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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科64巻9号

2010年08月発行

雑誌目次

特集 筋層非浸潤性膀胱癌に関する最近の話題

筋層非浸潤性膀胱癌の病理診断

著者: 都築豊徳

ページ範囲:P.623 - P.630

要旨 膀胱の尿路上皮癌の異型度評価として,1973年にWHOより提唱された3段階評価方法が一般的であった。近年,欧米では2段階評価方法であるWHO/ISUP分類が新しい異型度評価方法として各種ガイドラインに採用されている。したがって,今後は本邦でもWHO/ISUP分類が普及していくと考えられる。本稿では膀胱の尿路上皮癌におけるWHO/ISUP分類の主な診断のポイントおよび臨床的意義を述べる。また,筋層非浸潤性尿路上皮癌の診断において,間質浸潤の有無,特に固有筋層浸潤の有無の評価は重要である。最近の話題を交えて,間質および固有筋層浸潤の判定方法および問題点も併せて述べる。

筋層非浸潤性膀胱癌のリスク分類

著者: 菊地栄次 ,   大家基嗣

ページ範囲:P.633 - P.638

要旨 筋層非浸潤性膀胱腫瘍のリスク分類としては,EAU,NCCN,AUAのガイドラインに示されたものが広く知られている。EAUではEORTCのスコア表を用いて再発,進展危険度が別々に算出できる。NCCNでは病理学的因子を中心に,AUAでは臨床上に遭遇する患者背景を5つに分けリスク分類している。それぞれの治療指針は多少異なるが,低リスク群には抗癌剤即時単回注入,中リスク群には抗癌剤,BCG注入療法を,高リスク群にはBCG注入,特に維持療法を高く推奨している。日本独自のガイドラインも作成され,これらのリスク分類との整合性を持ちつつ,治療指針の標準化を目指している。リスク分類から導かれる治療指針は個々の症例の最適な治療決定の一助として大いに役立つものと考える。

筋層非浸潤性膀胱癌の2nd TURBT(re-TURBT)

著者: 河原貴史 ,   込山元清

ページ範囲:P.641 - P.644

要旨 近年,筋層非浸潤性膀胱癌に対して正確な診断を期すために2nd TURBTを施行するようガイドラインでも推奨されている。2nd TURBTは通常,T1やhigh grade TaなどのT2以上の病変の除外が完全にできないような症例に対して行われ,腫瘍の残存率は28.5~52.0%,upstageした率は4.0~9.6%とされている。また診断的意義のみでなく,2nd TURBTにより再発率・進展率の低下といった治療的意義も示唆されている。しかしあくまでも局所評価であること,また初回のTURBTの程度により成績や意味付けが異なることから,結果の解釈には注意が必要である。

筋層非浸潤性膀胱癌の膀胱内注入療法

著者: 松本和将

ページ範囲:P.647 - P.652

要旨 筋層非浸潤性膀胱癌は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を始めとした膀胱温存を中心に治療される。一方,TURBTのみでは再発・進行をきたす可能性が高いため,予防・治療法の一環として膀胱内注入療法が行われている。BCGを用いた注入療法が行われて30年以上経過するが,現状でも本法が筋層非浸潤性膀胱癌への主軸の治療法であると考えられる。今回,臨床的に直面する筋層非浸潤性膀胱癌のTURBT後の再発予防・再発後の膀胱内注入療法について,最近報告された文献を概説する。

症例

MAB療法中に膀胱浸潤を認めた前立腺小細胞癌

著者: 大山裕亮 ,   奥木宏延 ,   岡崎浩 ,   中村敏之 ,   飯島美砂

ページ範囲:P.659 - P.663

症例は72歳男性。PSA 79.4ng/ml,中分化型腺癌Gleason score 4+5,T1cN0M0,stageB0に対しmaximum androgen blockade(MAB)療法を施行。prostate specific antigen(PSA)は1~2ng/mlで安定していたが,治療開始から1年10か月後に肉眼的血尿が出現。膀胱鏡にて膀胱浸潤を認め,生検で小細胞癌の診断。PSA 1.552ng/ml,NSE 220ng/ml(0~10ng/ml)。EP療法を8コース施行し8か月間PRを維持して治療継続中である。

