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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科66巻11号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 古くて新しい前立腺炎の臨床

企画にあたって フリーアクセス

著者: 高橋聡

ページ範囲:P.811 - P.811

 まさに「前立腺炎」は,古くて新しい疾患であり,古くから現在まで,泌尿器科医にとって悩ましい疾患である。泌尿器科医にとってわかっているようでわかっていない疾患であると思われるが,最新の研究結果も含めて知識を整理することは,本疾患を理解するうえで欠かせない。そこで,この企画を立案するにあたっては,筆者の先生方に最新の研究結果の解説と,さらに,「臨床現場でいかに対処すべきか」という点を強調していただいた。この企画が,臨床現場で少しでもお役に立てることができれば幸甚である。

 前立腺炎の分類については,臨床の目線で解説をしていただいた。「急性細菌性前立腺炎」は,泌尿器科領域では重症感染症と考えられるが,現状では耐性菌を念頭においた治療が必要であり,臨床現場で活用すべき治療の解説をしていただいた。重症化する症例を見極めることが対応としては重要であるが,さまざまな因子による判断が可能となれば,臨床現場で大いに役立つ。その可能性について提案していただいた。「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群」は,古くから難治性の症例ヘの対応が悩ましい疾患である。ただ,最新の研究結果がいくつも示されている。執筆される先生方には,病因,診断,治療に関して,臨床現場で活用ができる解説をお願いした。さらに,本疾患がある意味除外診断として診断される性質のものであることを考慮し,他の症状や疾患について見逃さないための解説もお願いした。

前立腺炎の分類

著者: 田中一志 ,   藤澤正人

ページ範囲:P.813 - P.815

要旨 前立腺炎の分類はDrachらによる急性細菌性前立腺炎,慢性細菌性前立腺炎,非細菌性前立腺炎,前立腺症と4病態に分けた方法が用いられていたが,その後カテゴリーⅠからカテゴリーⅣまでのNIH分類が国際的に広く採用されるようになり,現在はこの分類が研究,実臨床にも用いられている。本稿では,このNIH分類を中心に前立腺炎の分類について解説する。

急性細菌性前立腺炎の診断と対応

著者: 矢澤聰 ,   金尾健人 ,   本郷周 ,   大家基嗣

ページ範囲:P.817 - P.822

要旨 急性細菌性前立腺炎の主な起因菌はグラム陰性桿菌,中でもE. Coliが大半を占め,淋菌,クラミジアは稀である。急性発症の局所症状(膀胱刺激症状,排尿困難感,頻尿,尿意切迫感など)と全身症状(倦怠感,嘔気・嘔吐,悪寒・戦慄など)を呈し,尿検査で白血球尿,細菌尿を認め,直腸診で圧痛,熱感,腫脹を認めることが多い。経直腸的前立腺超音波検査は前立腺膿瘍の除外に有用である。一方,前立腺マッサージは敗血症を惹起することがあるので禁忌である。経直腸的前立腺生検後の急性細菌性前立腺炎は,自然発生の群と比較して高齢で,前立腺体積が大きく,治療抵抗例が多いので注意が必要である。

急性細菌性前立腺炎の治療

著者: 山本新吾 ,   東郷容和 ,   鈴木透

ページ範囲:P.825 - P.829

要旨 急性細菌性前立腺炎の治療には,軽症例においては経口フルオロキノロンを,重症例においては十分な補液とともに第2~3世代セフェム系薬の静脈投与が推奨されている。不十分な治療では再発をきたしやすく,解熱した後も計2~4週間の抗菌薬治療が必要である。糖尿病や免疫不全などの全身性疾患,前立腺肥大症や神経因性膀胱などの尿路合併症があれば,同時に治療を行う必要がある。多量の残尿を伴う下部尿路通過障害をきたしている症例においては,膀胱瘻の造設または可能な限り細径の尿道カテーテルを使用する。前立腺膿瘍は,稀ではあるが迅速かつ確実な対応が望まれる。広域スペクトルの抗菌薬を投与するのみでなく,経尿道的開放術またはTRUSガイド下経会陰的・経直腸的穿刺吸引によるドレナージが必要である。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の病因

