文献詳細
特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術 ■副甲状腺摘除術(上皮小体摘除術)
文献概要
Q 大きな副甲状腺に対し副甲状腺摘除術を施行した症例。術後,患者が嗄声を訴えるようになった。経過観察しているが,いまだに改善しない。
[1]概 説
副甲状腺摘除術後の嗄声は,片側の反回神経損傷による麻痺で起こる。手術合併症としては比較的稀であり,頻度は1%以下と報告されている1)。しかし,副甲状腺摘除術における重要なポイントは,腫瘍の確実な切除と反回神経麻痺を起さないことにあると考える。
反回神経は迷走神経が胸腔内に入ってから出る枝で,右側は鎖骨下動脈を,左側は大動脈弓を下から後ろに回り,両側とも気管枝,食道枝を分枝しながら気管と食道の間を上行する(図1)。神経の走行には左右差があり,右側では気管から離れて走行し,甲状腺下縁では気管右側縁より約3mm外側のところにある。左側では気管食道溝を気管壁に接して走行している。反回神経の同定は,総頸動脈,下甲状腺動脈,気管外側で囲まれた三角の中で行うのが最も確実である(図2)。この三角部を覆う深頸リンパ節被膜を切開し結合織や脂肪を剝離すると,白い光沢のある太さ1~2mmの反回神経を確認できる。
[1]概 説
副甲状腺摘除術後の嗄声は,片側の反回神経損傷による麻痺で起こる。手術合併症としては比較的稀であり,頻度は1%以下と報告されている1)。しかし,副甲状腺摘除術における重要なポイントは,腫瘍の確実な切除と反回神経麻痺を起さないことにあると考える。
反回神経は迷走神経が胸腔内に入ってから出る枝で,右側は鎖骨下動脈を,左側は大動脈弓を下から後ろに回り,両側とも気管枝,食道枝を分枝しながら気管と食道の間を上行する(図1)。神経の走行には左右差があり,右側では気管から離れて走行し,甲状腺下縁では気管右側縁より約3mm外側のところにある。左側では気管食道溝を気管壁に接して走行している。反回神経の同定は,総頸動脈,下甲状腺動脈,気管外側で囲まれた三角の中で行うのが最も確実である(図2)。この三角部を覆う深頸リンパ節被膜を切開し結合織や脂肪を剝離すると,白い光沢のある太さ1~2mmの反回神経を確認できる。
参考文献
1)冨永芳博,貴田岡正史,秋澤忠雄,他:わが国の腎性上皮小体(副甲状腺)機能亢進症に対する上皮小体摘出術の現況.透析会誌 36:1361-1368,2003
2)牛尾浩樹:癌浸潤せる神経の処理ならびに神経移植.内分泌外科 2:301-307,1985
3)宮内 昭:音声回復のための反回神経再建術.インターメルク,東京,2001
4)八代 亨,原 尚人:反回神経・上喉頭神経損傷.In:内分泌外科―標準手術アトラス.edited by 日本内分泌外科学会.インターメルク,東京,pp138-144,2003
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