icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻4号

2011年04月発行

特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法

Ⅳ 開腹手術 ■腎部分切除術

071 CTで確認した腫瘍が見当たらない

著者: 小原航1

所属機関: 1岩手医科大学大学院医学研究科泌尿器科学講座

ページ範囲:P.200 - P.201

文献概要

Q 腎部分切除術を開始した腎腫瘍の症例。腫瘍は,術前にCTで確認したが見当たらない(埋没型腎腫瘍に対する部分切除方法)。


[1]概 説

 腎細胞癌に対する腎部分切除術は,これまで単腎や腎機能低下症例を中心に適応とされてきたが,腎摘除術と遜色のない部分切除術の長期成績が報告されたことで,対側腎機能に問題のない症例に対しても積極的に施行されるようになり,現在ではT1a腎腫瘍の標準治療となっている1)。さらに,近年の画像診断技術の進歩や検診の普及により偶然発見される小径腎癌症例が増加しており,さらには1~2cm前後の最小径腎腫瘍の発見も増加していることが推測され,実臨床では部分切除術の適応を検討する症例が増えている。

 腎部分切除術後の局所再発率は一般に3%前後とされる。この局所再発や予後に影響する因子は病理学的切除断端陽性であり,これまで10mmのマージンを付けるべきとされてきた。しかし近年では,マージン厚は予後に影響せず,病理学的断端陽性ですら術後の予後には関係ないとの報告もある2)。腎門部あるいは埋没型の深い腫瘍に対する腎部分切除術において,最深部で十分なマージンを取ることは難しい。しかし,このことが癌制御を損ねるものではないことも示している。埋没型の深い腫瘍の場合,正常腎のマージンはわずかで十分である3)とも考えられる。

参考文献

1)Joniau S, Vander Eeckt K and Van Popple H:The indication for partial nephrectomy in the treatment of renal cell carcinoma. Nat Clin Prac Urol 3:198-205, 2006
2)Bensalah K, Pantuck AJ, Rioux-Leclercq N, et al:Positive surgical margin appears to have negligible impact on survival of renal cell carcinoma treated by nephron-sparing surgery. Eur Urol 57:466-471, 2010
3)近藤恒徳:難易度の高い開腹腎部分切除術.Urology View―特集 小径腎腫瘍の診断と治療Update,pp45-51,メジカルビュー社,大阪,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら