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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション

1.尿路・性器の炎症性疾患 ■非特異性感染症 【精巣炎】

15.流行性耳下腺炎罹患後,右陰囊の疼痛,腫脹により精巣炎が疑われる患者です。対処と処方について教えてください。

著者: 山本新吾1

所属機関: 1兵庫医科大学泌尿器科

ページ範囲:P.58 - P.59

文献概要

1 診療の概要

 ムンプスウイルスによって発症する流行性耳下腺炎の好初年齢は3~5歳で,約85%が15歳以下の小児にみられるといわれている。ムンプスウイルスは飛沫感染によって伝搬される。潜伏期間は約2~3週間であり,症状はその名のとおり発熱を伴う耳下腺の腫脹を特徴とし,発熱は1~4日,耳下腺腫脹は7~10日続き,その後,自然治癒する。膵炎,卵巣炎,精巣炎,心筋炎,関節炎,甲状腺炎,乳腺炎,腎炎などの合併症を併発することもあり,さらに脳髄膜炎,内耳感染による聴力障害などを引き起こすこともある1~3)

 ムンプス精巣炎は,耳下腺で増殖したムンプスウイルスが血行性に精巣に達して発症すると考えられており,通常,耳下腺炎の4~8日後に発症する。思春期以前にはほとんどみられないが,思春期以降に流行性耳下腺炎に罹患すると約14~35%にムンプス精巣炎が発生し,17~30%は両側性であるといわれている。ムンプス精巣炎に罹患した精巣の約30~50%に萎縮性変化をきたすとの報告もあり1),男性不妊症の原因として重要な疾患の1つである。

参考文献

1)Manson AL:Mumps orchitis. Urology 36:355-358, 1990
2)佐藤安男,平野大作,賀屋 仁,他:流行性耳下腺炎性睾丸炎30例の臨床的検討.日不妊会誌 32:190-194,1987
3)佐藤安男,池谷知格,岡田清己,他:ムンプス精巣炎.泌外 4:677-680,1991
4)河村信夫,木下英親,宮北英司,他:ムンプス精巣炎32例の集計.泌外 19:557-559,2006
5)庵原俊昭:流行性耳下腺炎(ムンプス).日本医師会雑誌 臨時増刊 感染症の診断・治療ガイドライン2004.日本医師会,東京,pp262-265,2004
6)南谷幹夫,八森 啓,増田剛太,他:免疫グロブリン療法,ウイルス感染症に対する免疫グロブリン―特にムンプス睾丸炎に対する治療―.化学療法の領域 2:891-897,1986
7)Schulman A, Shohat B, Gillis D, et al:Mumps orchitis among soldiers:frequency, effect on sperm quality, and sperm antibodies. Fertil Steril 57:1344-1346, 1992
8)今本 敬,鈴木啓悦,神谷直人,他:男性不妊症患者におけるムンプス精巣炎の検討.日不妊会誌 47:13-17,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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