文献詳細
特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅱ 体腔鏡下手術 ■後腹膜鏡下根治的腎摘除術
文献概要
Q 後腹膜鏡下根治的左腎摘除術を開始した腎癌の症例。誤って脾臓を損傷してしまった。圧迫や縫合によっても止血できない。
[1]概 説
脾臓は非常にもろく,裂けやすい臓器である。
経腹膜的到達法では,十分に脱転せずに,腎を下方に牽引すると,脾臓にテンションがかかり,脾臓を損傷することがある。後腹膜到達法では,腹膜が介在するため,脾臓を損傷することは稀であるが,あり得ない話ではない。まず,腹膜を損傷しないことと,十分に腎の前面と腹膜の間を展開し,上極の剝離するラインを認識することが,損傷を起こさないために最も大切である。実際に脾臓を損傷した場合,その温存は困難なことが多い。これは,腹腔鏡手術におけるデータではないが,メイヨークリニックにおける13,897例の結腸切除術において,脾臓損傷は59例(0.42%)に起きている。そのうち45例,76%は脾臓摘出に至っている。また,脾臓の釘による貫通損傷において,腹腔鏡下に釘を抜き,凝固で止血し得たケースは症例報告のレベルであることより,脾臓を損傷し,凝固や,サージセルなどで止血し得ない場合は,躊躇せずに脾臓摘出を考慮すべきである。
[1]概 説
脾臓は非常にもろく,裂けやすい臓器である。
経腹膜的到達法では,十分に脱転せずに,腎を下方に牽引すると,脾臓にテンションがかかり,脾臓を損傷することがある。後腹膜到達法では,腹膜が介在するため,脾臓を損傷することは稀であるが,あり得ない話ではない。まず,腹膜を損傷しないことと,十分に腎の前面と腹膜の間を展開し,上極の剝離するラインを認識することが,損傷を起こさないために最も大切である。実際に脾臓を損傷した場合,その温存は困難なことが多い。これは,腹腔鏡手術におけるデータではないが,メイヨークリニックにおける13,897例の結腸切除術において,脾臓損傷は59例(0.42%)に起きている。そのうち45例,76%は脾臓摘出に至っている。また,脾臓の釘による貫通損傷において,腹腔鏡下に釘を抜き,凝固で止血し得たケースは症例報告のレベルであることより,脾臓を損傷し,凝固や,サージセルなどで止血し得ない場合は,躊躇せずに脾臓摘出を考慮すべきである。
参考文献
1)Holubar SD, Wang JK, Wolff BG, et al:Splenic salvage after intraoperative splenic injury during colectomy. Arch Surg 144:1040-1045, 2009
2)Carobbi A, Romagnani F, Antonelli G, et al:Laparoscopic splenectomy for severe blunt trauma:initial experience of ten consecutive cases with a fast hemostatic technique. Surg Endosc 24:1325-1330, 2010
3)Davoodi P, Budde C and Minshal CT:Laparoscopic repair of penetrating splenic injury. J Laparoendosc Adv Surg Tech A 19:795-798, 2009
4)Takaori K and Tanigawa N:Laparoscopic pancreatic resection:the past, present, and future. Surg Today 37:535-545, 2007
5)Ayav A, Bresler L, Brunaud L, et al:Laparoscopic approach for solitary insulinoma:a multicentre study. Langenbecks Arch Surg 390:134-140, 2005
6)Velanovich V:Case-control comparison of laparoscopic versus open distal pancreatectomy. J Gastrointest Surg 10:95-98, 2006
掲載誌情報