著者: 市原浩司 ,   橋本次朗 ,   高橋聡

ページ範囲:P.831 - P.836

要旨 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は,前立腺もしくはその周囲に出現した炎症・組織障害が,種々の要因により慢性化し,やがて特徴的な疼痛・排尿症状・筋肉の障害・精神的な症状などを引き起こす病態である。しかし,病因など,その詳細はいまだ不明な点が多い。近年,病態に関する研究が進み,局所における炎症という概念から,全身疾患の一部とみなす概念も示唆されている。本稿では,従来検討されてきたサイトカインや免疫応答物質と炎症の関わりについて言及し,さらに近年の報告から,内分泌環境変化の関与や,症状の表現型から疾患の局在に迫るfMRI画像の有用性についても述べる。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の診断

著者: 濵砂良一

ページ範囲:P.839 - P.844

要旨 慢性前立腺炎および慢性骨盤痛症候群という名称は,1999年にNIHにて提唱された前立腺炎の分類のchronic prostatitis(CP)およびchronic pelvic pain syndrome(CPPS)を直接訳した名称である。CP/CPPS,Category Ⅲは「尿路性器の痛みをもち,一般的な方法にて尿路性器に病原性を有する細菌が検出されないもの」と分類される。さらにCategory Ⅲのうち,expressed prostatic secretions,VB3,精液に多くの白血球が観察されるものはⅢAに,上記検体に白血球が観察されないものをⅢBに分類する。診断には,症状としての「痛み」,および直腸診における前立腺の圧痛の存在,前立腺マッサージ後の検体の観察が重要である。数多くの疾患により同様な症状が起こりうるため,除外診断を十分に行う必要がある。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に対する治療―抗菌薬

著者: 高橋聡

ページ範囲:P.847 - P.850

要旨 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に対する抗菌薬治療は,以前から広く行われてきた。近年のプラセボとの比較研究では,残念ながらプラセボを上回る有効性を証明し得ていないが,いずれの報告においても,ある程度の症状の軽減は得られている。抗菌薬治療の有効性を高めるためにはいくつかの条件が必要かもしれないが,炎症性サイトカインが関与した炎症が症状の主体である症例を選択することができれば抗菌薬の治療的意義は飛躍的に高まると期待される。

慢性前立腺炎/慢性骨盤疼痛症候群に対する治療―α1交感神経遮断薬

著者: 安田満

ページ範囲:P.853 - P.858

要旨 NIH category Ⅲを生じる原因の1つとして,排尿障害による尿の前立腺導管内への逆流がある。α1-blockerは前立腺および尿道内の抵抗を低下させて前立腺組織への尿の逆流を防止するとされ,NIH category Ⅲの治療薬の1つとなっている。これまで報告されたα1-blockerのNIH category Ⅲに対する効果はまちまちであるが,meta-analysisでは有効性が証明されている。したがってNIH category Ⅲに対しα1-blockerは有効性が期待されるが,経過が長い症例などでは効果が期待できない場合もある。今後も引き続き検討が望まれるが,まずは評価法の統一などを行う必要がある。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に対する治療―生薬など

著者: 和田耕一郎

ページ範囲:P.859 - P.861

要旨 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は成人男性において頻度の高い性器疾患であるが,一定の病因や病態が示されておらず,治療法も確立されていない。欧米のガイドラインでは基本的な薬物治療としてαブロッカーと抗菌薬が推奨されているが,治療に難渋する症例も多い。補助的な治療に位置付けられている植物製剤や漢方薬といった生薬についての有用性を示唆する報告も増加しつつあり,さらなるエビデンスの蓄積と有効性の評価が期待されている。本稿では,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に対して投与される内服薬のうち,αブロッカーと抗菌薬を除いた植物製剤や漢方薬の薬理作用,効果について概説する。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に対する治療―薬物療法以外

著者: 清田浩

ページ範囲:P.863 - P.868

要旨 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の成因は不明であり,抗菌薬,α1-ブロッカー,植物製剤などの薬物治療の有効性も60~70%程度であることから,これらの薬物療法が無効である症例に対し薬物治療以外の治療法が試みられてきた。針治療,経尿道的前立腺マイクロ波温熱療法などがあり,前2者はわが国の保険診療で行うことができる。いずれの方法も薬物療法と同様に100%の有効性は期待できないが,試みる価値はあると思われる。既存の治療法が無効の症例に対する心理学的教育法(カウンセリング)についても言及する。

