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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科62巻4号

2008年04月発行

特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション

8.そのほか 【腎梗塞】

88.突然の腎部疼痛・肉眼的血尿で腎梗塞が疑われる患者です。対処と処方について教えてください。

著者: 繁田正信1 田村亜紀1 角西雄一1

所属機関: 1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター泌尿器科

ページ範囲:P.308 - P.310

文献概要

1 診療の概要

 腎梗塞は本幹,分枝などの場所に関係なく,腎動脈のいずれかの部位の血流が塞栓や血栓,あるいは外傷などにより途絶し,その末しょう支配領域の腎実質が虚血状態となり,さらには壊死した状態である。成因として,他臓器で形成された血栓が原因となる塞栓症と,腎動脈で直接形成された血栓が原因となる血栓症に分類されるが,塞栓症の頻度が腎梗塞全体の70~80%を占める1)。前者の原因疾患として心臓の弁膜症や心房細動などが,後者の原因疾患として粥状硬化や動脈瘤などが挙げられる(表1)。

 腎梗塞の病態は,腎動脈の血流が急速に低下,もしくは遮断されるために起こる腎実質の虚血性変化であり,通常の体温下では60~90分で不可逆的な障害が生じ始める。被膜や周囲組織,腰椎,尿管の血管から,わずかながらも側副血行を受けてはいるものの,腎動脈本幹が完全閉塞をきたすと,3時間以内に血流が再開されれば腎機能が回復するが,3時間を超えると重篤な機能障害を残す2)。発症から診断,治療までをいかに短時間に行えるかが,治療の成否を決めると言える。その一方で,発症頻度が低いことや症状が非特異的であるため,剖検例で腎梗塞は1.4%に認められるにもかかわらず,生存中に腎梗塞と診断されたのは,わずか0.014%にすぎない2)。また初診時の正診率は30%と低く,診断までに48時間以上経過している症例は48%にのぼるなど3),治療効果のある急性期には発見されにくい疾患である。

参考文献

1)神谷有香子,市原淳弘,山下智子,他:腎動脈分枝に単発した解離性動脈瘤による左腎梗塞の1例.日腎会誌 45:695-700,2003
2)Blum U, Billmann P, Krause T, et al:Effect of local low-dose thrombolysis on clinical outcome in acute embolic renal artery occlusion. Radiology 189:549-554, 1993
3)草場哲郎,木村健二郎:各種腎疾患別の分子病態生理学―成因,病態,治療―腎血管系障害 腎梗塞.日本臨牀 64:473-476,2006
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9)Zinman L and Libertino JA:Revascularization of the chronic totally occluded renal artery with restoration of renal function. J Urol 118:517-521, 1977
10)Barry JM and Hodges CV:Revascularization of totally occluded renal arteries. J Urol 119:412-415, 1978

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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