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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻4号

2011年04月発行

特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法

Ⅳ 開腹手術 ■副甲状腺摘除術(上皮小体摘除術)

060 腫大していない副甲状腺をどうするか

著者: 辻畑正雄1

所属機関: 1大阪大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.170 - P.172

文献概要

Q エコーにて2腺の腫大が確認されている続発性副甲状腺機能亢進症に対し,副甲状腺摘除術を開始した症例。腫大している2腺については同定することができ切除したが,残りの正常大の2腺はどうしたらよいか。


[1]概 説

 続発性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺摘除術は大きく分類して,全摘除術(自家移植なし),亜全摘除術,全摘除術後自家移植術が存在する。その中で全摘除術は,再発を防ぐためという理由で報告が散見される。しかし,全摘除術後腎移植術を施行された際に,低カルシウム血症の管理が困難なことや無形成骨が避けられないことが懸念され,本術式を積極的には推奨できないという意見が多い1)

 したがって,現在広く用いられている術式は,亜全摘除術と全摘除術後自家移植ということになる。副甲状腺亜全摘除術は,副甲状腺の4腺ともに腫瘍血管をよく見極めて,最も小さい腺の一部を残して他の3腺を全摘するものである。この場合,残される腺組織は正常副甲状腺1個分に相当するものか,それ以下の大きさにとどめるようにする。全摘除術後自家移植の術式は,副甲状腺4腺すべてを全摘除し,摘除した副甲状腺組織の切片を作製して,これを自家移植する方法である。移植部位としては,前腕筋肉内,上腕筋肉内,腹直筋内,腹部脂肪組織内などが挙げられる。その中で,透析のための内シャントが存在しない前腕,腕橈骨筋内に行うのが通常である。そのうち,前腕筋肉内移植が最もよく行われているが,その理由は,再発時に局所麻酔下で容易に,低侵襲に移植副甲状腺組織を切除可能なこと,さらに左右の肘静脈で採血しPTH値を測定して比較することで,移植副甲状腺機能を把握できる,という利点にある。

 これら両術式において,どちらが優れているかの報告はない。術後の長期間の観察において,再発率が10年で20%前後であり,再発時の残存副甲状腺切除の容易さを考えると,術後も長期間透析を要する症例では全摘除術後前腕筋肉内自家移植のほうが手術的に切除しやすいという意見2)もあれば,1腺がかなり小さい亜全摘施行症例において,10年を超える経過でもカルシウム代謝に配慮した透析を続けていると亜全摘術例での再発に対する再手術例は経験がないとの報告もある3)。ただ亜全摘除術を施行された患者が再発した場合には,反回神経損傷の危険性が高い頸部再開創が不可欠である。われわれの施設では副甲状腺全摘除術後前腕筋肉内自家移植術が基本術式である。

参考文献

1)冨永芳博:透析患者の骨代謝・二次性副甲状腺機能亢進症―外科的治療.透析患者の合併症とその対策 16,83-89,2007
2)冨永芳博,ォM田岡正史,秋澤忠雄。C他:わが国の腎性上皮小体(副甲状腺)機能亢進症に対する上皮小体摘出術の現況.透析会誌 36:1361-1368,2003
3)小出卓生:副甲状腺機能亢進症と骨カルシウム―泌尿器科領域からみた副甲状腺機能亢進症.Clinical Calcium 15:2023-2028,2005
4)Numano M, Tominaga Y, Uchida K, et al:Surgical significans of supernumerary parathyroid glands in renal hyperparathyroidism. World J Surg 22:1098-1102, 1998
5)冨永芳博:PTx後の副甲状腺機能.臨床透析 13:107-113,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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