文献詳細
特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術 ■根治的前立腺摘除術
099 前立腺表面の静脈を損傷してしまった
著者: 矢野仁1 遠藤匠1 神谷直人1 鈴木啓悦1
所属機関: 1東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科
ページ範囲:P.267 - P.269
文献概要
[1]概 説
前立腺周辺では静脈は動脈とは伴行せずに,発達して表層で静脈叢を形成する。第1層は浅中心静脈で骨盤筋膜の外に出ている。第2層は前被膜静脈と前外側被膜静脈で,これらは合流し,左右の前立腺静脈叢を形成し,筋膜内側にある。やがて,深陰茎背静脈,内陰部静脈と合流する。第3層は前立腺被膜下からの血液を受ける小静脈である(図1)。
筆者らは主に逆行性前立腺全摘を行っており,以下の内容はそれに順ずる。
ツッペルや吸引管などを用いて前立腺周囲の脂肪組織を取り除き,左右の内骨盤筋膜を露出し骨盤筋膜腱弓に沿って,電気メスなどを用いて筋膜を束ねやすいようにスカートのように切開し,前立腺被膜から肛門挙筋を剝離する。この際,前立腺周囲の静脈を損傷して出血をきたし,以後の操作に支障をきたすことがしばしばある。
参考文献
掲載誌情報