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群と排尿機能・性機能との関連

著者: 吉村耕治

ページ範囲:P.871 - P.876

要旨 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CPPS)の概念の中に,すでに排尿機能症状,性機能に関する症状が包含されていることから,これらの互いへの相関は容易に予想されるところであり,実際に多くの臨床的・疫学的研究からその相関関係が明確になりつつある。各症状が互いに関連するという事実は,逆の観点から論ずると,それぞれの症状を有する患者群がクリアカットに判別できないことをも意味している。一症状(例えば下部尿路症状)に特異的と考えられる治療法の,ほかの症状(CPPS症状,性機能症状)への有効性を示すエビデンスの蓄積は複雑な相関関係の傍証であろう。

知っていると役立つ泌尿器病理・7

症例:40代・女性

著者: 清水道生

ページ範囲:P.803 - P.806

症例:40代・女性

 発熱のため近医を受診,腹部CTにて左腎腫瘍を指摘され,当科に紹介された。MRIにて腎下極に3cm大の腫瘤を認め,腎細胞癌の疑いで左腎部分切除が施行された。図1~4は腫瘍の代表的な肉眼像および組織像である。

 病理診断は何か。

書評

「WHOをゆく―感染症との闘いを超えて」―尾身 茂 著 フリーアクセス

著者: 押谷仁

ページ範囲:P.823 - P.823

 著者の尾身茂先生は2009年に帰国されるまで,20年間近くにわたり世界保健機関(WHO)の西太平洋事務局(WPRO)で活躍されてきた。前半は感染症の対策官としてポリオ根絶などの課題に取り組み,後半の10年間はWPROの地域事務局長として西太平洋地域の保健・衛生全体の責任者としてSARS(重症急性呼吸器症候群)への対応などでリーダーシップを発揮された。そのWHO勤務の間に経験した,ポリオ・結核・SARS・鳥インフルエンザなどの対策にあたった経験をまとめたものが「WHOをゆく―感染症との闘いを超えて」である。

 2003年のSARSの流行でも明らかになったように,21世紀の感染症対策にはグローバルな視点からの対応が必要である。しかし,国際的な感染症対策の現場には多くの困難がある。本書ではそのような困難な現場で,尾身先生がいかにして1つ1つ問題を解決し道を切り拓いてきたかが,いくつかのエピソードを交えながらダイナミックに描かれている。また,WHOでの感染症対策だけでなく,尾身先生が日本に帰国してすぐに発生した2009年の新型インフルエンザに,国の諮問委員会の委員長として対応にあたった際の出来事や,東日本大震災への支援についても述べられている。さらには,日本の社会の根底にある問題をみすえて,日本の医療や地域の公衆衛生のあるべき姿についても多くの示唆に富む提言がなされている。

「腹腔鏡下大腸癌手術―発生からみた筋膜解剖に基づく手術手技」―加納宣康 監修/三毛牧夫 著 フリーアクセス

著者: 森谷冝皓

ページ範囲:P.837 - P.837

 このほど『腹腔鏡下大腸癌手術―発生からみた筋膜解剖に基づく手術手技』が,書評依頼付きで腹腔鏡下手術の経験のない私に送られてきた。戸惑ったが精読してみた。

 本書の中心を流れる三毛手術哲学の特徴は,血管や臓器の細部に言及する従来の系統解剖に手術手技の理解の基礎を求めるのではなく,optical technologyの進歩により可能となった筋膜構造の視認に腹腔鏡下手術の基礎を置く,臨床解剖の重要性を一貫して主張しているところにある。発生学からみた筋膜構造に重点が置かれた初めての手術書であろう。

「レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版」―深川雅史,吉田裕明,安田 隆 編 フリーアクセス

著者: 平方秀樹

ページ範囲:P.845 - P.845

 腎臓は体液の恒常性維持を司る唯一の臓器で,腎臓内科学の分野で最も面白いのは,体液バランス(水,ナトリウム,カリウム,細胞外液,酸塩基平衡など)異常を解釈し,その是正治療にあたることで,多くの腎臓専門医の最初の動機となってきた。腎臓内科学の教科書の評価は,この分野をいかに記述しているかで決まる。本書は初版でも非常に好評であった。今回の改訂版でも,最も多くのページ数を費やしている。机上で,現場で,繰り返して眼を通して欲しい。この分野を修めることは内科学の基本となる。

