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2.神経因性膀胱障害と尿失禁 ■神経因性膀胱障害 【蓄尿障害】
30.頻尿を訴える患者です。蓄尿障害なのか排尿障害なのか,外来ですぐに行うことのできる鑑別法について教えてください。
著者: 荒木勇雄1
所属機関: 1山梨大学大学院医学工学総合研究部泌尿器科学
ページ範囲:P.106 - P.108
文献概要
2002年に国際禁制学会(International Continence Society:ICS)から報告された用語基準1)で,下部尿路機能に関する用語が大幅に改定された。下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)は,関連する症状を含めて大きく7種類に分類された。そのうち,従来から下部尿路症状として扱われていたのは,「蓄尿症状(storage symptoms)」,「排尿症状(voiding symptoms)」,および新たに定義された「排尿後症状(post micturition symptoms)」の3つである。従来,残尿感は排尿症状に含まれることが多かったが,排尿後尿滴下とともに新たに「排尿後症状」として分類された。
下部尿路症状は,患者の自覚的な疾患影響度あるいはQOLと密接に関係しており,疾患重症度評価,治療選択,治療効果判定における重要な評価項目である。しかしながら,下部尿路症状には疾患特異性はなく,鑑別診断に使うことはできない。例えば,下部尿路症状を有する高齢男性の1/2~1/3には膀胱出口閉塞は存在しないし,前立腺容積,最大尿流率,残尿量,膀胱出口閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)の程度と下部尿路症状との相関は,弱いかほとんどない。蓄尿症状と排尿症状の区分も,下部尿路機能障害(蓄尿障害・排尿障害)のタイプを必ずしも反映しない。実際,排尿障害が強くとも,患者の主訴は蓄尿症状であるといったことはよく経験することで,排尿症状=排尿障害,蓄尿症状=蓄尿障害といった単純な図式は必ずしも当てはまらない。下部尿路症状を単純に受け止めて対応するだけでは,重大な合併症を招きかねない。
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