文献詳細
書評
「救急救命士によるファーストコンタクト―病院前救護の観察トレーニング 第2版」―郡山一明 著 フリーアクセス
著者: 横田順一朗1
所属機関: 1市立堺病院
ページ範囲:P.890 - P.890
文献概要
本書には上記のような魅力だけでなく,さらに特筆すべき点がある。それは,冒頭で病院前救護と医療機関での診療との相違点を整理し,救急救命士の職務の姿勢を明確にしたことである。「救急救命士の役割は,要救護者の生命危機を回避させつつ,病態に応じた最適な医療機関に迅速に搬送することである」とし,米国における救急医療サービスの業務ポリシー“The right patient in the right time to the right place”を巧妙に伝授している。適切な処置や医療機関選定のためには,最初に要救護者の全身状態を把握しなければならず,このため大半を「観察」に割き,副題を「病院前救護の観察トレーニング」としたのが本書の本質であろう。さらに,教育と実践における「意思決定」の重要性に言及し,学習は缶詰型知識の詰め込みではなく,問題解決型能力の開発が重要であるとしている。このために「脳を鍛える」トレーニング方法として,認知力を高めるために「その気」を持つこと,「その気」から行動を起こすまでの一連のプロセスとして消費者心理を応用した郡山式AIDMA法での学習法を紹介している。これを軸に疾患別シナリオを提示し,読者に意思決定を求め,問題解決能力の開発を図っている。
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