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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

文献概要

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション 1.尿路・性器の炎症性疾患 ■性感染症 【性器ヘルペス】

25.陰茎に痛みを伴うびらんにより性器ヘルペスが疑われる患者です。対処と処方について教えてください。

著者: 澤村正之1

所属機関: 1新宿さくらクリニック

ページ範囲:P.87 - P.89

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1 診療の概要

 性器ヘルペスは,herpes simplex virus 1型(HSV 1),同2型(HSV 2)によって引き起こされる皮膚粘膜の炎症性疾患である。ウイルスが排菌している皮膚・粘膜に接触することによって感染する。性的接触は外性器同士に限らず,口腔や肛門にも及ぶので注意が必要である。旧来,口唇ヘルペスはHSV 1が,性器ヘルペスはHSV 2が原因とされてきたが,性行動の多様化によって口唇,性器のいずれからもHSV 1とHSV 2が同程度検出されるようになっている。HSV 2はHSV 1に比べて症状が重く再発傾向が強いものの,血清抗体の存在が発病と予後を推し量る因子にはならず,HSV 2抗体検査が陽性であるからといって臨床症状が伴わなければ性器ヘルペスの診断はできない。その代わり,再発性性器ヘルペスへの移行,ウイルスの体外排菌,human immunodeficiency virus(HIV)やhuman papilloma virus(HPV)など他のウイルス性STDとの合併のしやすさが,現在の臨床的な関心事になっている。

 性器ヘルペス初感染時には,全身倦怠や発熱,リンパ節腫脹などの全身症状を伴うことがある。局所には水疱,潰瘍びらん,疼痛,発赤,搔痒などの症状を呈する。皮膚粘膜に感染したHSVは末しょう神経をさかのぼり,脊髄近くの神経節にたどり着き,そこで潜伏する。通常は休眠状態となっているが,加齢,疲労,睡眠不足,飲酒などによって免疫力が低下したときに活性化して増殖し,末しょう神経を伝って局所に再発する。再発症状はおおむね軽く,本人が気づかないままウイルスが排菌している1)。そのときに性的接触があると,他人へ移すばかりか,本人もHIVやHPVに感染するリスクが上がる。

参考文献

1)松尾光馬,本田まりこ,中川秀己:性器ヘルペスの無症候性排泄.日性感染症会誌 17:42-46,2006
2)Nagot N, Ouedrago A, Foulongne V, et al:Reduction of HIV-1 RND levels with therapy to suppress herpes SiMUlex virus. N Engl J Med 356:790-799, 2007
3)Patel R, Bodsworth NJ, Woolley P, et al:Valaciclovir for the suppression of recurrent genital HSV infection:a pracebo controlled study of once daily therapy. Genitourin Med 73:105-109, 1997
4)澤村正之:性器ヘルペス再発抑制療法の経験.第14回ヘルペス感染症フォーラム 抄録集:37,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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