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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻4号

2011年04月発行

特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法

Ⅳ 開腹手術 ■副腎摘除術

062 副腎腫瘍からの出血が続く

著者: 五十嵐辰男1

所属機関: 1千葉大学大学院工学研究科

ページ範囲:P.176 - P.178

文献概要

Q 副腎摘除術を開始した褐色細胞腫と思われる副腎腫瘍の症例。副腎腫瘍より出血が続いており,血圧低下が始まった。


[1]概 説

 褐色細胞腫は主に副腎髄質および交感神経節から発生する。臨床的に褐色細胞腫は以下のような特徴を有するので,手術および周術期管理の難易度が高い。

 ①カテコールアミン分泌異常による循環動態の異常を有すること

 ②一般的に循環血液量の低下を伴うこと

 ③腫瘍自体が血管に富み,易出血性であること

 ④周囲との癒着が強固な症例が多いこと

 ①の血中・尿中カテコールアミン高値は,褐色細胞腫の診断根拠となる。①②についてみると,褐色細胞腫は周術期管理が重要であり,術前に交感神経アルファ受容体遮断薬,およびベータ受容体遮断薬などによる降圧と,補液などによる循環血液量の補正が行われる。これにより術中腫瘍ドレナージ静脈の血流遮断によるカテコールアミン量低下によるショックは回避される。一方,手術操作で腫瘍を圧迫することにより,カテコールアミンが血中に放出されるので,このための血圧上昇は常に生じる可能性があり,麻酔科医との連携が重要である。

 ③④についてみると,剝離操作において出血により良好な視野の確保が往々にして困難であること,および癒着による手術時間の延長や周囲臓器損傷の危険を常に伴うことから,手術に際して高度な技量が要求される。

 近年,褐色細胞腫に対する腹腔鏡手術が行われるようになってきている1)。しかし上記のとおり,褐色細胞腫の手術の成否は手術技量に依存するので,術者が得意とする手法を行うべきと考える。

参考文献

1)Ichikawa T, Mikami K, Suzuki H, et al:Laparoscopic adrenalectomy for pheochromocytoma. Biomed Pharmacother 56 suppl 1:149s-153s, 2002
2)Justin S, Wu MD, Shubhada N, et al:Pheochromocytoma presenting as a giant cystic tumor of the liver. Surgery 128:482-484, 2000
3)Misra MC, Aggarwal S, Guleria S, et al:Clipless and sutureless laparoscopic surgery for adrenal and extra-adrenal tumors. J Soc Laparoendosc Surg 12:252-255, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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