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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科65巻9号

2011年08月発行

雑誌目次

珍しい外陰部疾患・1【新連載】

膀胱外反症

著者: 三木誠

ページ範囲:P.612 - P.613

 胎生期に左右生殖節の癒合が不完全なために起こる膀胱の先天異常である。下腹部正中で腹壁と膀胱壁の一部が欠損しているため,膀胱後壁が飜転し膀胱粘膜面が体表に露出して常時尿失禁がある。膀胱壁が一部露出したのみの軽症から,尿管口が露出し,恥骨解離や尿道上裂を伴う重症のものまでさまざまな程度がある。近年では可及的に膀胱を再建し骨盤内へ戻す努力をするが,膀胱尿管逆流が必発するため,必要に応じそれに対処する手術も行われる。膀胱容量が不十分である場合や括約筋の機能不全がある場合には,やむなく尿路変向術を行う。また男児では尿道上裂以外の陰茎や尿道の奇形を合併する場合もあり,生殖器の再建も必要となることがある。多くは骨盤の恥骨結合が成されないのが特徴で,X線写真を見ると左右恥骨の離開が認められる。さらに膀胱外反に重複尿道が合併しており,背側の尿道は尿道上裂で,腹側の尿道には精丘もあり,正常膀胱頸部を有するような極めて稀な例も最近報告されている(Zeidan S and El-Ghoneimi A. Urol 74:1228-1229, 2009)。

 症例も多くなく,泌尿器科専門医でも一生に1例遭遇するか否かである。本症の形成手術は難しく,できるだけ膀胱を形成し尿失禁のない状態に戻す努力をするが,一次的に成功しないこともある。1978年から2007年の間に一次的手術に失敗し,再縫合手術をした症例122例(男85例,女37例)について,二次的に縫合しその成功率は98%であったというJohns Hopkinsの素晴らしい報告もある(Novak TE, et al. J Pediatr Urol 6:381-384, 2010)。

綜説

腎移植後の悪性腫瘍

著者: 奥見雅由

ページ範囲:P.617 - P.625

要旨 免疫抑制療法や術後管理の進歩により移植腎生着率は向上したが,腎移植後悪性腫瘍の発生頻度は増加してきている。腎移植後悪性腫瘍は,腎不全・免疫抑制・ウイルス感染などとの関連が多いという特徴を有する。発がん頻度が健常者と比較して高率であり,発生傾向が患者背景や環境の影響を受けることなども知られている。本邦での2009年臨床登録集計報告では,腎移植後患者死因として,感染症に次いで悪性腫瘍が第2位であった。長期成績のさらなる向上を目指すためには,その病態を理解してその診断と治療に臨む必要がある。移植前スクリーニングや移植後定期検診は必須であり,通常の抗悪性腫瘍治療に加え,免疫抑制薬の調節などが行われている。

手術手技 指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント・6

膀胱尿管逆流症に対する逆流防止術

著者: 山口孝則 ,   鯉川弥須宏 ,   此元竜雄

ページ範囲:P.627 - P.632

要旨 膀胱尿管逆流に対する逆流防止術であるCohen法について,手術のポイント,コツについて論述した。VUR防止術を円滑な流れを持って的確に,かつ短時間で終えるコツは,①膀胱三角部の手術野を展開する工夫,②尿管剝離に際し尿管外膜と膀胱筋層との正しい剝離面で十分な長さに行うこと,③粘膜下トンネル作成の際に正確な粘膜下・膀胱筋層上を円滑に掘り進むことである。こうした点に留意すれば,本術式は合併症もなく安全確実に施行できる。

膀胱尿管逆流症に対する逆流防止術(開腹術)

