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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻5号

2011年04月発行

書評

「標準外科学 第12版」―北島政樹 監修/加藤治文,畠山勝義,北野正剛 編 フリーアクセス

著者: 篠原尚1

所属機関: 1兵庫県立尼崎病院消化器外科

ページ範囲:P.336 - P.336

文献概要

 『標準外科学』を手にするのは3度目になる。最初はもちろん学生時代,第4版であったと記憶している。外科学の最初の講義で教授から推薦され,何の迷いもなく購入した。すでに外科医をめざすと決めていた私は,内科の「朝倉」に比べてあまりにハンディな一冊本であることに多少驚きながらも,こげ茶色の重厚な表紙をわくわくしながらめくったものである。ベッドサイド実習の時期になると,真白い白衣に本書片手の学生たちが外科病棟に設えられた部屋で勉強していた。まさにstandard textbookであった。2度目は第9版,消化器外科学会の専門医試験対策に入手した。表紙こそ紺色を基調としたイラスト入りの斬新なものになっていたが,本文は第4版の頃と変わらぬ安心感のある2色刷りで,懐かしさもあって購入を即決した。専門医試験を受けようとする外科医が学生用の教科書で勉強するのもどうかと思い,同僚には「講義の準備のために買った」ことにしておいたが,卒後十数年の間にいささか偏りすぎた知識の穴を埋めてくれる期待通りの内容で,一気に読んだ。今も医局の書架に居座り続けている。

 さて,このたび改訂された第12版。一段とハンディになった印象で,さてはこちらもゆとり教育で内容が削られたかと心配したが,頁数はほとんど変わっていない。白基調のすっきりした表紙と,使われている上質紙のためだろう。頁をめくると,大きめの文字でいかにも読みやすそうな記述が目に飛び込んできた。繰り返し読むことの多い教科書にとっては,内容はもちろん,「思わず次の頁をめくりたくなるような読みやすさかどうか」ということも重要である。章のタイトルデザインや余白・図版の配置,フォントの統一感などが旧版より洗練され,成功しているようだ。また,従来の教科書は文章の記述が中心で,ともすれば“退屈”な印象が否めなかったが,本版ではその常識を覆すかのように重要な部分が色文字やアンダーラインで強調され,しかも覚えるべきポイントが箇条書きされた「Note」欄が随所に散りばめられている。例えば食道癌の「Note」では病因や疫学,病期分類,転移経路,診断,治療がわずか15行に凝集されている。これで知識を整理した後,本文に戻り再読すれば,より理解が深まるだろう。さらに余白に書き込んでいけばオリジナルの立派なサブノートが完成する。外科学の勉強はそれで十分だろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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