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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科66巻10号

2012年09月発行

雑誌目次

知っていると役立つ泌尿器病理・6

症例:60代・男性

著者: 清水道生

ページ範囲:P.715 - P.718

症例:60代・男性

 検診にてPSAが12.4ng/mlであることを指摘され,当院を受診した。前立腺生検の結果,根治的前立腺全摘術が施行された。切除された前立腺で認められた組織像を図1~3(それぞれ弱拡大,中拡大,強拡大)に示す。

 1.病理診断は何か。

 2.鑑別診断は何か。

綜説

腎移植ドナー・レシピエントにおける感染症のマネジメント

著者: 力石辰也

ページ範囲:P.723 - P.732

要旨 腎移植後の感染症は,移植腎の生着率に影響を与えるばかりでなく,重篤な場合にはレシピエントの生命に危険をもたらすので,腎移植に携わる泌尿器科医は感染症について十分な知識を持たなければならない。腎移植における感染症のコントロールは,①ドナーの潜在的な感染症を持ち込ませないこと,②レシピエントの潜在的な感染症を移植前に治療しておくこと,③レシピエントにはワクチン接種を術前に確実に行うこと,④腎移植後の時期によって,起こりやすい感染症を認識し,予防または早期診断・早期治療に務めることが重要である。

書評

「WHOをゆく―感染症との闘いを超えて」―尾身 茂 著 フリーアクセス

著者: 堀田力

ページ範囲:P.733 - P.733

 読みはじめたら止まらなくなった。そこらの小説より,ずっと面白い。

 「医学」という言葉の人間味に魅かれて医学を志した筆者は,「地域医療」という言葉にひかれて自治医科大学に進み,離島勤務を経て,WHO(世界保健機関)に飛び込む。

「今日の救急治療指針 第2版」―前川和彦,相川直樹 監修/杉本 壽,堀 進悟,行岡哲男,山田至康,坂本哲也 編 フリーアクセス

著者: 平出敦

ページ範囲:P.742 - P.742

 本書は,初版から15年の間使われてきた『今日の救急治療指針』の改訂版である。救急医学は,少子高齢化,産業構造の変化,交通安全社会の構築といった社会の構造変化の大きなうねりの中で,急速に変貌しつつある。

 かつて救急医学が,重症救急患者や外因性救急を主な対象として組み立てられていた時代から,内因性の疾病を中心に多様な救急医療ニーズの増大に対応できる効率の高い組み立てが注目されるようになってきた。したがって,こうした多様な領域で,エビデンスに基づいた系統的な診療モデルに基づき,どんな医師でも確実な初期治療ができることが求められるようになってきた。

「帰してはいけない外来患者」―前野哲博,松村真司 編 フリーアクセス

著者: 大橋博樹

ページ範囲:P.752 - P.752

 私が初期研修を行った武蔵野赤十字病院の救急外来には1冊のノートが置かれていた。そこには研修医たちがおのおのの救急外来当直で経験したちょっとした診療のコツや,変わった風貌の患者さんのこと,そして信頼できる仲間にだからいえる失敗談などが赤裸々に書いてあった。もちろん,そのころから「○○マニュアル」と呼ばれる救急外来で用いるツールはあったが,正直どれも「理想的な検査や治療」が書かれているものが多く,いつのまにか白衣のポケットの中で擦り切れていたのを覚えている。やはり,現場で最も使えるのは同じ仲間・同じ悩みを持った人たちが書いている診療のポイント集であり,つまずきやすい場所もあえて記載してあるのが,妙に親近感がわくのである。

 本書を初めて手にしたとき,あのときのノートの印象がよみがえった。

手術手技 指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント・13

腎移植術

著者: 西岡伯

ページ範囲:P.735 - P.741

要旨 筆者らが行っている腎移植術の手順と,その手技ごとのポイントを解説した。手技は術野の展開,血管の剝離,血管吻合,尿管膀胱吻合に大別した。解剖を熟知し良好な視野を展開し,血管の準備や吻合にはいくつかのバリエーションがあることを理解しておく。血管吻合は正確でかつ迅速な操作が求められる。膀胱外操作での尿路再建は利点が多い。