著者: 坂井清英

ページ範囲:P.635 - P.645

要旨 小児膀胱尿管逆流症vesicoureteral reflux(VUR)に対する逆流防止術としては,現時点で本邦においては開放手術が一般的に行われていて手術成績も非常に良好である。しかし,最近ようやく認可されたデキストランとヒアルロン酸の共重合体充塡物質(Deflux®)を尿管口あるいは尿管内へ注入する内視鏡手術が拡がると開腹手術は減少していくことが見込まれる。逆流防止術では,基本的に粘膜下トンネルを作成するという根本原理には変わりないが,最近では手術手技のみでなく,使用する吸収糸,カテーテル,被覆材,手術用器械や,術者用の手術ルーペの導入など,さまざまな点において工夫や改良が加えられた結果,手術切開線の短縮,手術成績の向上,合併症の発生率低下,術後の患児の苦痛の軽減,入院期間の短縮などにつながってきた。このような工夫の積み重ねを若い医師達に伝承しておくことが大切である。

膀胱尿管逆流に対する逆流防止術

著者: 兼松明弘 ,   今村正明 ,   吉村耕治 ,   小川修

ページ範囲:P.647 - P.653

要旨 膀胱尿管逆流症(VUR)に対する逆流防止術は小児の開腹手術の中でも頻度が高く,下部尿路再建術の基本型として一般泌尿器科医も必ず経験するべき定型的術式である。当科での指導ポイントは,手術メンバーが適応と術式を手順マニュアルとビデオにより術前に十分に予習して手術に臨むことである。術中はカメラモニターによる術野情報の共有により,必要最小限の創長で各種レベルの教育と手術の記録を行っている。

書評

「泌尿器科レジデントマニュアル」―郡 健二郎 監修/佐々木昌一,戸澤啓一,丸山哲史 編 フリーアクセス

著者: 藤岡知昭

ページ範囲:P.633 - P.633

 小生は,聖路加国際病院の卒後臨床研修に進みましたが,先輩のレジデントは,常に『ワシントン大学マニュアル(Manual of medical therapeutics 20th edition. Department of Medicine, Washington University School of Medicine)』を携帯・使用していました。例にもれず小生もその本を入手・愛用し,現在もボロボロの状態ですが本箱の片隅で健在です。この本には,泌尿器科に特化する記載はほとんどありませんが,泌尿器科の日常診療において遭遇する問題点の対処・解決に強力な手助けとなりました。すなわち,専門領域を超えて共通の課題に対して基盤となる知識,対処,救急処置が簡潔に記載されているのです。

 今回,郡 健二郎教授監修の『泌尿器科レジデントマニュアル』の書評の依頼を受け,読み始めの第一印象は,先に述べた『ワシントン大学マニュアル』と同じ香りを感じました。本書では,各疾患ガイドラインやマニュアルを使用する場合にしばしば遭遇する弊害であると指摘されていた問題点,すなわち,文字や図表のみを追い,その背景にある事柄を理解しないという点を危惧し,医師として必要な思考力,観察力,洞察力の養成について配慮するという意図をもって企画・編集されたことがわかります。また,泌尿器科領域の診療に関して,基礎知識から処置・トラブル対処法,検査法,症状・症候から診断へ,疾患,全身合併症と周術期管理,代表的手術と周術期管理,さらには泌尿器科に関わる緩和医療まで,整理された必要な項目について実践的かつ簡潔に記載しています。

「プロメテウス解剖学アトラス コンパクト版」―坂井建雄 監訳/市村浩一郎,澤井 直 訳 フリーアクセス

著者: 埴原恒彦

ページ範囲:P.654 - P.654

 解剖学の初学者にとって,用語の暗記はいつも重くのしかかる。解剖学は暗記ではなく理解する学問であるという言葉は,教える側の常用句であるが,それ以前に基本的な解剖学用語は覚えておかなければ,理解の段階までいかないのである。ゲームでいえば,そのゲームが面白いか面白くないか,どうしたら勝てるのかなどを理解する前に,まずはルールを覚えなければ何も始まらない。ゲームであろうが勉強であろうが,それを理解し発展させるための第一歩は,多くの場合,砂を噛むような思いも伴う。

