文献詳細
特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅱ 体腔鏡下手術 ■腹腔鏡下根治的前立腺摘除術
文献概要
Q 腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を開始した症例。前立腺背面の剝離中に直腸壁を損傷してしまった。術前の腸準備は行ってある。
[1]概 説
腹腔鏡下前立腺全摘除術(laparoscopic radical prostatectomy:LRP)は,2006年に保険適応とされてから急速に普及してきている。この術式の重大な合併症の1つである直腸損傷は海外の報告で0.7~8%の頻度1,2)で生じるとされており,本邦でも日本Endourology and ESWL学会の調査で4.0%に発生している3)。
恥骨後式前立腺全摘除術(retropubic radical prostatectomy:RRP)での直腸損傷は,鉗子やハサミなどの盲目操作で生じることが多いので,2cm以上の比較的大きな直腸損傷が起こりやすいが,LRPでは2cm以下のことが多い。
損傷が起きた場合,術中に発見できるかどうかが重要である。術中に気がつかなければ,術後に腹膜炎で致命的な状態になることもある。そうまでならなくても難治性の尿道直腸瘻を合併したり,人工肛門作成を余儀なくされ,QOLを大きく損ねることになる。術者はもちろん,助手やスコーパーも含めたチーム全体として損傷に注意を払って手術を行う必要がある。
[1]概 説
腹腔鏡下前立腺全摘除術(laparoscopic radical prostatectomy:LRP)は,2006年に保険適応とされてから急速に普及してきている。この術式の重大な合併症の1つである直腸損傷は海外の報告で0.7~8%の頻度1,2)で生じるとされており,本邦でも日本Endourology and ESWL学会の調査で4.0%に発生している3)。
恥骨後式前立腺全摘除術(retropubic radical prostatectomy:RRP)での直腸損傷は,鉗子やハサミなどの盲目操作で生じることが多いので,2cm以上の比較的大きな直腸損傷が起こりやすいが,LRPでは2cm以下のことが多い。
損傷が起きた場合,術中に発見できるかどうかが重要である。術中に気がつかなければ,術後に腹膜炎で致命的な状態になることもある。そうまでならなくても難治性の尿道直腸瘻を合併したり,人工肛門作成を余儀なくされ,QOLを大きく損ねることになる。術者はもちろん,助手やスコーパーも含めたチーム全体として損傷に注意を払って手術を行う必要がある。
参考文献
1)Rassweiler J, Seemann O, Schulze M, et al:Laparoscopic versus open radical prostatectomy:a comparative study at a single institution. J Urol 169:1689-1693, 2003
2)Castillo OA, Bodden E and Vitagliano G:Management of rectal injury during laparoscopic radical prostatectomy. Int Braz J Uorl 32:428-433, 2006
3)田中正利,東原英二,原林 透,他:日本の腹腔鏡下前立腺全摘除術における合併症の調査―日本Endourology and ESWL学会学術委員会報告.Jpn J Endourol ESWL 16:72-77,2003
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