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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科66巻4号

2012年04月発行

特集 泌尿器科ベッドサイドマニュアル

Ⅰ 泌尿器科診療の基本

004 保険診療の留意点

著者: 斎藤忠則13 山口健哉23 高橋悟24

所属機関: 1日本私立学校振興・共済事業団東京臨海病院 2日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学 3日本泌尿器科学会保険委員会 4日本泌尿器科学会

ページ範囲:P.30 - P.36

文献概要

[1]はじめに

 わが国で,1962年(昭和37年)に国民皆保険が開始されて今年で満50年となる。昨年は,日本医師会による医療政策シンポジウム『国民皆保険50周年~その未来に向けて』など,さまざまな記念行事が各地で行われた1)。この国民皆保険という制度が50年前に始まった以前のことを知る国民がほとんどいなくなりつつある現在,国民にとっては,現在の制度は,空気や水と同様に,当たり前に存在するものとなってしまった。一方,この制度を維持するためには年間30兆円以上もの経費がかかる巨大な制度となっている。この医療費は国民が支払う税金と患者が支払う自己負担金にて維持されている2)

 さて,われわれ医師は,4月に医師国家試験に合格すると医師免許証が交付され,医業を行うことが可能となるが,これだけでは保険医療を行うことはできない。所属する医療機関の事務に医師国家試験合格の連絡葉書を預けると,医師本人が知らないうちに所管の保健所へ健康保険医の届け出が提出されているのが現状である。ここで重要なことは,後で述べるように保険診療の要点として保険医が保険医療機関においてのみ保険診療が可能であるという点である。つまり,5月中旬に保険医登録証が交付されるまで保険診療をすることは法律に違反することとなる。患者の診察,カルテの閲覧・記載などの医療行為は可能であるが,検査のオーダーや処方箋の交付,保険診療にかかわる侵襲的医療行為は,保険医となるまでは違法となる。初期臨床研修を行う規模の病院は,現在ほとんどが電子カルテを導入しており,医師のID管理により可能な医療行為を管理することは保険医となるまでは制限可能であるが,紙カルテの病院では,初期臨床研修の管理者および初期臨床研修医本人が注意しなければならない重要なポイントである。今回は,初期臨床研修医・泌尿器科専門医を目指す後期臨床研修医や現在保険診療に携わっている現役の泌尿器科専門医にも役立つ保険診療の留意点についてわかりやすく解説する。

参考文献

1)平成22年度医療政策シンポジウム 国民皆保険50周年~その未来に向けて.日本医師会,東京,2011
2)日本:国民皆保険達成から50年―THE LANCET日本特集.2011 http://www.jcie.or.jp/japan/csc/ghhs/lancetjapan/
3)斎藤忠則:泌尿器科保険診療のしくみ.泌尿器外科 23:881-886,2010
4)医科点数表の解釈36版(平成22年4月版).社会保険研究所,東京,2010
5)保険医療材料算定の解釈9版(平成22年4月版).社会保険研究所,東京,2010
6)岡田清己,斎藤忠則,吉田豊彦:泌尿器科と保険診療.泌尿器外科 9:59-61,1996
7)日本臨床泌尿器科医会(編):保険診療の手引き 第8版.2011
8)レセプト事務のための薬効・薬価リスト 付禁忌・併用禁忌 平成23年版.じほう,東京,2011
9)図版 検査と保険請求のすべて 第10版.医材研
10)日本医薬品集Drugs in Japan 2010.じほう,東京,2009
11)診療科別疾患における審査事務能力向上に関する調査研究.平成23年3月 財団法人医療保険業務研究協会発行,株式会社社会保険研究所,東京,2011
12)斎藤忠則:保険請求に必要な知識―基本診療料・医学管理料・在宅医療.泌尿器外科 23:887-891,2010
13)相澤 卓,小路 良:保険診療に必要な知識―検査・処置,泌尿器外科 23:893-898,2010
14)辻井俊彦,高沢亮治,北山沙知:保険診療に必要な知識―手術,泌尿器外科 23:899-905,2010
15)山口健哉:平成22年度保険改定のポイント(勤務医の立場から),泌尿器外科 23:907-912,2010
16)児玉光政:平成22年度保険改定のポイント(開業医の立場から),泌尿器外科 23:913-916,2010
17)出口修宏:泌尿器科と保険診療.泌尿器科学の最近の進歩 24:1-3,2008
18)斎藤忠則,仲野 智,岡田清己,他:泌尿器科DRGの経緯.泌尿器外科 13:845-849,2000
19)平野大作,斎藤忠則,岡田清己:医師の立場からみたクリニカルパス.臨泌 55:399-403,2001
20)斎藤忠則:ストーマリハビリテーションにおける保険医療.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編,ストーマリハビリテーション実践と理論.金原出版,東京,pp 337-339,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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