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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科63巻4号

2009年04月発行

メディカルエッセイ

ブラキ外来

著者: 丹治進1

所属機関: 1岩手医科大学附属病院泌尿器科

ページ範囲:P.50 - P.50

文献概要

 コメントを書き込んだPSAグラフを受け取ると,K氏はすぐに「また下がっている! 先生の予想通りですね」と言って表情を和らげた。「紙にも『よく起こる現象なので心配ないです』と書いておきましたよ」とややオーバーな笑顔で返した私に対し,「でも先生,また上がる可能性はあるでしょう?」と言い,さらにもぞもぞしながら「先生には言わなかったけど,1年前から酒を飲んだときに小便が痛かったんですよ。ずーと効いてくれるよう酒やめようかなあ?」と付け加えられた。K氏は気の小さい飲ん兵衛さんである。結局,私は「そうですねぇ。少しは節制したほうがいいのかなぁ」とトーンを下げていた。

 これは,当科前立腺癌小線源療法I-125 seed implant:SI外来(通称『ブラキ外来』)の一コマである。K氏は全摘と迷ったあげくSIを希望された62歳,中間リスク群のcT1cN0M0前立腺癌患者である。4か月間のNeoadjuvant ADT後にSIを行い(前立腺D90は171Gy),28か月が経過していた。NADTで4.4ng/mlから2.1にまで下がったPSAがSI後一時上昇したが,12か月後からは予想通り再下降した。ところが,18か月後には8.4へ再上昇し,その後なかなか下がらずにいたが,ここにきてやっと1.6になり正直私もほっとしたところであった。実は,私には同じようにNADT後にSIを行い,1年以内に全身骨転移を生じた苦い経験例があった。それでPSA上昇が続いたときには,K氏には再生検やADT再開について含みを持たせて話していた。直腸診では前立腺の圧痛はわずかで,PDE5阻害薬を希望されたこともあり,血中テストステロン値のチェックも考えないではなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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