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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻2号

2011年02月発行

雑誌目次

綜説

ロボット手術の現況と将来展望

著者: 瀬島健裕 ,   武中篤

ページ範囲:P.95 - P.105

要旨 2009年11月,da Vinci S HDTMサージカルシステムの製造販売が国内で薬事承認された。ダビンチの鉗子類の自由度の高さに由来する手術操作性の向上,コンソールでの立体視が可能なこと,さらには術者の肉体的負担の軽減などにより,ロボット手術は開腹手術や腹腔鏡手術を凌駕する可能性を持つ手術法である。全ロボット手術の中で,占める割合の高いロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を中心に,手術手技,合併症,癌制御,機能温存などの観点から検討した。またロボット手術導入にあたっての当施設での経験を基に,チーム医療におけるトレーニング,教育の視点より検討した。さらにロボット手術の今後の展望と問題点について考察した。

書評

「標準外科学 第12版」―北島政樹 監修/加藤治文,畠山勝義,北野正剛 編 フリーアクセス

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.106 - P.106

 最近は外科志望の医師が減少しているといわれている。外科医を増やすためには,まず実技教育を含め生き生きと充実した学生教育を行う必要がある。一口に外科といっても,消化器外科,呼吸器外科,心臓外科,乳腺外科,小児外科などその領域は広い。外科領域の臨床だけでなく,外科学に関係する遺伝子学や免疫学などを含めた基礎教育など幅広い教育も必要となってくる。さらに,臓器移植,遺伝子治療,新薬による治療などに関する倫理的な教育も必要となってくる。このような幅広い要請に十分に応える外科の優れた学生向け教科書が必要なことは言うまでもない。『標準外科学』は今回で第12版となり,1976年の初版発行から30余年が過ぎた「標準」と付いていることに恥じないロングセラーである。現在,外科学の一線で活躍されている先生方の多くも使用された教科書であると思う。本書はその表紙から紙面まで大きく変わっている。真っ白な表紙は,刷新された本書の意気込みや潔さが象徴されている気がする。

「ティアニー先生の臨床入門」―ローレンス・ティアニー,松村正巳 著 フリーアクセス

著者: 今井裕一

ページ範囲:P.114 - P.114

 『ティアニー先生の臨床入門』が,前作の『ティアニー先生の診断入門』の続編として,ティアニー先生と松村正巳先生の共著で出版された。前作と同様に,名医の診断へのアプローチがわかりやすく解説されている。実は,英語のタイトルは,「Principles of Dr. Tierney's medical practice」であるので,「ティアニー先生の臨床現場での原則」とでもいうべき内容である。

 医師は,病態が理解できないいわゆる「むずかしい患者」「わけのわからない患者」を目の前にしたときにどのように問題を解決するのであろうか? その解決方法にのっとって経験が蓄積されれば,比較的短期間に名医あるいは良医になれるはずである。残念ながらハリソンのテキストブックを精読しても,UpToDateをいくら調べても,PubMedでいくら検索しても答えは得られない。本書は,ずばり,その解答を示している。

「肝胆膵高難度外科手術」―日本肝胆膵外科学会高度技能医制度委員会 編 フリーアクセス

著者: 齋藤洋一

ページ範囲:P.136 - P.136

 日本肝胆膵外科学会は,この領域に携わるアクティブメンバーで構成された専門医集団の学会として発足したものであります。この領域の高難度な手術をより安全かつ確実に行える外科医を育てることを目的として,2008年2月の理事会で「高度技能医制度」が生まれました。

 この領域の先達にはいわゆる黄金の手を持つ外科医が少なからず存在していましたが,国民の要請に応える体制づくりのためには,常にこのような技術を駆使できるhigh volume centerの設置や,きめ細かい指導教育体制の確立が急務とされてきました。各学会を中心に種々の診療ガイドラインが作成され,各疾患に対する共通の認識がもたれるようになりましたが,外科技術面での巧拙の認識や独特のコツについてはまとめられたものがないのが現状であります。

手術手技 指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント・3

腎尿管全摘除術(開腹術)

著者: 平原直樹 ,   三神一哉 ,   伊藤吉三 ,   三木恒治

ページ範囲:P.109 - P.113

要旨 本稿では,開腹による腎尿管全摘除術のポイントとともに鏡視下手術の適応が拡大している現状においての開腹手術がどのように位置付けされるのか,指導的助手として若手医師に指導する立場から解説する。開腹手術の方法もさまざまであるが,進行しており腫瘍が大きな場合や拡大リンパ節郭清が必要な場合,側臥位をとれない場合には,腎門部への到達が容易となる経腹的到達法や経胸腰的到達法で行うほうがよい。しかし,腹腔を開放しない腹膜外後腹膜到達法は,泌尿器科医が最も精通しておくべき手術法であると考える。そのような観点から,本稿では腹膜外アプローチである経腰的到達法+下腹部傍腹直筋切開による到達法について解説する。

腎尿管全摘徐術(開腹術)

著者: 下田次郎

ページ範囲:P.117 - P.126

要旨 腎尿管全摘除術は,腎盂尿管癌の標準的治療として行われ,膀胱部分切除を含め患側の上部尿路の全摘除を行うものである。現在,体腔鏡下手術が普及しているが,広範囲のリンパ節郭清の必要性が指摘されており,開腹手術,特に経腹膜的な手技の必要性も増してくると思われる。本手術は皮膚切開などのバリエーションが豊富であるが,個々の症例で病変部位やリンパ節郭清の要否により最適なアプローチを選択すべきである。