 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が提唱されて10年が経過し,わが国でも広く定着してきた。すなわち,CKDの管理は,慢性腎不全の進行を遅らせて透析導入・腎移植を防ぐことだけでなく,高率に併発する心血管イベントのリスクを軽減することも目標となる。これまで以上に早い時期からCKDに気付き,腎障害だけでなく心血管合併症にも対応してゆくことが重要で,このことが腎臓専門医だけでなく,非専門医や一般の方々に広く啓発されてきた。近年,KDIGO(kidney disease:improving global outcomes)は,これまでの分類にタンパク尿(アルブミン尿)の程度を組み入れ,ステージ3を3aと3bに分け,より精密な分類とし,さらには,CKDの原因疾患をも考慮して対処するように改訂した。このKDIGOによる新分類は,CKDの意義の啓発という第一段階を経て,より確実な治療介入を要求する次の段階に進んだことを意味している。このことが本改訂版で強調されている。

「帰してはいけない外来患者」―前野哲博,松村真司 編 フリーアクセス

著者: 井村洋

ページ範囲:P.851 - P.851

 外来診療トレーニングにとって最良の参考書が出た。一般外来向けに作られているが,ERでも応用できる。いずれの現場でも,「“帰してはいけない患者”を帰してしまう危険性をはらんでいる」からである。その危険性を下げるためには,外来診療においても,病棟診療と同様に,反復学習と教育的介入の機会が必要となる。本書はこのことを強調し,それを求める学習者に向けて作成されている。

 「帰してはいけない患者を帰さない」ことは,外来診療のすべてではない。「帰してはいけない患者であっても,危険を最小限に抑えて帰す」ことや,「帰してもいい患者にもしっかりケアする」こともある。それでも,あえて本書が強調していることは,十分に外来診療の教育を受ける機会がない学習者にとっては,「帰してはいけない患者」を見逃さない技能の獲得が,患者にとっても医師にとっても最優先されるということである(異議なし!)。その技能支援のため,本書は生み出された。

「問題解決型救急初期診療 第2版」―田中和豊 著 フリーアクセス

著者: 志賀隆

ページ範囲:P.869 - P.869

 本書は,救急の現場の最前線で働く医師たちへぜひお薦めしたい本である。通常,救急の参考書・マニュアル本は,複数の著者が執筆することが多い。本書は,日本と米国において外科と内科の臨床の最前線で研修をされ,さらに日本有数の教育病院である聖路加国際病院,国立国際医療センター,済生会福岡総合病院にて指導医として数多くの研修医を指導してこられた田中和豊先生によって執筆されている。そのため,通常はセクショナリズムに陥りやすい内科や外科の救急も連続性をもって記載されている。一貫して現場で役立つ本であることが意識されており,忙しい医師が求める事項が簡潔に記載されている。

 本書を開くと,はじめに救急診療におけるプラクティカルな基本戦略が記されている。サッカーに例えられた救急医としての診療姿勢は実にわかりやすい。さらに,Oslerの格言から始まり,救急の限られた時間の中で問診と身体所見をどのようにして有効にとるか著者の知恵が凝縮されて記述されている。これは救急診療に初めて臨む研修医にとって非常によい導入である。

「救急救命士によるファーストコンタクト―病院前救護の観察トレーニング 第2版」―郡山一明 著 フリーアクセス

著者: 横田順一朗

ページ範囲:P.890 - P.890

 命にかかわる重大な事態を把握するには,生命維持に関する生理学を習得した上で,重要な項目から観察しなければならない。これは急病や外傷の傷病者に最初に接する救急救命士に最も求められる技能であるが,この習得が必ずしも容易ではない。著者はこの本で,生命維持の基本となる酸素の取り込みと運搬に焦点を当て,その生理学,病態,観察そして処置までを解説している。呼吸,循環,中枢神経系の働きを生理学の医学書から学ぶのは医師ですら難解であるのに,多くの比喩を使って理解を助けている。例えば,心拍出の様子を「マヨネーズのチューブの握り方」に,循環の仕組みを「山手線」に,oxygen deliveryを「回転寿司」になぞらえ,ユニークな絵を付けて関心を引き付けている。また,双極誘導の特徴を影絵から想像させたり,P波とQRS波との組み合わせを描かせて不整脈を理解させたりするなどして心電図を楽しく理解させようとしている。こういった工夫は随所にみられ,一気に読み進めてしまうほど面白味がある。

