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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

文献概要

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション 6.内分泌疾患 ■性分化異常 【精巣機能障害】

75.両側精巣が萎縮しており,精巣機能障害が疑われる患者です。分類およびそれぞれの対処と処方について教えてください。

著者: 坂井清英1 竹本淳1

所属機関: 1宮城県立こども病院泌尿器科

ページ範囲:P.259 - P.263

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1 診療の概要

 両側精巣萎縮をきたす疾患には,さまざまなものが挙げられるが,ここでは主に先天性の疾患を対象に概説する。原因は,主として中枢性(視床下部・下垂体の障害)と,精巣性(精巣障害)に分けられる(表1)。中枢性には,視床下部の異常によるPrader-Willi症候群,Laurence-Moon-Biedl症候群,Kallmann症候群,および種々の下垂体の異常があり,いずれもゴナドトロピンは低値を示す。診断については,思春期年齢を過ぎても二次性徴が発来しないことが契機になるが,出生時から矮小陰茎や,矮小精巣,停留精巣を呈する場合もあり,小児期に発見されることも多い。精巣性には性分化異常(disorders of sex development:DSD),Klinefelter症候群,Noonan症候群,停留精巣などがあり,テストステロン低値~正常値,およびゴナドトロピン高値を示す。

 正常の二次性徴の出現年齢は,精巣容積増大が9.5~14歳,陰毛出現が10.5~15歳,変声・ひげ・腋毛の出現が12~16歳といわれる。外陰部身体所見の評価に関しては,人種による正常対照基準値との比較が必須となる。日本人の年齢別の精巣容積については,Matsuoら1),Fujiedaら2)の調査結果があり,生後9歳頃までは容積はほとんど増加せず1~2ml程度で経過するが,9.3歳の時点で90パーセンタイルのラインが3mlに達し,14歳には90パーセンタイルのラインが20ml以上に達する。16歳にて10パーセンタイルを下回るラインは,およそ13mlのところである。精巣容積はorchidometerにより計測するが,超音波断層装置による測定も可能である(図1)。陰茎長についてはFujiedaら3)の既報を参考にする。理学的所見として,外陰部の成熟の程度(精巣,陰茎,恥毛)の評価も重要であるが,これについてはTannerの分類4)(Stage 1~5)がある。

参考文献

1)Matsuo N, Anzo M, Sato S, et al:Testicular volume in Japanese boys up to the age of 15 years. Eur J Pediatr 159:843-845, 2000
2)Fujieda K and Matsuura N:Growth and maturation in the male genitalia from birth to adolescence Ⅰ. change of testicular volume. Acta Paediatr Jpn 29:214-219, 1987
3)Fujieda K and Matsuura N:Growth and maturation in the male genitalia from birth to adolescence Ⅱ:change of penile length. Acta Paediatr Jpn 29:220-223, 1987
4)Tanner JM:Growth at Adolescent. 2nd ed. Blackwell Scientific Publications, London, pp28-39, 1962
5)永井敏郎:Prader-Willi症候群.小児内科 35:216-220,2003
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7)Tournaye H, Staessen C, Liebaers I, et al:Testicular sperm recovery in nine 47,XXY Klinefelter's patients. Hum Reprod 11:1655-1649, 1996
8)日本小児泌尿器科学会学術委員会(編):停留精巣診療ガイドライン.JJPU 14:117-152, 2005
9)坂井清英:腹腔内停留精巣の治療方針.小児外科 37:1435-1441,2005
10)坂井清英:第1章「小児泌尿器科」小児泌尿器科領域における腹腔鏡手術―現状と将来展望―Ⅴ.非触知精巣に対する腹腔鏡検査および手術.Educational Courses of JUA 8:45-53,2003
11)田中敏章:第5章-B中枢性性腺機能低下症.田苗綾子,前坂機江,田中敏章,他(編):専門医による新小児内分泌疾患の治療.診断と治療社,東京,pp3-6,2007
12)岡田 弘,他:無精子症であることを確認した低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症患者における精子形成誘導を目的とした遺伝子組換え型ヒト卵胞刺激ホルモン(r-hFSH)と胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG)併用療法の臨床的検討.ホと臨床 54:87-94,2006
13)堀 尚明,長谷川奉延:下垂体・視床下部性性腺機能不全―hCG,hMG/rhFSH療法.小児内科 39:948-949,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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