開腹腎尿管全摘除術

著者: 稲垣武 ,   原勲

ページ範囲:P.129 - P.135

要旨 われわれが行っている上部尿路癌に対する開腹腎尿管全摘除術の手技とポイントについて概説した。良好な視野を確保するための後腹膜腔の展開,腎周囲の剝離と腎茎部の処理,尿管口を含めた尿管下端の処理などが重要な点である。

セミナー 泌尿器科医に必要なPET検査の知識―有用性と問題点・5

前立腺癌診療におけるPET(PET/CT)の役割

著者: 北島一宏 ,   千田道雄 ,   杉村和朗

ページ範囲:P.139 - P.148

要約 現在広く癌診断に使われている18F-FDGは前立腺癌に対して集積が低く,保険適応されていないが,海外では11Cコリン,11C酢酸,18Fコリンなどの核種を使用したPET検査の有用性が報告されている。治療前の前立腺癌の存在診断や病期診断などの評価は空間分解能の高いMRIが優れるが,治療後の再発・遠隔転移診断,治療前の予後予測,治療効果判定などでは有用性が期待される。

症例

泌尿器科術後開放創に陰圧閉鎖療法が著効した2例

著者: 水野伸彦 ,   藤川直也 ,   林成彦 ,   村上貴之 ,   鈴木康太郎 ,   池田伊知郎

ページ範囲:P.153 - P.156

術後に生じた皮下ポケットを伴う開放創に陰圧閉鎖療法(vacuum-assisted closure therapy,以下VAC療法)を行い,良好な結果が得られたため報告する。症例1は膀胱周囲膿瘍術後に下腹部正中創が離開したためにVAC療法を施行し,4週間で治癒した。症例2は陰囊膿瘍術後の広汎な開放創にVAC療法を2週間施行。創部はほぼ閉鎖したために,その後は従来の創処置を行い開放創出現から4週間で治癒に至った。

画像診断

排尿症状を呈した成人男子単純性尿管瘤

著者: 大森圭 ,   由利康裕

ページ範囲:P.158 - P.160

 患 者 60歳,男性。

 主 訴 排尿遷延,夜間頻尿。

 既往歴 慢性副鼻腔炎。

 家族歴 特記すべきことなし。

 現病歴 2年前から排尿時間が長く,排尿終盤になると力まないと出にくいことを自覚。他院を受診するも改善を認めなかった。1年前から夜間尿が2~3回と増加したため,当院を受診した。

交見室

透析腎癌と造影超音波

著者: 水関清

ページ範囲:P.161 - P.161

 超音波造影剤は,X線造影剤のように腎毒性を有さず,腎に負荷をかけることなく投与可能な特性を有する。この特性に着目して,透析腎に生じた腎腫瘍の鑑別に,超音波造影法を用いた試みが,2010年春に京都市で開催された日本超音波医学会第83回学術集会で紹介された。

 現在のところ,わが国で日常臨床において使用可能な超音波造影剤は,①ガラクトース・パルミチン酸混合物と,②ペルフルブタンマイクロバブルである。①は,腎についての保険適応があるが,②の適応は現在のところ肝腫瘤の造影診断のみにおいて認められている。

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.93 - P.93

お知らせ 第1回「腎臓・透析・泌尿器領域の臨床研究寺子屋セミナー(C3KDMD)」受講者を募集 フリーアクセス

ページ範囲:P.157 - P.157

○本セミナーの目的

 ・わが国の腎臓・透析・泌尿器領域分野における臨床研究のリテラシーの普及,定着

 ・わが国から良質の臨床研究が発信され,その結果が臨床にインパクトを与えること

○開催日程:2011年5月28日午前9時半~午後5時,29日午前9時半~午後3時

○開 催 地:京都テルサ

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.165 - P.165

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.166 - P.166

著作権譲渡同意書 フリーアクセス

ページ範囲:P.167 - P.167

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.168 - P.168

 秋祭りのシーズンに人混みで賑わう原宿表参道を歩いていると,視界の先に神輿が飾ってありました。よくこんな場所に神輿を置くスペースがあるものだなあと思いながら通り過ぎたところ,神輿の置いてある場所が橋の上であるような錯覚を起こしました。あれっ,と思って振り返ったところ,欄干に気づきました。なぜこんなところに欄干があるのだろうか。もしや,この場所はかつて川が流れていたのではないか,と疑いました。欄干に交差している道は原宿キャットストリートという道路です。そういう眼でみると,キャットストリートは途中に公園が道の中央にあったりして不自然です。都市化とともに何か細工がされた道に見えてきました。埋め立てられたか,それとも暗渠になったか。

 「地下鉄がどこから入ったかを考えると夜も眠れなくなっちゃうのですよ」という三球・照代の地下鉄漫才が1980年代に流行りました。当時の私達仲間うちでの正解は,「地下鉄は必ず地上に出てくるので,そこから入れる」というものでした。暗渠だったとしたら地上に出てくる場所があるはずです。キャットストリートを原宿の隣の渋谷駅まで歩いていきますと,それは意外にも渋谷駅東口を抜けてすぐ脇の東急東横線沿いにありました。川の水深は浅く,意外と汚染はひどくありません。川の水はビルの陰影を映しながらつつましやかに流れていました。両側にビルが迫っていて,川沿いを歩くことはできませんが,平行して明治通りが走っています。明治通りをワンブロックほど歩いたところに立て看板があり,読んでみますと,この川は渋谷川という名称であり,有名な「春の小川」が唱われた川であるということ,源流は新宿御苑であり,渋谷川は港区に入ると古川と名称を変え,浜松町で東京湾に注ぐと書かれていました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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