文献詳細
文献概要
書評
「プロメテウス解剖学アトラス―頸部/胸部/腹部・骨盤部」―坂井建雄,大谷 修 監訳 フリーアクセス
著者: 小澤一史1
所属機関: 1日本医科大学大学院・生体制御形態科学分野
ページ範囲:P.169 - P.169
文献購入ページに移動「解剖学総論/運動器系」では,その名の通り「アトラス」としての役割が高い本であると感じたが,今回の「頸部/胸部/腹部・骨盤部」ではアトラス的な要素はもちろんであるが,「解説書」「教科書」的な要素が多くなり,特に基礎科学として解剖学的な見地から内臓学を学ぶとともに,臨床医学に直結する内容が豊富に散らばっており,工夫がなされている様子がよくわかる。例えば間接喉頭鏡の観察像,呼吸による肺容積の変化や力学的な影響,胃粘膜の内視鏡像,種々のX腺画像,臓器と神経支配の図などが,「ここ!」というポイントに示され,学ぶ楽しみを引き出そうとする著者の思いがにじみ出ている。内臓系が中心ということもあり,発生学的な説明や生理学的な機能面での解説も多く見られ,充実した「アトラス」になっている。最終章で扱っている「各器官に分布する神経・血管・リンパ管」では,非常に簡潔に単純化した内臓と神経,血管,リンパ管との関係が示されている。この単純化された関係図を見ながら,詳しい教科書の記述を読めば,これらの仕組みを能率よく身につけることができる。まさに「自ら学ぶ」ための道標としても利用でき,解剖学における少人数のチュートリアル的学習などにも活用できると感じた。
掲載誌情報