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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

文献概要

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション 2.神経因性膀胱障害と尿失禁 ■尿失禁 【腹圧性尿失禁】

38.TVT手術後に尿閉をきたした腹圧性尿失禁の患者です。対処と処方について教えてください。

著者: 窪田泰江1 佐々木昌一1

所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野

ページ範囲:P.128 - P.129

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1 診療の概要

 女性腹圧性尿失禁の手術法として,テープ状のメッシュを用いて中部尿道をtensionをかけずに固定するTVT(tension-free vaginal tape)手術が最近の主流になってきている。わが国でも,ほとんどの施設で腹圧性尿失禁の第一選択として行われている。長期成績も7年でcured 81.3%,improved 16.3%と良好であり,すでに安全性と有効性が確立されたものであるが,稀に重大な合併症を引き起こすことがあり,注意が必要である。Kuuva & Nilssonによる多施設での合併症調査報告を表1,表2に示した1)。その中で術後完全尿閉は2.3%とされている。ほとんどがテープの過挙上によるもので,テープによる尿道の過挙上をきたさないために,尿道ブジーを用いてテープの引き下げを術中に行うなどの対策が有効である(図1)。このような操作により,尿道~膀胱頸部を下方へ押し下げることができ,咳テストの陽性率を上昇させ,テープ長の調整が容易になるなどの利点がある。また,高位の砕石位による体位のために,術中の尿道の角度がテープの面と合わず,閉塞機転となることも考えられる。

 また,テープカバーの除去操作がTVT手術の出来を左右する大きなポイントである。テープとテープカバーはある程度癒着していることが多く,引き抜く際の抵抗によってテープが延びる。したがって,はじめにテープを大きく下方へ押し下げ,完全に緊張がかからないようにしておく。咳テストなどにより最適のポイントがわかったら,この位置でメッチェンバウムをテープと尿道の間に入れ,テープを下方に牽引しつつ慎重にテープカバーを外す。テープカバー除去操作終了後は,自然の位置で尿道とテープの間にわずかの隙間があるくらいが最適である。テープが緩すぎるのではないかと心配になるが,手術終了後,テープは自然の復元力でわずかに締まっていく。さらに手術は仰臥位で行っており,日常生活での立位の状態では位置が異なるので大丈夫である。念のため,最後にブジーを静かにゆっくり尿道へ入れ,抵抗の有無を確認する。この際,多少でも抵抗が感じられたりテープの位置で尿道が曲がっているようであれば,術後に排尿困難を引き起こす可能性が高い。

参考文献

1)Kuuva N and Nilsson CG:A nationwide analysis of complications associated with the tension-free vaginal tape(TVT)procedure. Acta Obstet Gynecol Scand 81:72-77, 2002
2)Shukla A, Paul SK, Nishtar A, et al:Factors predictive of voiding problems following insertion of tension-free vaginal tape. Int J Gynecol & Obstet 96:122-126, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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