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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科63巻4号

2009年04月発行

メディカルエッセイ

2009年冬,雑感

著者: 武内巧1

所属機関: 1東京大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.132 - P.132

文献概要

 徒然なるままに順不同で,脳が混乱したまま思いついたことを書き連ねてみる。泌尿器科とは外科と内科を合わせた,スキーでいえばジャンプと距離スキーの結果を合計する複合競技のようなものだろう。ここで仮に,内科とは極論をいえば科学的,基礎的医学研究と言い換えられるものとしよう。この2つは本質的にかなり異なるものであり,これを両立させるとすれば困難に陥って,自己矛盾を発生する可能性がある。基礎的研究を一泌尿器科医が自分自身で継続して行うことは難しい。大学院や留学といった時期以降も,自分で自立して基礎的研究を施行しようとしても,それはもう基礎的研究に値しないことを行っているのかもしれない。あるいは,自分が若い泌尿器科医を使って成果を発表していくというスタイルは可能かもしれないが,しかしこの場合でも基礎や内科のラボと同じように運営するのは,鵜も泌尿器科医なので,一般には困難ではないだろうか。内科の人などをみると,結局は完全に基礎医学者になってしまう人もいるが,よき,賢明な古典的泌尿器科医に普通はそういう考えはないだろう。結局は,いずれは泌尿器科医は泌尿器外科医,あるいは手術をおおむね放棄した泌尿器内科医として生計を立てていくしかないのだろうか。とすれば,どうすれば泌尿器科は儲かるだろうか。

 泌尿器科手術ということについては,私たちの若い頃は大きく開く開放性手術と,低侵襲手術としてはせいぜいTURやTULを習得すればよかった。今は,これらに加えて腹腔鏡手術やミニマム創手術を学ばねばならないとしたら,いろいろと大変である。大胆に,こっそりといえば,手術をやるほうの醍醐味は,大きく開いてやることにあるともいえるのではないだろうか。このある種の醍醐味を無理やり抑制しながら,患者さんのために“低”侵襲手術をやるとすれば,術者の脳内エンドルフィンは低下するのだろうか,増加するのだろうか。ヒトによるかな。でも,術後何年もたった患者さんの傷あとを見るのは,大きくても小さくても感慨深い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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