 解剖学は近代医学として最初に確立され,ヴェサリウス以降400年以上にわたり蓄積されてきた知識体系があり,したがって,その用語も膨大な量である。初めて解剖学を学ぶ医学生の多くはその量の多さに圧倒され,最初から消化不良を起こす。分厚い,何分冊かの解剖の教科書,アトラス,あるいは解剖学用語といった本を前に,医学生が何から手をつけたらよいのか呆然としてしまうのは,むしろ当たり前であろう。

「病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方―IDATEN感染症セミナー」―IDATENセミナーテキスト編集委員会 編 フリーアクセス

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.663 - P.663

 IDATEN(Infectious Diseases Association for Teaching and Education in Nippon)こと日本感染症教育研究会から『病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方』が出版された。待ち望まれた内容が記述・編集され,時宜を得た出版である。

 医学の進歩は著しく,この四半世紀を検証しても,特に治療における恩恵には目をみはるものがある。腫瘍性疾患,自己免疫性疾患,移植医療,クリティカルケアにおいて,以前には想像もできなかった病態の改善が得られている。しかし,この恩恵の背後には,時に想定していなかった新たな病態が潜んでいることがある。新薬の副作用,そして感染症,特に病院内/免疫不全関連感染症である。これは医学の進歩に常につきまとう普遍的な現象ともいえよう。

「泌尿器科診療ガイド」―勝岡洋治 編 フリーアクセス

著者: 力石辰也

ページ範囲:P.694 - P.694

 臨床医であれば誰しも,診療の途中やカンファレンスの時に,最新の情報を調べたり確認したりしたいと思ったことがあるはずである。そのようなときに皆さんはどうしておられるだろうか? 一般には教科書やガイドライン集を外来やカンファレンスルームに常備しておいたり,インターネットへのアクセスが可能なコンピューターを設置したりして対応しているものと思われるが,欲しい情報がすぐに手に入るとは限らないため,イライラした経験をお持ちの方も多いと思う。

 このたび刊行された,勝岡洋治先生編集の『泌尿器科診療ガイド』は,このようなイライラを解消してくれる,重宝な1冊である。その特徴は,図表やアルゴリズムが多用されて分かりやすいこと,疾患の概念は簡潔な記述にとどめ,各種ガイドラインに準拠した治療法の説明に重点が置かれていること,そして何よりも最新の情報が収載されていることである。執筆者は第一線で活躍する若手の有力者が多い。例えば腎癌の分子標的治療薬の項目では,現在日本で入手できるスニチニブ・ソラフェニブ・エベロリムス・テムシロリムスの4剤について,どの薬剤を選択するかの目安の図が示されているとともに,主な標的分子・剤形・含有量・用法・用量・減量の方法・副作用が一覧表になっており,大変実践的である。Side memoとして提供されている副作用対策も臨床ですぐに役立つ情報である。

セミナー 基礎研究は面白い―私の体験・2

目指せ泌尿器科physician-scientist

著者: 白石晃司

ページ範囲:P.657 - P.662

要約 Physician-scientistという立場は臨床医に与えられた特権である。臨床からの疑問に基づき実験を行い,その結果を病態の理解や診断,治療にフィードバックし,新たに生じた問題点や疑問に基づいて実験を行うといったクロストークが求められる。多忙な日常臨床において,基礎実験を行うにあたっては予定している実験のレベルにもよるが時間の確保は最重要課題であり努力を要すが,臨床からの基礎実験へのmotivationがあれば十分に克服できると考えられる。

