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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻1号

2008年01月発行

交見室

PSAによる前立腺癌検診で発見される前立腺癌と前立腺ラテント癌の違いについて

著者: 岩室紳也1

所属機関: 1(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター

ページ範囲:P.72 - P.72

文献概要

 WHOは,生前,臨床的に前立腺癌の徴候が認められず,死後の剖検により初めて前立腺癌の存在を確認した症例はラテント癌と分類している1)。和田2)は,生前に泌尿器科的処置を受けていない283例の解剖症例で検討し,ラテント癌は年齢階層別に40歳代で6.7%,50歳代12.1%,60歳代21.7%,70歳代34.7%,80歳以上50.0%と報告している。全国各地で実施されているPSAによる前立腺癌検診の報告の中で,年齢階層別に前立腺生検実施数と診断された前立腺癌数が記載された報告3~8)を収集分析した結果,生検を受けた2,486人中の年齢階層別前立腺癌有病率は,和田が示した前立腺ラテント癌の発生予測率とほぼ同等であった。生検で発見された前立腺癌が,生検受検者中のいわゆるラテント癌(臨床的に前立腺癌の徴候が認められず,生検により初めて前立腺癌の存在を確認した症例)である可能性が示唆された(表1)。

 一方でPSA検査による前立腺癌検診について否定的な見解を述べている厚生労働省の研究班9)も,「PSA検査は,前立腺がんの早期診断をする上で有用な検査である」と報告している。しかし,PSAが治療を必要とする前立腺癌をスクリーニングしているとすれば,生検群では一定割合存在するいわゆるラテント癌に加え,治療を要する前立腺癌と合わせ,より高率に前立腺癌が診断されるはずとの疑問が浮かび上がった。

参考文献

1)日本泌尿器科学会,日本病理学会(編):前立腺癌取扱い規約(第3版).金原出版,東京,p49,2001
2)和田鉄郎:最近の日本人の前立腺潜伏癌(ラテント癌)の臨床病理学的検討.日泌尿会誌 78:2065-2070,1987
3)山本 巧,伊藤一人,大井 勝,他:前立腺がん集団検診における年齢階層別発見がんの臨床病理学的検討―受診年齢上限の設定について.日本がん検診・診断学会誌 10:118-122,2003
4)金山博臣,香川 征,宇都宮正登,他:徳島市前立腺がん検診について 第一報:平成13年度初年度の結果に対する解析.日泌尿会誌 95:596-603,2004
5)亭島 淳,松原昭郎,吉野干城,他:広島県備北地区における前立腺癌検診―3年間の検討.西日泌尿 68:527-532,2006
6)北島清彰,橿尾智賀夫:高知県越知町における前立腺癌スクリーニング.泌尿器外科 18:1005-1007,2005
7)三原修一:検診におけるインフォームド・コンセントと個人情報保護.泌尿器外科 16:934,2003
8)真弓研介,多田昌弘:高松市における大規模な前立腺がん検診について―延べ4万5千人のPSA検査の結果と考察.泌尿器外科 16:1011-1014,2003
9)平成19年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班:有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン・ドラフト.http://canscreen.ncc.go.jp/guide_prostate070910.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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