腎周囲を原発とした混合型脂肪肉腫

著者: 大門達明 ,   前田高宏 ,   白川洋 ,   三上修治 ,   向井万起男 ,   大家基嗣

ページ範囲:P.665 - P.668

症例は66歳男性。2009年7月頃より腹部膨満感を自覚していた。4年前と今回の画像所見から,腎周囲を原発とした脂肪肉腫と診断し,後腹膜腫瘍切除術,根治的腎摘除術を施行した。腫瘍は径32×30cm,切除重量は5.88kg,病理診断は高分化型と脱分化型とが混合した脂肪肉腫であった。術後療法は行わず経過観察しているが,再発は認めていない。

夜間頻尿を呈した前立腺貯留性囊胞

著者: 西田智保 ,   小田眞平 ,   佐々木豊和 ,   丹司望 ,   阿部康人 ,   横山雅好

ページ範囲:P.671 - P.674

症例は77歳男性。10年前に前立腺肥大症に対し他院でTUR-Pを施行するも,夜間頻尿は持続し,最近になって増悪してきた。食欲不振を契機に内科で精査中,CTで前立腺左葉に囊胞性腫瘤を指摘された。MRIのT2強調画像でhigh intensityを示す液体貯留を伴う直径30mmの前立腺囊胞を認めた。尿道膀胱ファイバーでは,膀胱頸部に軽度の隆起は認めるものの,尿道粘膜は正常であった。以上より,前立腺貯留性囊胞と診断し,内視鏡的に囊胞の開窓術を施行した。術後経過は良好で,夜間頻尿も改善した。前立腺貯留性囊胞として,本邦報告40例目であった。

画像診断

NBI(narrow band imaging)を用いた膀胱腺癌の診断

著者: 芳賀一徳 ,   佐藤嘉一 ,   中嶋久雄

ページ範囲:P.677 - P.680

 患 者 84歳,男性。

 主 訴 血尿。

 既往歴 前立腺肥大,高血圧,直腸癌。

 現病歴 2003年6月より排尿障害にて前立腺肥大として外来通院。尿沈さなどの異常を認めなかった。2007年3月に近医外科にて直腸癌を診断され,低位前方切除を施行され,2008年3月吻合部再発を認め,開腹術施行したが,切除不能にて横行結腸にストマ造設。その後も尿沈さなどに異常はなかったが,2009年5月,肉眼的血尿を認めたため精査となる。

尿管坐骨ヘルニアの1例

著者: 福井真二 ,   橋村正哉 ,   藤本清秀

ページ範囲:P.682 - P.684

 患 者 78歳,男性。

 主 訴 右腰背部痛。

 既往歴 63歳と75歳時に腹部大動脈瘤手術。

 合併症 高血圧。

 現病歴 右腰背部痛のため近医を受診したが,腹部CTで右水腎症と右尿管の走行異常を指摘され,精査目的に当科へ紹介された。

小さな工夫

女性患者の排尿時膀胱尿道造影を円滑に行うための小さな工夫

著者: 佐々木寛 ,   倉達彦 ,   早川泰幸

ページ範囲:P.686 - P.687

 排尿時膀胱尿道造影(以下,VCU)は,主に膀胱尿管逆流の診断と後部尿道弁,尿道狭窄,尿道憩室などの尿道疾患の診断に行われる。臥位での排尿は困難であるため,排尿時の撮影では透視台を立て,立位で行う場合が多い。しかし,女性には立位排尿がうまくできない場合も多い。部屋を暗くしたり水の流れる音を聞かせるなど,緊張の緩和をはかり排尿を促す工夫は多くの施設で行われていると推察するが,結局立位では排尿できず,単なる膀胱充満像と排尿後のKUBを撮って検査を終えざるを得ないケースも少なからず存在すると思われる。