症例

右腎摘,部分切除後に再部分切除術を施行した再発性腎癌

著者: 柏木文蔵 ,   坂本亮一郎 ,   斉藤佳隆 ,   内田達也 ,   竹澤豊 ,   小林幹男

ページ範囲:P.667 - P.671

症例は52歳,女性。2002年12月に右腎細胞癌に対し右根治的腎摘除術。2005年12月に左肺転移に対し左肺部分切除術。2008年5月に左腎細胞癌に対し,左腎部分切除術を施行。2008年11月にCTで左腎上極に10mm大の腫瘤を認め,画像診断にて再発を疑われた。2009年3月にCT再検で上記腫瘍のほかに左腎中-下極にも10mm大の腫瘤を認めたため,2009年4月に左腎部分切除術を施行した。計3個の腫瘍を摘出した。病理診断で,3個すべての腫瘍が腎細胞癌淡明細胞癌であった。

腎細胞癌に対する根治的腎摘除術後に発生した残存尿管腫瘍

著者: 池田健一郎 ,   望月英樹 ,   後藤景介 ,   石田吉樹 ,   小深田義勝 ,   台丸裕

ページ範囲:P.673 - P.675

症例は87歳,男性。1999年11月,右腎細胞癌(T3bN0M0)に対して根治的右腎摘除術を施行。2006年10月,肉眼的血尿が出現し,精査の膀胱鏡にて右尿管口より乳頭状腫瘍の突出を認め,腫瘍生検の結果,尿路上皮癌,G2であった。残存尿管腫瘍の診断で,11月残存尿管摘出術を施行。術後膀胱内再発に対しテラルビシン膀胱内注入療法を行い,再発を認めなかったが術後34か月後に他因死した。

画像診断

膀胱粘膜下腫瘍が疑われた恥骨結合骨膜病変

著者: 京野陽子 ,   高山達也 ,   大園誠一郎

ページ範囲:P.676 - P.679

 患 者 53歳,女性。

 主 訴 残尿感。

 既往歴 アトピー性皮膚炎。

 現病歴 2008年5月より残尿感がときどき出現し,膀胱炎と診断され抗生剤を繰り返し投与されていた。しかし,症状の改善がなく,2009年6月当科を初診した。

小さな工夫

「時計法」によるLH-RHアゴニスト皮下注射の簡単な部位決定

著者: 甲斐文丈 ,   神林知幸

ページ範囲:P.681 - P.681

 泌尿器外来では,前立腺癌の内分泌療法薬であるLH-RHアゴニスト(酢酸リュープロレリン,酢酸ゴセレリン)製剤の皮下投与を頻繁に行う。基材に乳酸重合体を含む両剤は,時に注射部皮膚の硬結・疼痛・発赤をきたす。

 これらの予防のため,われわれ泌尿器科医はなるべく脂肪の多い前腹部(臍周囲)を注射部位として選択し,かつ同一部位への連続投与は避ける,といった点に留意している。そのため,注射した部位をカルテに記録(臍の上下左右と記載,またはゴム印などで部位を図示)しているが,多忙な外来診療においては,時に煩雑である。

高度血尿時の軟性膀胱鏡の工夫

著者: 澁谷忠正 ,   三股浩光

ページ範囲:P.682 - P.683

 軟性膀胱鏡の灌流は通常生理食塩水を用いて行っているが,流量が少なく血尿が強い場合は視野が悪くなり十分な情報が得られにくい1)。用手膀胱洗浄に切り替えて凝血塊を除去したり,血尿の程度がおちついて膀胱鏡を行ったりすることがある。しかしながら,血尿がおちついてからでは左右どちらの上部尿路からの出血だったか確認ができないことがある。右腎動静脈奇形からの高度出血症例に対して,部位診断のために軟性膀胱鏡を施行した際に空気を貯留することで良好な視野となり部位診断を行うことができた。高度出血時に膀胱内に空気を貯留することは軟性膀胱鏡での視野を確保するのに有用な可能性があるため,今回経験した症例も交えて報告することとした。

