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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科63巻1号

2009年01月発行

画像診断

コイル塞栓術を行った動脈瘤型腎動静脈瘻

著者: 中田哲也1 藤田治1 明比直樹1 黒川浩典2

所属機関: 1津山中央病院泌尿器科 2津山中央病院放射線科

ページ範囲:P.72 - P.74

文献概要

 患 者 80歳,女性。

 主 訴 CTにて左腎動脈瘤。

 既往歴 逆流性食道炎。

 家族歴 特記すべきことなし。

 現病歴 労作時の動悸と易疲労感があり,前医を受診した。腹部腫瘤を認め,腹部CTにて7.5cmの腹部大動脈瘤と左腎動脈瘤と診断された。5月上旬,腹部大動脈瘤手術目的に当院心臓血管外科を紹介された。10日後に腹部大動脈瘤人工血管置換術(Yグラフト)を施行し,3日後には歩行が可能なまでに回復した。5月末に左腎動脈瘤の加療目的に当科を紹介された。

 術前画像検査 6月上旬,超音波Bモード検査では左腎下極に内部無エコー領域を認め,カラードプラ法では同領域内に豊富な血流シグナルを認めた。また,その血流は拍動性であり,赤・青のランダムに混在したモザイクパターンを示し腎動脈瘤あるいは動脈瘤型腎動静脈瘻を疑った(図1)。6月中旬,左腎動脈造影検査では瘤は直径3cmの類円形で,径が8mm幅の太い流入動脈を認めた。また,造影早期での静脈系への灌流を認め,動脈瘤型腎動静脈瘻と診断した。さらに,この瘤への流入動脈を選択的に造影したが,同血管より支配を受ける腎実質はわずかに染まるのみで,この流入動脈を塞栓しても腎機能に大きな影響はないものと思われた。瘤内にカテーテルを留置し,瘤を造影しながら撮像したマルチスライスCT検査では,瘤の径30×20mm,流出路は1本のみで2mm幅であった(図2)。流出路についてはコイルを使用しても逸脱の心配はないと考えられた。

 治療経過 患者本人に対して,80歳と高齢である点,無症候性である点から必ずしも経カテーテル的動脈塞栓術(以下,TAE)の絶対的な適応でないことを説明したが,患者の治療希望が強かった。最終的に全身状態が良好であり,瘤からの流出路が狭く比較的安全にTAEを施行できると判断し,治療を行うことになった。造影検査の7日後に動脈瘤型腎動静脈瘻に対してTAEを施行した(図3)。左肘穿刺にて左腎動脈にアプローチした。親カテーテルを左腎動脈入口部に置き,開始した。コアキシアル法にて2マーカーカテーテルの先端を瘤内に進め,プラチナ製着脱式コイルを9本使用して型枠を形成後,ファイバー付プラチナコイルを充塡した。さらに,流入動脈にエンボリコイルを38本積み上げた。最終的な造影で早期の静脈灌流がないことを確認した。

 術後経過 術翌日に塞栓による背部痛などはなく,全身状態も安定していた。また,肺動脈系へのコイル逸脱を認めず,術後2日目には退院可能であった。術後1か月でのエコー検査で瘤内の血流は認めず,クレアチニン値の上昇もなかった。

参考文献

1)Varela ME:Aneurisma arteriovenoso de los vasos renales asistolia consecutive. Rev Med Latino-Amer 14:3244, 1928
2)石川智基,玉田 博,井上隆朗,他:Magnetic resonance angiography(MRA)が診断に有用であった腎動静脈瘻の1例.泌尿紀要 49:47-49,2003
3)横山 裕,辻 祐治:超音波カラードプラ法による腎動静脈瘻の診断.日泌尿会誌 93:615-620,2002
4)Cochlin DL, Dubbins PA, Goldberg BB, et al:The kidney. In:Urogenital Ultrasound:A Text Atlas, 1st ed, Martin Dunitz, London, pp23-118, 1994
5)才田博幸,大山朝弘,比嘉 司,他:腎摘後の腎動静脈瘻に対する塞栓術の1例.臨泌 41:1061-1063,1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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