腎移植術

著者: 佐藤滋

ページ範囲:P.745 - P.751

要旨 移植術には多くのポイントが存在する。小さなミスが,重大・重篤な結果を引き起こす可能性が潜んでいる。本稿では①すみやかで十分な冷却灌流,②血管内皮,特に動脈内皮に対する愛護的な操作,③尿管膀胱新吻合における3cmの粘膜下トンネルの作成,に重点を置き解説する。さらに,血管形成術,腸骨血管剝離などについても追記する。

腎移植術

著者: 佐々木秀郎 ,   力石辰也

ページ範囲:P.753 - P.758

要旨 当院で行っている腎移植の術式および注意すべきポイントについて概略した。

セミナー テストステロンを再考する・4

老年医学からみたテストステロン

著者: 秋下雅弘

ページ範囲:P.761 - P.765

要約 高齢男性のテストステロン分泌低下は,心血管病や認知症,ADL低下,死亡の要因となる点が老年医学的に重要である。一方,テストステロン補充療法の効果は,健常高齢男性に対しては体脂肪減少・筋肉量増加など限定的であるが,要介護高齢男性に対しては機能改善効果など多面的効果が期待される。テストステロンの老化予防効果についても研究成果が出つつあり,老年医学分野でのテストステロン研究の進展が待たれる。

原著

精巣胚細胞腫瘍の予後不良群における治療成績

著者: 堀淳一 ,   北原克教 ,   玉木岳 ,   本谷匡 ,   岩田達也 ,   倉達彦 ,   井内裕満 ,   柿崎秀宏

ページ範囲:P.769 - P.773

【目的】予後不良群精巣胚細胞腫瘍の治療戦略を検討する。【対象と方法】1989年から2011年の間に,当院では59名の胚細胞腫瘍を経験した。これらのうち,10名がIGCCCのpoor prognosisに相当した。この10名の治療経過および転帰を後ろ向きに検討した。【結果】年齢は中央値35歳,観察期間は中央値88か月であった。臨床病期は,stage ⅢB2が2例で,stage ⅢCが8例であった。6例で残存腫瘍切除を施行したが,すべて腫瘍マーカーが陰性化した後での手術であった。病理組織所見がfibrosis/necrosisであった3例はすべて生存している。10例の5年全生存率および疾患特異的生存率は80%であった。【結論】症例数は少ないが,当科における予後不良群の精巣胚細胞腫瘍の治療成績は良好であった。今後さらなる治療成績の向上を目指すには,導入化学療法中の腫瘍マーカー半減期不良例に対する早期救済化学療法の導入や,救済化学療法での超大量化学療法などにつき検討する必要があると思われる。

神経疾患に伴う過活動膀胱(OAB)と認知機能に対するイミダフェナシンの安全性と効果

著者: 榊原隆次 ,   舘野冬樹 ,   矢野仁 ,   高橋修 ,   杉山恵 ,   尾形剛 ,   治田寛之 ,   岸雅彦 ,   露崎洋平

ページ範囲:P.775 - P.781

 過活動膀胱(OAB)と認知症は高齢者の生活の質を低下させるものであり,社会的な関心が高い。一方近年,抗コリン薬による認知機能低下が懸念されている。われわれは,神経疾患に伴うOABを有する患者62名を対象に,イミダフェナシン0.1mgを1日2回,3か月間投与し,OABおよび認知機能(MMSE,FAB,ADAS-cog)に及ぼす薬剤の影響を評価した。その結果,イミダフェナシンは,認知機能を増悪させることなくOAB症状を改善した。また,同意の得られた35名に尿流動態検査を実施し,膀胱容量の増加を確認した。イミダフェナシンは神経疾患に伴うOABに対して,中枢副作用の面から安全に使用できる薬剤と考えられた。

