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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻10号

2008年09月発行

文献概要

交見室

小野芳啓先生の「交見室」論文(臨泌62:729,2008)につきまして

著者: 堀淳一1 山口聡1

所属機関: 1北海道社会事業協会富良野病院泌尿器科

ページ範囲:P.826 - P.826

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 誌面の関係上,予防的抗菌薬投与に触れることができませんでしたが,当科では泌尿器科領域における『周術期感染予防ガイドライン』1)が刊行される以前から,経直腸的前立腺生検の際,検査0.5時間前および検査4時間後のCEZ 1gの経静脈投与を行っています。麻酔法は低位腰椎麻酔(いわゆるサドルブロック)を原則としていますが,これは同時に膀胱尿道鏡も施行しているためでもあります。われわれの検討2)では,膀胱結石などの何らかの下部尿路異常を約10%に認め,約3%に偶発的に膀胱腫瘍が発見され,早期治療がなされています。この操作が,検査後の炎症を惹起させている可能性は否定できませんが,その他の病変の発見という効果がはるかに優っていると考えています。

 当科では,2007年度に143例の経直腸的前立腺生検が行われ,生検後の有熱性炎症(尿路感染症と考えられたもの)は,5例(3.5%)に認められています。うち1例(0.7%)が重症例(本例)でした。本例はlow risk症例でしたが,抗菌剤の予防投与にもかかわらず,ESBL産生大腸菌という多剤耐性菌による敗血症に至りました。すなわち重症化の予見が困難な症例も存在するというのが実情ですが,最近では,前立腺生検後に38℃以上の発熱が認められた場合は,すみやかにTAZ/PIPCのようなβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の投与に切り替えています。その結果,このような重症例は経験しておりません。

参考文献

1)日本泌尿器科学会:泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドライン.共和企画,東京,pp24-29,2007
2)堀 淳一,奥山光彦ほか:前立腺生検時における膀胱鏡検査の臨床的意義.泌尿紀要 52:185-188,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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