 本書には上記のような魅力だけでなく,さらに特筆すべき点がある。それは,冒頭で病院前救護と医療機関での診療との相違点を整理し,救急救命士の職務の姿勢を明確にしたことである。「救急救命士の役割は,要救護者の生命危機を回避させつつ,病態に応じた最適な医療機関に迅速に搬送することである」とし,米国における救急医療サービスの業務ポリシー“The right patient in the right time to the right place”を巧妙に伝授している。適切な処置や医療機関選定のためには,最初に要救護者の全身状態を把握しなければならず,このため大半を「観察」に割き,副題を「病院前救護の観察トレーニング」としたのが本書の本質であろう。さらに,教育と実践における「意思決定」の重要性に言及し,学習は缶詰型知識の詰め込みではなく,問題解決型能力の開発が重要であるとしている。このために「脳を鍛える」トレーニング方法として,認知力を高めるために「その気」を持つこと,「その気」から行動を起こすまでの一連のプロセスとして消費者心理を応用した郡山式AIDMA法での学習法を紹介している。これを軸に疾患別シナリオを提示し,読者に意思決定を求め,問題解決能力の開発を図っている。

症例

前立腺全摘除術後の骨盤腔に発生した小腸GIST

著者: 新村友季子 ,   新村眞司 ,   上別府豊治 ,   川平秀一郎 ,   高島博 ,   池原在

ページ範囲:P.881 - P.884

68歳,男性。2005年,前立腺癌に対し前立腺全摘除術を施行した。2011年にエコー・CT・MRIで膀胱後部に10cm大の腫瘍を指摘されたが,悪性を示唆する所見は指摘できなかった。起源不明であった。開腹手術で空腸を腫瘍側に付けて腫瘍を摘出した。病理は小腸GIST(gastrointestinal stromal tumor)。骨盤内GISTは婦人科,外科領域での腫瘍鑑別としての報告が散見されるが,泌尿器科領域での報告は稀である。

過活動膀胱症状を呈した子宮頸癌

著者: 加藤久美子 ,   鈴木省治 ,   廣村勝彦 ,   水野公雄 ,   鈴木弘一 ,   服部良平

ページ範囲:P.885 - P.889

症例1:76歳女性。頻尿,肉眼的血尿を訴え前医受診。尿路精査は異常なく,過活動膀胱の抗コリン薬を内服。2年後尿失禁が悪化し,当科紹介。膀胱鏡で後壁の圧迫挙上,内診で性器出血と子宮頸部の腫瘤(長径11cm)を認めた。症例2:67歳女性。混合性尿失禁と頻尿で抗コリン薬を処方され,半年後当科紹介。CTで長径9cmの骨盤内腫瘤を認めた。両患者は子宮頸癌Ⅲb期と診断され,同時併用化学放射線療法で下部尿路症状は消失した。

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.809 - P.809

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.893 - P.893

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.894 - P.894

著作権譲渡同意書 フリーアクセス

ページ範囲:P.895 - P.895

編集後記 フリーアクセス

著者: 藤岡知昭

ページ範囲:P.896 - P.896

 週末,久々に帰省した次女と連れ立って国立公園八幡平にハイキングに行ってきました。昨今,山登りがブームなそうで,次女も例にもれず山岳雑誌から抜け出たたような「山ガール」そのものの服装・装備でした。小生は,医学部ではなく山岳部卒業にと言われるくらい山登り,岩登りにすべてをかけた学生生活をしていましたので,若いものには負けられないと,腰痛をおしてクラッシック山装で出かけたわけです。

 天気は曇り,予報では気流が乱れているので午後には雷雨になるだろうということでしたが,八幡平は勝手知りつくした場所で,雷雨の前に下山できると判断しました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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