 当院放射線科は,簡便ながらストレスなく女性が透視台の上で排尿できるような「小さな工夫」を凝らし,VCUの完遂に役立てている。排尿成功率100%を誇る,その「小さな工夫」を紹介する。

学会印象記

「第25回欧州泌尿器科学会(EAU)」体験記

著者: 大澤崇宏

ページ範囲:P.688 - P.689

 今年で25周年を迎えるEuropean Association of Urology congressがバルセロナで4月16日から20日にかけて開催されましたので,その報告をさせていただきます。ホームページによると,計3,594件の抄録提出(過去最高記録)の中から1,089件が採択され,Registrationは10,248人との事前情報で,過去最大の学会となる予定でした。私が在籍する北海道大学からは,篠原信雄先生と下田直彦先生の3人で参加しました。

 今回が私にとっては初めてのEAU congress参加であり,「Long-term outcome of renal function in bladder cancer patients after radical cystectomy」について「膀胱全摘術,尿路変向術が施行された患者の35.7%に術後腎機能の悪化を認め,この悪化に関わる因子としては術前後の化学療法の有無と術後の腎盂腎炎の回数が有意であり,一方,尿路変向術の術式は腎機能悪化には有意な影響を与えなかった」という内容の口演をしてきました。

「第98回日本泌尿器科学会総会」印象記

著者: 野村威雄

ページ範囲:P.690 - P.691

 第98回日本泌尿器科学会総会は,岩手医科大学泌尿器科学講座藤岡知昭教授を会長に,2010年4月27日から30日までの4日間,過去最多の1330演題を集め,岩手県盛岡市で開催されました。メインテーマを「イーハトーブ・理想の医療を求めて“Ihatov-Revolution toward the ideal medical treatment”:病気と戦う希望の提供」と掲げられ,会場は盛岡市民文化ホール(マリオス),いわて県民情報交流センター(アイーナ),ホテルメトロポリタン盛岡本館・ホテルメトロポリタン盛岡NEW WINGの4会場で,いずれもJR盛岡駅に近接した徒歩にて移動可能なアクセスの良い施設でした。

 大分から飛行機と東北新幹線で約8時間の長い道のりでしたが,途中山間部には残雪も見られ,降り立った盛岡市は南国九州から参加した私には肌寒く感じられました。メインテーマに出てくる「イーハトーブ」とは宮沢賢治の「注文の多い料理店」の中で使われた造語で「理想郷」を意味する言葉だそうで,理想の医療を追求するという,大会長の強い信念が凝縮された言葉であると感じました。毎年,本学会総会では医療技術,治療法,さらには基礎研究など最新の情報が短期間で勉強できますが,すべての発表を拝聴することは不可能でありますので,今回も抄録集で事前に下準備して参加しました。本印象記では,あくまで私が拝聴した限られた内容のみによるものですが,私見を述べさせていただきます。

病院めぐり

倉敷中央病院泌尿器科

著者: 寺井章人

ページ範囲:P.694 - P.694

<病院の沿革>

 財団法人倉敷中央病院は1923年倉敷紡績社長大原孫三郎によって創設された。大原は事業で得た富を社会へ還元することの重要性に目覚め,社会,文化事業にも熱心に取り組んだ。西洋美術で有名な大原美術館も1930年大原により創設された。院是に「本院は,平等主義にて治療本位とす。すなわち,完全なる診療と懇切なる看護とにより進歩せる医術に浴せしむるを院是とす」とあり,患者本位の医療,全人医療,高度先進医療の実践を基本理念としている。

 当院は病床数1,135床,医師数423名(初期研修医52名,シニアレジデント142名を含む),総職員数2,671名である。2009年度は1日平均外来患者数2,872人,入院1,108人,平均在院日数12.3日,手術件数11,867件(うち麻酔科管理7,011件)であり,西日本有数の規模を持つ急性期型の民間総合病院である。