 症例は21歳女性で,突然の肉眼的血尿を主訴に前医を受診し,右腎動静脈奇形が疑われ加療目的で紹介入院となっていた。紹介後,造影CTやドップラーエコー,血管造影を施行したが右腎動静脈奇形を疑うような所見はなく(図1),その他尿路に出血をきたす原因もみつからずに退院予定となっていた(膀胱鏡,尿管鏡などの検査は学校の休みを利用して行う予定としていた)。ところが,退院当日に高度な血尿をきたしたので,出血部位を確認するため軟性膀胱鏡を施行した。しかしながら,1時間でヘモグロビン2g/dlの低下をきたすような高度な血尿であったため,用手膀胱洗浄を行っても追いつかず,当然のことながら生理食塩水で灌流して軟性膀胱鏡を行っても膀胱内の視界は不良で,出血部位の同定はできなかった。そこで,膀胱内を空虚にした後に膀胱内に150~200mlほどの空気を入れ膀胱を膨らますと,視界は良好となり,右尿管口から血尿が出ているのが確認できた(図2)。液体は空気の中に入れず,空気で膀胱内を満たすことで液体が膀胱内に広がるのを防ぎ,視野を確保できたと考えられた。

学会印象記

「第26回欧州泌尿器科学会(26th Annual EAU Congress)」印象記

著者: 本郷文弥

ページ範囲:P.684 - P.686

 2011年のEAU年次総会は,早春の3月18日~22日にかけてオーストリアのウィーンで開催されました。東日本大震災の直後でしたが,われわれ,京都府立医大からは計6名が学会に参加しました。しかし,日本での震災被害状況が大変気になる中での出国となりました。関空からはヘルシンキ経由でウィーンに入りました。航空会社はFIN AIRでしたが,機内は薄いブルーとグレーの落ち着いた感じで,飛行時間も比較的短く,快適に過ごすことができました。

 学会場はAustria Centre Vienna(ACV)で,市街地から地下鉄で数分の便利なところにあるコンベンションセンターでした。また,主催者側の発表によれば出席者は13,000人であったとのことです。ただ,震災の直後ということもあり,残念ながら日本からの出席者は少ない印象でした。そして,こころなしか中部,関西以西の先生方を多くおみかけしたように思いました。また,日本からの演者に対しては,座長から「大変な中,よく来ていただいた。心よりお見舞い申し上げる」との言葉がしばしば聞かれました。

「第99回日本泌尿器科学会総会」印象記―がんばらない けど あきらめない―

著者: 菅野ひとみ

ページ範囲:P.688 - P.689

 2011年4月21日~24日まで,第99回日本泌尿器科学会総会が開催された。3月の日本全体をゆるがす大震災の後,開催の実施さえ危ぶまれたにもかかわらず,盛大に敢行され無事終了する結果に多くの方々が感動を覚えたことだろう。実際,一部外者にすぎない私も,開催決定の通知をいただくまではこう思っていた。「恐らく今回は中止だろう。著名人の座談会,医学歴史館,医道白寿企画,フロンテイア企画,未来講演など,独創性に富む企画が多いだけに,なんと残念なことだろう」と。ところが開催されると知り,今度は逆に心配になった。「大丈夫なのだろうか。東北の先生方の多くは来られず,演題取り下げが続出するのではないだろうか。海外から講師の先生ははたして来てくださるであろうか」と。いずれにせよこれまでの名古屋市立大学の先生方の準備のご苦労が報われなくなってしまうのではないかと,心が滅入った。しかし,学会長の郡 健二郎先生が同門の東北地方の先生方とよくよくご相談され,大学はじめ各方面の関係者と十分に検討協議され,リスクはもちろんご承知のうえでの勇気あるご決断だったろうと推察した。深く頭が下がる思いだった。このたび,「総会印象記」を執筆させていただくことになったが,残念ながら多くのプログラムを聴講することができなかったので,私の関わった部分のみについて書かせていただこうと思う。

 昨年秋,私のところへ「めざせ! 泌尿器科の星 活躍する女性医師」のセッションへの参加依頼の手紙が届いた。素晴らしいお人柄とうかがいながら,直接の面識はなかった郡教授からであった。非常に光栄なことと思いながらも,当初の自分に与えられたお題が「家事と部長職の両立」であったので,正直どうしたらよいものかと天を仰いだ。両方とも完璧とは程遠い自分には,もっとも苦手な話題だった。