症例

水腎症を繰り返し発症した尿路真菌球症

著者: 飯尾浩之 ,   佐々木豊和 ,   宮内勇貴 ,   丹司望 ,   寺戸隆 ,   松本充司

ページ範囲:P.783 - P.785

60歳男性,インスリン依存型糖尿病の合併あり。発熱のため近医を受診,右水腎症を指摘され,近医泌尿器科を紹介された。尿路真菌球症と診断され,ダブルJステント留置と抗真菌薬内服でいったんは軽快したものの,再び右水腎症と腎盂腎炎を発症した。保存的治療で軽快しないため,当科を紹介された。尿管鏡下,生理食塩水による洗浄とバスケットカテーテルによる摘出,さらに術後抗真菌薬内服により,尿中真菌は陰性化した。

異食症に伴う巨大な便塊に惹起された尿閉

著者: 澤田康弘 ,   加藤忍 ,   森紳太郎

ページ範囲:P.787 - P.789

症例は32歳男性,尿閉を主訴に受診,精神発達遅滞,異食症,てんかんを合併していた。腹部CTでは直腸内に巨大な便塊と異物を認め,膀胱は圧排され右側方に強く偏位していた。下剤,浣腸により多量に排便,その後の腹部CTでは便塊は消失し,膀胱圧迫所見も消失,自排尿可能となった。本症例は直腸内の巨大な便塊が膀胱を圧排することで尿閉をきたしたと推測された。

画像診断

超高齢女性に発生した巨大膀胱結石

著者: 窪田裕樹 ,   山田泰之

ページ範囲:P.790 - P.792

 患 者 91歳,女性。

 主 訴 食欲不振。

 既往歴 右大腿骨頸部骨折(2007年)。

 現病歴 4年前の大腿骨骨折以来寝たきりの生活となり,自宅で介護を受けていた。2011年2月,食欲不振を主訴として他院内科を受診した際に両側水腎症と左腎結石・膀胱結石を認められた。発熱はなかったが著明な膿尿が認められ,血液生化学検査によりWBC 11,800/μl,CRP 11.3mg/dl,s-Cre 3.7mg/dlと高値を認めた。以上から,結石による腎後性腎不全と腎盂腎炎の併発と診断され,同日緊急入院となった。尿道バルーンカテーテル留置と抗生剤(TAZ/PIPC)投与により全身状態が改善したのちに,手術目的で当科へ転院となった。

小さな工夫

皮膚切開におけるアドレナリン加リドカインによる局所麻酔

著者: 古野剛史 ,   飴田要

ページ範囲:P.793 - P.793

 当院では腹腔鏡手術,腹腔鏡下小切開手術,経皮的尿路結石破砕(PNL)など,鏡視下手術を多く行っている。低侵襲手術としてだけではなく,創をめだたなくするため皮下埋没縫合を行っている。われわれは手術時の切開創の出血を抑えよりきれいな創縁を保つためアドレナリン加リドカイン局所麻酔を使用しており,方法,利点について報告する。

 方法 小切開手術の場合は7cmの創に対して5~10mlの20万倍アドレナリン加1%リドカインを皮下注射する。腹腔鏡ポートもしくはPNLの穿刺ラインについては,筋層から皮下にかけて3~5ml局注する。その後の皮膚切開は通常通りメスにて行う。

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.721 - P.721

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.797 - P.797

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.798 - P.798

著作権譲渡同意書 フリーアクセス

ページ範囲:P.799 - P.799

編集後記 フリーアクセス

著者: 郡健二郎

ページ範囲:P.800 - P.800

 オリンピックが始まって1週間。さすがは超一流選手だと思うことがしばしばあった。子供の頃から1つのスポーツに打ち込み,辛酸をなめることが多かったためであろう。その道を極めた選手から,私たち医療人は学ぶべきことは多い。その観点から,オリンピックを捉えてみたいと思う。

 「オリンピックは参加することに意義がある」とはいうものの,やはり勝負にはこだわりたい。勝敗を決めるのは実力だけではなく,「本番に強いこと」である。成績が上がってくると,周囲からの期待が高まり,緊張が増してくる。つい欲が出てミスを犯してしまう。日頃の実力をだすといえば「手術」も同じである。そのための秘訣は,周到な準備,日々の修練,イメージトレーニング,集中力,謙虚さ,そしてなりよりも実力以上に自分をみせようとしないことだと思う。医療は命がかかっている。過度の緊張と過信は禁物だ。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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