感じました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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