川崎医科大学附属病院泌尿器科

著者: 常義政

ページ範囲:P.695 - P.696

 川崎医科大学附属病院は,岡山県の倉敷市にあります。病床数は1,182床で,高度医療を提供する特定機能病院,地域がん診療連携拠点病院です。今年で開設40周年を迎えますが,開院以来,救急医療に力を入れ,県内唯一の高度救命救急センターを開設し,2001年4月からはドクターヘリ(岡山県事業)の運用が始まり,地域医療にも大きく貢献しています。

 川崎医科大学泌尿器科の歴史は1972年4月に初代教授に大森弘之先生が就任されて始まりました。1978年3月より田中啓幹先生が第二代教授に就任され,2002年3月まで24年間にわたり教室を運営され,病院の活性化にも貢献されました。一期生から多くの入局者を迎え,今の教室の歴史が作られました。第三代教授は藤澤正人先生(2002年12月~2005年3月),そして,2006年1月より永井 敦が第四代教授として就任しました。永井教授就任時には,総勢4人からのスタートでした。医局員の確保をトッププライオリティに掲げ,まず教室内のムードを活性化することに全力を挙げました。診療面では医療機器の刷新に力を注ぎ,ハイビジョン腹腔鏡システム,ホルミウムヤグレーザーなどの最新手術器具を導入,検査機器も充実させました。その結果,2007年には手術件数が年間700件を超えるようになりました。明るい医局をモットーに,学生達とも時間の許す限り懇親の場を持ちました。おかげ様で,昨年は当科で初の女性の入局者を迎え,また今年度は3名の新入局者を得て,現在10名のスタッフになりました。さらに,研修医にも入局予定者を控え,ますます元気な医局を目指しています。

書評

「解剖を実践に生かす―図解 泌尿器科手術」―影山幸雄 著 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.631 - P.631

 手術は記録を通して客観性を持つのではないだろうか。手術記事では個々の症例でどのような手技がどのような時間軸で施行されたかが記録され,第三者が読んで手術の過程がわかるように記載されている。これとは別に,手術を行う医師は,自分自身の手術の習熟のために,手術記事に記載するにはあまりに主観的な「手術ノート」を作り,先輩の医師に習ったこと,今後改善すべき点などを詳細に記載し,後生大事に持っていることが多いのではなかろうか。手術前にノートの記載とスケッチを眺めながらイメージを描き,手術に臨む。手術の終了後は加筆を行い,ノートの「改訂」は繰り返されていく。この地道な過程こそが上達への定石であり,この記録を通して,先輩の医師は後輩に技量を伝授してきたのではないだろうか。個々の症例では手術は1回きりである。なんとしてでも全力を尽くさなければならない。より良い手術を継続的に実践するためには,手術自体の客観性を担保しなければならない。そのためには,学会で勉強し,意見を交換するだけでなく,手術書あるいは文献を紐解き,常に自らの手技に批判的な視点を持つ必要がある。

「《シリーズ ケアをひらく》リハビリの夜」―熊谷晋一郎 著 フリーアクセス

著者: 岩﨑清隆

ページ範囲:P.656 - P.656

 この本の著者は,脳性まひを持った小児科医である。この本には,著者の幼少時からの運動学習,モノや人への働きかけの学習のプロセスがある種の感慨をもって描かれている。感慨といっても独りよがりな情緒論に陥ることなく,全体が透徹した公平な視点に貫かれている。適切な内容に,それに見合う適切な言葉が用意周到に選ばれているので,味わい深いと同時にその描写がとても美しくも感じられる。

「栄養塾 症例で学ぶクリニカルパール」―大村健二 編集 フリーアクセス

著者: 鷲澤尚宏

ページ範囲:P.669 - P.669

 1980年代には完全静脈栄養法(以下,TPN)が全盛であったが,90年代の終わりになると積極的な腸管利用が推奨されるようになった。TPNがあたかも悪い栄養法であるかのごとく評価されるという,米国栄養教育の内容が日本に入ってきた時代である。この結果,無理に経腸栄養を勧めたり,非現実的な経口摂取を叫んだりする状況が医療現場に作られてしまった。これは,医師の卒前教育が行われないままに応用医学が普及した結果である。

