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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション

5.腫瘍(外来化学療法) 【癌性疼痛】

68.癌性疼痛に対してモルヒネを使用したところ嘔気・嘔吐をきたした患者です。予防薬剤はどのくらいの期間使用するのがよいのでしょうか。また,中止する目安はありますか。

著者: 木村祐輔1 池田健一郎1 若林剛1

所属機関: 1岩手医科大学外科学講座

ページ範囲:P.233 - P.235

文献概要

1 診療の概要

 1986年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)から,『Cancer Pain Relief(癌の痛みからの解放)第1版』が公表された。さらに翌年の1987年には日本語訳が出版され1),わが国においても癌患者における痛みの実態,鎮痛薬の適正使用などについて理解が深まり,「WHO方式がん疼痛治療法」が普及してきた。また,癌疼痛治療の主軸をなす医療用モルヒネの年間消費量も年々増加しているが2),末期癌患者における除痛率は約60%と報告され,十分とはいえない3)。除痛率が低い原因としてさまざまな要因が挙げられるが,モルヒネ投与に伴う副作用のコントロール不良がモルヒネの増量を妨げている因子の1つになっている可能性がある。

 モルヒネは嘔気・嘔吐,便秘,眠気などの副作用を有することが知られているが,動物実験におけるモルヒネの各種薬理作用の50%有効用量(50% effective dose:ED50)をまとめた結果では,モルヒネによる鎮痛作用のED50を1とすると,消化管輸送能抑制作用(便秘作用)および嘔気・嘔吐作用のED50は,それぞれ0.02および0.1との報告がある4)。すなわち,これらの副作用はいずれも鎮痛用量より低用量で発現するために,副作用の発現は通常避けることはできない。

参考文献

1)竹田文和(訳):がんの痛みからの開放―WHO方式がん疼痛治療法.金原出版,東京,pp20-41,1996
2)厚生省薬務局麻薬課(監):がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用―普及と理解に向けて―平成4年における麻薬・覚醒剤行政の概況.ミクス,東京,pp8-14,1995
3)平賀一陽,竹田文和:日本における癌性疼痛管理の現状と今後の展望.ペインクリニック 20:479-484,1999
4)鈴木 勉,他:オピオイド鎮痛薬の適正使用―オピオイド鎮痛薬の有効性と限界.Inflammation and Regeneration 26:96-100:2006
5)日本緩和医療学会(編):Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン.真興交易医書出版部,東京,pp80-91,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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