「第99回日本泌尿器科学会総会」印象記

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.690 - P.692

 今回,第99回泌尿器科学会の印象記の執筆依頼をいただきました。通常は,会長の先生が執筆されるのではないかと思っていましたが,私への依頼は,東日本大震災のこともあり,山形の私が名古屋市立大学の郡教授より,特にご推薦いだいた結果であることがわかりました。そのこともありまして,今回の印象記の内容は,いくつかの理由から,通常の印象記とは少し異なることをご容赦いただきたいと思います。

交見室

根治手術vs機能温存手術

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.693 - P.693

 過日,名古屋市で開催された第99回日本泌尿器科学会総会(会長:郡 健二郎教授)で,ディベート企画「根治手術vs機能温存手術」が行われました。会場は満席で立ち見がでるほどに盛況で,会員の皆さんの関心の高さをうかがい知ることができました。しかし,時間の制約もあり,十分な議論ができず争点を浮き彫りにできなかったのではないかとの思いが残り,座長として責任を感じています。そこで,事前の打ち合わせ会での楽屋話も含めて,Take home messagesを作成してみました。

 今日,悪性腫瘍に対する外科療法の到達目標は,根治性を担保し同時に対象臓器あるいは隣接する組織の形態と機能をできるだけ温存することです。しかし,根治性を徹底追及すると機能を犠牲にせざるを得ないという事態に遭遇します。そして,機能温存手術の長期予後については科学的根拠に乏しく,その実施には技術上の制約があります。

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.615 - P.615

お知らせ 千里ライフサイエンス技術講習会(第54回)「クロマチン免疫沈降法」 フリーアクセス

ページ範囲:P.697 - P.697

1.日時・場所

 講義:2011年9月26日(月)13:00~16:50

    於 千里ライフサイエンスセンタービル(北大阪急行千里中央駅徒歩5分)

 実習:2011年9月27日(火) 9:30~16:00

    於 大阪大学大学院理学研究科(大阪モノレール柴原駅徒歩10分)

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.701 - P.701

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.702 - P.702

著作権譲渡同意書 フリーアクセス

ページ範囲:P.703 - P.703

編集後記 フリーアクセス

著者: 大家基嗣

ページ範囲:P.704 - P.704

 個人的に経験した内容がテレビなどで紹介されると何とも言えない感慨が湧きます。紹介された内容が自分の経験以上に踏み込んで取材されていたので,追体験したくなってきました。2月号の編集後記で暗渠を辿った経験をお話しました。原宿から渋谷に向かって歩いて開渠(暗渠が地上に現れる場所)を見付けた体験でしたが,NHKの番組ブラタモリではこの渋谷の開渠から出発して暗渠を辿っていました。つまり,私と逆方向に同じ道を辿りながらタモリ氏一行は源流である新宿御苑に向かいます。暗渠の上を走る道が直角に折れ,とうとう新宿御苑に辿りつくところで,タモリ氏は塀を乗り越えます。新宿御苑の中を覗き込むと,鬱蒼とした深い木立の中にわき水を見付けました。「生きていると良いことがある」とは見付けたときのタモリ氏の弁です。ワクワクしながら番組を見て,「よし,今度行ってみよう」と意気込んだのですが,「まてよ,この直角に折れ曲がった道は見覚えがあるな」と感じました。実は私が毎日の通勤で通っている道でした。

 新宿御苑を千駄ヶ谷口から入場し,わき水の場所から直角の道を眺めました。自分が毎日通っている道です。さっき通ってきたこの道を歩く人は誰もいませんでした。塀に向かって明るい光が差し込んでいるせいで線が引かれたように陰が道を分断していました。こうして眺めると,その道を歩いている自分の幻影を見るような,主体と客体が入れ替わり,鏡の向こう側から自分を見るような感覚におそわれました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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