 2006年の診療報酬改定で「栄養管理実施加算」が導入され,2010年からは「栄養サポートチーム(NST)加算」が始まった。これにより,栄養サポートチームの看護師や管理栄養士,薬剤師が,受け売りではなく,自ら栄養管理を立案する立場を得ることとなった。医師とコメディカルが栄養管理の方針を話し合うときには客観性のある判断が必要となるが,本書は多くの医療者らが疑問に感じていた部分に明快な解答を示してくれている。

「多飲症・水中毒 ケアと治療の新機軸」―川上宏人,松浦好徳 編 フリーアクセス

著者: 穴水幸子

ページ範囲:P.675 - P.675

 水のような本である。『多飲症・水中毒―ケアと治療の新機軸』という題名の通り,至極当然のように水と身体のかかわりのことが書かれた本なのではあるが。ブルーと白の2色のシンプルな美しい装丁で飾られ,さっぱりとした筆致で書かれて大層読みやすい。しかし,読者はその美しさに惑わされ,ふわりと読み流してしまってはいけない。この本には,多飲症に罹患した人々が示す,水への飽くなき要求と依存,あるいはその経過中に訪れる激しい消化器症状,失禁,低ナトリウム血症,神経症状,意識障害,けいれん発作,昏睡という身体症状が描かれている。本書は疾病に真正面から向かい合うタフでハードな治療記録でもある。

 水中毒は精神科臨床医療では治療の中で,身体管理上,最も苦慮する病態の1つである。本書を紐説くと,ヒトの身体における水のあり方をあらためて意識させられる。

「イラストレイテッド外科手術 第3版 膜の解剖からみた術式のポイント」―篠原 尚,水野惠文,牧野尚彦 著 フリーアクセス

著者: 坂井義治

ページ範囲:P.692 - P.692

 篠原尚先生・他著による『イラストレイテッド外科手術』第3版を手にした。第1版,第2版ともに購入したものの残念ながらすでに私の手元にはない。研修医に貸したまま戻ってこないのである。彼らがボロボロになるまで毎日この本で手術の予習・復習をしている姿をみるにつけ,“自分で買えよ”とはいえず,そのままになってしまった。年代を越えてこれだけ愛読されている外科手術書が他にあるだろうか?

 あらためて第3版をめくる。時代の趨勢で器械吻合のイラストが増えているものの,胃癌手術の際の十二指腸切離・吻合や脾臓脱転操作のイラストをみると,私自身も県尼(兵庫県立尼崎病院の略称)で指導を受けた牧野尚彦先生の手術操作が蘇る。それほどに著者篠原先生の感性がイラストに凝集,注入され,写真とは異なる“実際”を描写しているともいえる。

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編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.704 - P.704

 病院が新築あるいは改装されると患者さんが増えるということは定説のようです。東京都渋谷区にある日赤医療センターも今年の1月に新築され,硝子張りの白亜の建物は日赤病院の総本山というべき威容を誇っています。泌尿器科部長の冨田京一先生とお話しする機会があり,尋ねてみたところ,確かに患者さんは増えているそうです。「広尾駅からは少し距離があり,坂を登らなければならないので,年配の患者さんには少しきついのではないですか?」と私が尋ねますと,「堀田坂のことですか? あの坂はたいしたことはないですよ。先生,別所坂って知っていますか? あまりに急な勾配で,車両通行禁止です。恵比寿駅から東京共済病院に行く途中にあるのですが,あの坂はキツイ」と冨田先生はおっしゃいました。

 皆様も気付いていらっしゃると思いますが,東京は至る所に坂があり,その多くに名前が付けられています。立て杭に名称のいわれが書いてあり,通りすがりに説明を読むと,江戸時代にタイムスリップした気がします。これまで私は,特別の関心を持って東京の坂を観察してきました。車が通れないほどの急な坂があるのなら,住んでいる人々が生活に困るであろうし,江戸時代でも土地の開墾が行われていたはずで,どうも納得がいきません。訪ねてみることにしました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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